写真家・野村佐紀子の、約20年間のライフワークを綴る写真集。1991年より荒木経惟に師事し、写真家として活動をはじめ、何年もかけて撮り続けてきた中から約100名の男性たちのヌードを主軸とした写真群を、400ページのボリュームで構成。
本書のイメージは「バイブル」。言葉でなく写真で愛についての物語を表している。作品撮りに協力した被写体とは出逢いもさまざまで、一度きりの場合も長い付き合いの場合もあり、撮影の空間はそれぞれとの大事な時間で、一人ひとりとの特別な関係性を感じさせる。
男性のヌードという1つのテーマを何年も撮り続けてきた作家の凄味。その作品は多く、何千枚もの写真が存在することを知り、一雑誌の編集であった出版者が作家と自費出版を決め、企画は立ち上がった。本書には男性ヌードの写真だけでなく、花火、雪、桜、部屋、海、空、そして動物の写真も掲載。さまざまな男性との時間を過ごした野村が、外に目を向けた瞬間の温度がわかるような風景だ。
写真集の装丁は、SOUP DESIGNの尾原史和。野村の姿勢に共感し、膨大な写真群から「人との繋がりを感じられるように」とデザインされ、黒い小口染めを施した四方黒い装丁は、圧倒的で、野村のモノクローム、陰影、暗闇を想起させる。
岡田麻美(ASAMI OKADA PUBLISHING)のおすすめコメント
本書の装丁は、雑誌『TRANSIT』や『コマーシャル・フォト』、アートや建築関係の書籍などのデザインを担ってきた尾原史和(SOUP DESIGN)さん。野村佐紀子さんが何年もかけて撮り続けている、作品撮りの写真をまとめようと写真集の企画が立ち上がり、何万点という膨大なプリント写真を確認し始めた制作初期に、「お受けいただけるようだったら、デザイナーは尾原さんにお願いしてみたい」と、野村さんにお伝えしました。
尾原さんは、写真一つひとつの視線を汲み取り、規律を持ったデザインをきっちり作り上げてくださる方です。野村さんの被写体にぐっと入った写真と相まって、今まで見たことのない写真集になるはずだと確信していました。タイトルの『愛について』は、「対峙している、約100名の被写体たちとの時間や関係性はそれぞれであっても、それぞれへの愛情は、等しく大切なもの」という意味を込めています。尾原さんは、そういった作家の視点とプリント写真を実際に見て、「人との繋がりを感じられるように」との想いでデザインをしてくれました。
そして製本でこだわったのが、職人さんが黒墨で手塗りした小口染め。聖母のようなイメージを野村さんの姿勢から感じ、「バイブル」を意識した四方黒いプロダクトとなっています。
発行 | ASAMI OKADA PUBLISHING |
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発売 | ライスプレス株式会社 |
ブックディレクション | 尾原史和(SOUP DESIGN) |
価格 | 4,000円(税別) |
ISBN | 978-4-9909235-7-0 |