『デザインのひきだし』で好評連載中のインタビュー「名工の肖像」は、日本の活字や印刷加工、紙づくりを支えてきた凄腕の職人や技術者の方々に、その仕事内容・ものづくりへのこだわりから、なぜその仕事についたのか、どんな修業時代を経てその技を習得したのか、仕事の苦労ややりがいについて深く語っていただく連載です。
本書は、2008年6月の連載開始から2019年6月発売の『デザインのひきだし37』までに掲載された約10年分のインタビューを再録し、一冊にまとめたものです。
書籍用に新たに新規の名工取材を加えたほか、わかりにくい専門用語には注釈を入れて、活字や文字・組版などの印刷前工程から、紙、製版、印刷、製本、加工まで、印刷物ができるまでの各分野を網羅した、名工達の貴重な記録になりました。いまの世代の仕事への向かい方、考え方、生き方への大きなヒントがつまっています。
【本書に登場する名工】
●文字や組版を手がける人々
種字彫刻師・清水金之助/母型製造・高内一(岩田母型製造所)/タイトルデザイナー・篠原榮太/活字母型開発技師・細谷敏治(国際母型)/モノタイプ活字鋳造・塚田正弘(佐々木活字店)/活字鋳造職人・大松初行(築地活字)/植字工・森修治/手動写植オペレーター・駒井靖夫(プロスタディオ)
●紙を手がける人々
ファンシーペーパー開発者・杉本友太郎(特種東海製紙)/抄紙機職人・和田育生(王子エフテックス)/揉紙職人・高木裕夫(高木揉紙店)/漆紙職人・岡田勇次(エス・アール・エス・スガヤ)
●製版・印刷を手がける人々
製版カメラ発案・和田和二(平河工業社)/特色インキ調色師・千田宗雄(印材舎)/金銀インキ調肉師・井上喜信(女神インキ)/活版印刷職人・高岡重蔵(嘉瑞工房)/オフセット輪転印刷機職人・五味田光男(大日本印刷)/プリンティングディレクター・熊倉桂三(山田写真製版所)/プリンティングディレクター・岩山中(トッパングラフィックコミュニケーションズ)/高級美術印刷 摺り師・松井勝美(サンエムカラー)/コロタイプ・プリンター・山本修(便利堂)/ノート企画開発と罫引・渡邉精一(ツバメノート)
●製本・加工を手がける人々
手差しラミネート加工・宮下和幸(ミユキ化工)/工業彫刻職人・中田公一(ツジカワ)/箔押し職人・佐藤勇(コスモテック)/転写シール製造・富田暁(扶桑)/断裁・型抜き加工職人 山田善之・鈴木勝也(成貢紙工)/製本資材販売・伊藤芳雄(伊藤信男商店)/製本マイスター・青木英一(松岳社 青木製本所)/製本職人・町田邦雄(三水舎)/紙工職人・坂本政弥(坂本紙工所)/本函製造・加藤義夫(加藤製函所)/印刷物収集家・水野雅生(ミズノ・プリンティング・ミュージアム)
雪朱里(著者)おすすめコメント
約10年分をまとめたことで、活字・文字から組版、紙、製版、印刷、製本、加工と、印刷物がつくられるまでのさまざまな名工のお話を収録することができました。印刷加工に関する専門用語には注釈を入れて解説しているので、印刷のことを詳しく知らない方にも読みやすいと思います。
本書のもうひとつの魅力は、名工の方々の人生が刻まれた写真の数々です。この味わい深い写真は、池田晶紀さんと川瀬一絵さんによるもの。名工たちが現場で仕事をする姿も写真におさめています。ブックデザインは、水戸部功さん。漆黒の墨が刷られたカバーにあいた窓の向こうに、名工の姿がほの見える装丁です。
その道数十年という長い年月、ひとつの仕事を極めてきた名工たちの人生に、この本を通してぜひふれていただけたらうれしいです。
雪朱里
1971年生まれ。ライター、編集者。武蔵大学卒業後、写植からDTPへの移行期に印刷会社に在籍後、専門誌編集長を経て、2000年よりフリーランス。文字、デザイン、印刷、手仕事などの分野を中心に、ものづくりにたずさわる人々への取材執筆活動を行なっている。著書多数。2011年2月より『デザインのひきだし』誌のレギュラー編集者も務める。著書に『描き文字のデザイン』『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(グラフィック社)、『文字をつくる 9人の書体デザイナー』(誠文堂新光社)。編集・執筆等を手がけた書籍に『一〇〇年目の書体づくり「秀英体 平成の大改刻」の記録』(大日本印刷)ほか多数。
発行 | グラフィック社 |
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著者 | 雪朱里 |
写真 | 池田晶紀+川瀬一絵 |
編集 | 津田淳子 |
デザイン | 水戸部功+北村陽香 |
仕様 | A5判、352ページ |
価格 | 2,500円(税抜) |
ISBN | 978-4-7661-3365-3 |