箱めがね

太陽光の暖かさを導く、景色を切り取る筒

デザインコンセプト
担当:岸本貴信/CONTAINER DESIGN

徳島県徳島市にある、木造2階建てのリノベーション。海外に暮らしていた頃の家は暖房設備が整っており、とても暖かく快適に暮らしていたと言うクライアント。海外生活が終わり、もともと住んでいた日本の家に帰って来た際、冬の家の寒さに驚いたそう。また、夫婦二人の生活になり、暮らしの変化や明るさ、風通しなどが気になったため今回のリノベーションに至った。

敷地は北東の角地に面し、朝日がとても気持ちよく入り、明るい家になるには好条件だった。また、北東角の道向かいには桜の木が立派に立ち、この住宅地に住み、行き交う人々を出迎えてくれている。リノベーションの際、キーポイントになるのは構造だ。極力現状の構造は触らずに、バランスよく構造耐力を増していくのが理想的でもある。現状を保ちつつ、暮らしを変える。そこでふと頭によぎったのが「箱めがね」である。

海や川、いつも見ている何ともない風景。それが箱めがねを通すことで、水面からは想像も付かない水中の世界が広がって行く。ひとつの要素によって、全然違う世界が見えてくる。現況の家の北東と南の2箇所に箱めがねを彷彿させる木の箱とガラスの窓を挿入した。その際、現状の構造となる壁や柱は現状の位置のままで考えた。すると太陽の光を家の内部に導く筒となり、筒状の箱はそのまま構造の耐力壁と水平の耐力床となる。また1階と2階をつなげる、広々とした吹抜け空間を作りだした。吹抜け部には蓄熱暖房器も設置されているため、家全体を暖かくしてくれる。

箱めがねは景色も切り取り、食卓からは北東の桜の木を望むことができる。「箱めがね」というひとつの要素を組込むことで、今までとは違う環境を作り出すことができた。

所在地 徳島県徳島市
用途 住宅(リノベーション)
構造・規模 木造2階建て
敷地面積 138.18m2
延床面積 102.84m2
階床面積 58.58m2
2階床面積 44.26m2
設計 CONTAINER DESIGN
撮影 富田英次