「丸太が転がってる…!」と、思わず二度見してしまうフルーツパーラー「堀内果実園 グランフロント大阪店」。大阪の玄関口のビル内にある同店は、テイクアウトはもちろん、その場で果物がたくさん入ったフルーツサンドやかき氷が楽しめます。
特徴的な丸太車輪のフルーツトラックで「農園から店舗へ」「果物を運ぶ」ことを表現したというお店について、設計を担当したやぐゆぐ道具店の鈴木文貴さんに、制作背景などお話を聞きました。
■制作背景
古くから柿の名産地として知られる奈良県吉野。その山麓で代々くだもの農園を営む農家がお届けする、くだものを楽しむお店が「堀内果実園」です。今回、大阪駅北口の再開発エリアの商業施設に地元・奈良店に続く2号店が計画されました。
この店では「奈良吉野から大阪へ」「農園から都会へ」果物を届けるということや、「国産無添加ドライフルーツ」「まるごと桃を使ったかき氷」といった、堀内果実園の商品のオリジナル性や革新性を空間に表現したいと考えました。
■コンセプト
古代ピラミッド建造の際は大石を丸太に乗せて転がしたと言われています。丸太は車輪の原始的な形です。丸太車輪を用いることで、“運ぶ”という意味や、産地へ想いを巡らせる基点にしたいと考えました。
奈良、吉野杉の原木車輪は農園と店舗をつなぐ象徴であり、再開発前は貨物駅跡地だった、この土地の記憶を辿る表現でもあります。
■特徴
果物の内側(フレッシュで、飾らず隠さず、素直な味)を伝えたいと思い、内装はパテ下地や鉄素地に透明コーティングだけ施すことで「普段は見えない内側を晒す」ことを目指しました。一方でスツールや椅子は果物に指し込んだフォークやスプーンかのごとく、アルミ鏡面ポリッシュ仕上げにしました。
そのほか、乗車席テーブル・動く冷蔵ケース・可動電源・磁石フックなど、青果の物流現場から発想したディティールを取り入れています。ここに人や産物が行き交い、貨物駅のような賑やかな風景と物語が再び生まれるといいなと思います。
東京で設立されたデザイン事務所。2018年に奈良の山村にある旧製茶工場に拠点を移し、インテリアデザインのほか、プロダクトやインスタレーション制作も行っている。理念は「もの と ものがたり」。
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