Japan shop project in Kuala Lumpur

日本の工芸品の魅力をニュートラルに伝える空間

デザインコンセプト
担当:山﨑健太郎/山﨑健太郎デザインワークショップ

クアラルンプールの商業施設にある、日本の伝統工芸品を販売する店舗。この店舗の目的は、物品の背景にあるモノづくりのストーリーを伝え、日本文化に対する理解の一助となることだ。

そのために、物販スペース以外にもプレゼンテーションを行えるカフェを併設している。外側の通路から見ると、物販部分の格子で構成された什器はポイントで照射されているため、影のある物販スペースとなる。その奥に物販とカフェを分け、什器と同様の格子のスクリーンを配置。カフェの背後にある長さ18m、高さ3.5mある錫箔の壁面は、壁面全体をまんべんなく照らすウォールウォッシャーで照らされ、最も明るい面となっている。その際、スクリーンは光を受けた障子のようなシルエットとなり、空間に奥行き感を与え、カフェ部分を象徴的に演出する。桂離宮に代表される日本独特の陰影体験を商業施設で実現させた。

カフェ背面の錫(すず)箔の壁は二つの技術で支えられている。一つは素材の箔。工場で0.003mmに圧延された工場箔を使用している。二つめは、力がかかると切れてしまうほどの薄さをもった箔に独特の表情を与えてくれる職人技術だ。日本の職人が錫箔に手揉み加工を施し、和紙で裏打ちをしている。日本の機械技術と職人の伝統技術を合わせたものになった。

カフェでは、iPadを使ってこの錫箔加工を行った職人へのインタビューと加工風景の映像を展示し、妖艶な光を受けた錫箔の正体を知ることができる。これは、この店舗が伝統工芸を扱う精神を示しているものであり、空間がその代弁者としての役割を担っている。

日本の工芸品分野にとってマレーシアは未開のマーケットであるため、その魅力を伝えることはクライアントにとって大きな挑戦である。そのため、商材構成の変化を考慮にいれた空間設計は必須であり、特定のイメージを与えてしまうマテリアルやモチーフは不向きと判断した。ニュートラルでありながら、事業に対する強い理念を表現することを心掛けた。

所在地 マレーシア・クアラルンプール
延床面積 323.64 m2
プログラム 物販店+カフェ
ライティングデザイン 永津努 / Phenomenon lighting design office
撮影 Joshua Lieberman