海のレストラン

瀬戸内海の恵みを味わえる、海辺に建つレストラン

デザインコンセプト
担当:ケース・リアル

瀬戸内海に浮かぶ豊島(てしま)の海辺に建つレストランの計画である.
瀬戸内国際芸術祭の開催エリアの一つともなっているこの島は、瀬戸内海の豊かな恵みを受けて昔から酪農や稲作が盛んだ。一時は過疎化で人手が不足し荒れていた伝統的な棚田も、近年では多くのボランティアの手によってその潤いが取り戻されつつある。こういった島の環境を背景に、島内に点在する数々のアート作品を目指して訪れる国内外からのビジターや島の人々へ、充実した食を提供する拠点となることをこのレストランは目指している。

また、この建築にはレストランとしての機能のほか、様々な人が利用出来る公衆キッチンも備えており、食を主体としたコミュニケーションがこの場所で生まれ、新たな島の文化を育んでゆく、そのようなビジョンを持って計画されている。

海岸線に沿って2つのアーチが連なる形状をした全長約40mのボリュームは、屋根や内外の壁のほとんどが軽快な波板で覆われており、海側の大部分をテラスとして開放している。このテラスは、目の前に広がる素晴らしい海原の景色を取り込む装置であるが、同時にレストランや厨房、公衆キッチンなどの各機能を物理的かつ意識的に繋ぐハブとしてこの建築の大切な要素となっている。テラス部分の屋根には開放性を考え透過性のある波板を用い、燦々と降り注ぐ太陽光は同列のアーチ屋根の下でも内外の空間の趣を全く異なるものにしている。また、高波による浸水対策として立ち上げられた建築の基礎部分には、大地がそのまま隆起したかのような赤茶色の着色コンクリートを使用し、この建築の先に続く青い海原や空への対比的な存在とした。

また、この建築にはレストランとしての機能のほか、様々な人が利用出来る公衆キッチンも備えており、食を主体としたコミュニケーションがこの場所で生まれ、新たな島の文化を育んでゆく、そのようなビジョンを持って計画されている。

圧倒的な瀬戸内の自然の恵みや荒々しさを受け入れながら、島の一部として共存してゆく建築を目指した。

施設名 海のレストラン
所在地 香川県小豆郡土庄町豊島家浦字小港525-1
設計 ケース・リアル 二俣公一、有川靖
プロジェクト恊働 松澤剛
構造設計 オーノJAPAN 大野博史
設計協力・施工 ナイカイアーキット
照明計画 モデュレックス福岡 佐藤政章
サイン計画 スープデザイン 尾原史和
家具製作 E&Y
クライアント サークルハウスコーポレーション
構造 鉄骨造
規模 地上1階
建築面積 471m2
敷地面積 1,685m2
撮影 水崎浩志