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カンディハウスのブースにて、「TEN」を手にミヒャエル・シュナイダー氏

カンディハウスのブースにて、「TEN」を手にミヒャエル・シュナイダー氏

「imm cologne 2016 ケルン国際家具見本市」における日本の家具ブランド三者三様の欧州展開

2016/03/18 13:00

世界規模で注目を集める家具の見本市と言えば、ミラノ、ケルン、ストックホルム、そしてニューヨークとなるだろうか。日本ではミラノの知名度が高いが、業界関係者の間では「トレンドのミラノ、商売のケルン」と言われている。発注を取るという実を狙うため、ミラノと共にケルンを活用しているメーカーも多い。

家具見本市を出展社数、来場者数で比較すると
ミラノ(サローネ国際家具見本市):1323社、31万383人(2015年実績)
ケルン(ケルン国際家具見本市):1263社、14万6千人(2015年実績)
ストックホルム(ストックホルム・ファニチャー・フェア):約700社、約4万人(公式サイトより)
ニューヨーク(ICFF):724社、3万1421人(2015年実績)
東京(IFFT/インテリア ライフスタイル リビング):431社、1万7999人(2015年実績)
となる。

imm cologne 2016 ケルン国際家具見本市の南入口、入口は東西南北にあり駅からの最寄りはここ

imm cologne 2016 ケルン国際家具見本市の南入口、入口は東西南北にあり駅からの最寄りはここ

ミラノは、その来場者数で他を圧倒しているが、出展社数ではミラノとケルンが同程度。この数字の差が、まさに「トレンドのミラノ、商売のケルン」の証左と言えるだろう。来場者数はミラノの半分でも、ケルンにはそれを補うだけの魅力、ビジネスチャンスがあるということだ。

2016年1月18日から24日にかけて開催された「imm cologne 2016 ケルン国際家具見本市」。日本からは、カンディハウス、MEETEE(ミーティ)、KARIMOKU NEW STANDARDという3社の家具メーカー・ブランドが出展していた。

カンディハウス

日本を代表する家具産地である北海道旭川の老舗家具メーカーで、北米とドイツにも拠点を持つ。ケルンには11回目の参加。世界的なトップメーカーが並ぶホール11に、前回より規模を拡張して出展した。2015年秋に日本で発表した深澤直人氏デザイン「KAMUY(カムイ)」の欧州でのお披露目と、ドイツ人デザイナーMichael Schneider(ミヒャエル・シュナイダー)氏による新作「TEN(テン)」の発表という内容。

カンディハウスのブース、手前は「KAMUY」のゾーン。ホール11には、カンディハウスに隣接するLigne Rosetに始まり、B&B ITALIA、FLEXFORM、COR等といった欧州の著名ブランドが並ぶ

カンディハウスのブース、手前は「KAMUY」のゾーン。ホール11には、カンディハウスに隣接するLigne Rosetに始まり、B&B ITALIA、FLEXFORM、COR等といった欧州の著名ブランドが並ぶ

個人的には、既に日本で発表され好評を得ている「KAMUY(カムイ)」が欧州でどのような反応を得るか注目していた。ビンテージな北欧家具というイメージもある椅子なので、日本とは受け止められ方が異なるだろうし、日本人のデザインと日本の木工技術によるその現代的な解釈が、海外バイヤーの共感を得ることができるだろうか、という点だ。

一方、背に樹脂(ポリカーボネード)を使った「TEN(テン)」については、実物を見るのがとても楽しみであった。木へのこだわりがブランドイメージの核ともなっているカンディハウスにとって、これは大胆な冒険と言える。デザイナーであるシュナイダー氏との会話にて、まず「これまでのカンディハウスとは違う、新しい世界を感じた」と伝えたのだが「まさにその通りだ」とのこと。新鮮なカラーリング、仕上げの違いによる価格の幅広さというマーケティング戦略を含めて、伝統を活かしそれを拡張していこうとする同社の攻めの姿勢を確認できた。

「TEN」のインスターレション、空に浮かぶような軽さを感じさせる

「TEN」のインスターレション、空に浮かぶような軽さを感じさせる

結果、これら大きく異なる二方向の提案は、それぞれに大歓迎されていた。初日と2日目にブースを訪ねたが、欧州、アジア、それぞれに活発な商談が行われ「早いタイミングで確実な手応えを感じた」との声を出展者から得た。7日間の会期を終えた後の結果は「過去最高の好受注」とのことだ。

カンディハウス

MEETEE(ミーティ)

日本有数の家具産地の一つである、広島県の府中から欧州進出を目指す新進の家具ブランド。プロジェクトは2013年に始まり、2014年のストックホルムでデビュー。ケルンは2015年に次いで2回目となる。

MEETEE(ミーティ)が出展したホール2.2は、artekやvitra.も出展し特別企画「DAS HAUS」もあり、ホール11と共に注目されるホール

MEETEE(ミーティ)が出展したホール2.2は、artekやvitra.も出展し特別企画「DAS HAUS」もあり、ホール11と共に注目されるホール

今回は三つの新製品を発表した。倉本仁氏主宰のJIN KURAMOTO STUDIOによる「Mia」「Liz」と、フィンランド人デザイナーHarri Koskinen(ハッリ・コスキネン)氏による「Tukki」。

倉本仁氏主宰のJIN KURAMOTO STUDIOによる「Mia」、突き出た小ぶりなアームが印象的

倉本仁氏主宰のJIN KURAMOTO STUDIOによる「Mia」、突き出た小ぶりなアームが印象的


Harri Koskinen(ハッリ・コスキネン氏)による「Tukki」、アームや脚はオーソドックスだがスタッキング用の切り欠きと脚の薄さが目を引く

Harri Koskinen(ハッリ・コスキネン)氏による「Tukki」、アームや脚はオーソドックスだがスタッキング用の切り欠きと脚の薄さが目を引く


「石の上にも3年」は見本市出展やイベントにも当てはまるところで、「あの見本市のあそこにいるブランド」と来場者に覚えてもらい、商談のきっかけを掴んでいくものだという。まさにブランド構築の初期段階にあるMEETEE。そのディレクションも務める倉本氏によると「ブランド立ち上げの最初に発表したNadiaでは、木造船の木の組み方を活かした高度な技術を前面に出し、ブランドの旗として立てることを考えました。アイテムも増えてその世界観の広がりも訴求できるようになってきた今回は、スタッキングできる2種類のアームチェアとテーブルで、ビジネスの広がりを意識した種をまきたい」とのことだ。

MEETEE(ミーティ)

KARIMOKU NEW STANDARD

日本最大の木製家具メーカーであるカリモクが2009年に始めたブランド。紙パルプ原料のチップにされる小径の国産広葉樹を家具に有効活用することで、その価値を高め新たな経済循環を生むことに挑戦している。

KARIMOKU NEW STANDARDが出展したホール3.2は、THONET 、ercol、cappelliniなどが出展する感度の高いホール

KARIMOKU NEW STANDARDが出展したホール3.2は、THONET 、ercol、cappelliniなどが出展する感度の高いホール

意外と知られていないが国産の木製家具も、そのほとんどは外国から輸入された木材で作られている。価格と安定供給の優位がその大きな理由で、経済活動としては当然な帰結といえる。今では適切な枝打ちや間伐が行われないことで商品価値を持ち得ない森林が日本の社会問題となっている。

これは一企業で立ち向かうには大きすぎる問題なのだが、森林保全や林業地域活性化のために木製家具メーカーとして何ができるだろう?という意識を背景を持つブランドだ。

マーケティングにおいては、特別にそれを前面に出している印象はない。日本とオランダ、スイス等のフレッシュな世代のデザイナーによる家具と雑貨でコレクションは構成され、クリエイティブディレクターを置くことでイメージの統一を図っている。初代は柳原照弘氏、現在は二代目のDavid Glaettli(ダヴィッド・グレットリ)氏だ。

小物を含めてシーンを構成できる家具ブランドは珍しい

小物を含めてシーンを構成できる家具ブランドは珍しい

ミラノでは2010年から毎年、デザインウィーク期間中の市内でライフスタイルやワークスタイルのシーンを想起させる展示を行っている。対して、2015年に続き2回目となるケルンでは、イメージ発信ではなく製品をストレートに訴求する構成。グレットリ氏に初日に聞いたところによると「昨年に比べ広く、目にとまりやすい好位置を確保できた。ソファやダイニングセットが新たに加わるなど、コレクションの成長に来場者からの反応も良い」とのことだった。

KARIMOKU NEW STANDARD
【関連記事】
「imm cologne」から海外市場にアプローチ!「KARIMOKU NEW STANDARD」の挑戦

欧州勢の展開と特別企画「DAS HAUS」

商売のケルンと言っても、欧州の名だたるブランドは広大なブースでシーン提案をしており空間としても見応えがあるものが多い。WALTER KNOLL、COR、THONETといったドイツ勢はもちろん。イタリアからも、B&B ITALIA、Poliform、Cassina、FLEXFORM、Poltrona Frau、Minotti等が大挙して出展しており、これにはミラノの前哨戦という印象もある。フランスのLigne Rosetは、会期の近いメゾン・エ・オブジェにも大規模に出展しているが、ケルンでの展開にも力を入れている。

一つ一つの家具についてスペースを分けてコーディネートしていたCOR

一つ一つの家具についてスペースを分けてコーディネートしていたCOR

red and blue chairのパッド付きなど往年の名作家具のカラーや仕上げを変えて展示していたCassina

red and blue chairのパッド付きなど往年の名作家具のカラーや仕上げを変えて展示していたCassina

特徴的なソファのフォルムで他ブランドとの明確な違いを生んでいるLigne Roset

特徴的なソファのフォルムで他ブランドとの明確な違いを生んでいるLigne Roset

またケルンには毎年注目の特別企画「DAS HAUS」(ザ・ハウスの意味)もある。主催者であるケルン・メッセが「今年のデザイナー」を選出し、理想の家を会場で実現してもらうという趣旨。今年はSebastian Herkner(セバスチャン・ヘルクナー)氏が手がけていた。

バスチャン・ヘルクナー氏によるDAS HAUSのプレゼンテーション(以下2点とも)

Sebastian Herkner(セバスチャン・ヘルクナー)氏によるDAS HAUSのプレゼンテーション(以下2点とも)

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こうした広大な会場に日本の家具メーカーが3社、香り・アロマ事業で出展していたアットアロマ社を含めても全部で4社。それぞれの場所も離れているため、アンビエンテやメゾン・エ・オブジェに見られる日本を面で押し出す印象はない。商売のケルンにおいて孤軍奮闘というところだ。

先駆者として、その展開の成熟と存在の頼もしさを感じるカンディハウスと、ケルンにおいては3年目となる来年が正念場になりそうなMEETEE(ミーティ)とKARIMOKU NEW STANDARD。寒いケルンでの3社の熱い戦い方に今後も注目していきたい。
(山崎 泰)

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