コーヒーをただの眠気覚ましとは考えずに、鮮度や焙煎に気を使い、産地や品種にこだわるスペシャリティコーヒーを扱うカフェを、千葉県千葉市のはずれで計画した。

立地は隣の四街道市との境に位置し、千葉北地域の工業地域や流通基地などで働く人々の生活圏であり、また、自衛隊の駐屯地が目の前にあり、自衛隊の人々もよく行き来する場所でもある。平日の日中、若い人たちは工場や倉庫で働くか、東京へ働きに出ているため、地域には高齢者か子育て中の女性が中心で、オーナーはそういった人たちに利用してもらえたら良いのではないかと考えていた。

空間は鉄骨造の倉庫に対して、100m²弱の空間を仕切ることで店舗とする計画をした。このカフェのコンセプトを“ちゃんとしたカフェ”と定義して、カフェを開こうとする個人店オーナーが陥りがちな点をなるべく取り除き、提供するに値する店舗が計画できるよう考えた。

予算やオペレーションの都合などから、既存建物の前方を壁で仕切り、店内としている。もともとの建物が備えていた開口部をそのまま入口として使用するためにガラスを挿入し、その正面にちょうど平行に調理と提供スペースを配置した。左右の開口部から死角になる場所にダイニングテーブル席を用意し、中央にはローテーブルとベンチ席を用意した。

内装はすべて塗装仕上げで、カウンターやテーブルなどの天板になる部分はモルタル、椅子やテーブルの脚、建具には木材を使用。できる限り既製品を使わないことで、新建材の既製品だらけの一般家庭ではできない体験が、この店舗を個性的にするように計画した。また、開口部が限定され、外の緑を感じることが難しいため、各テーブルに緑を配するためのポットを埋め込んだ。それぞれに違う表情の植物とテーブルの天板が、何度も脚を運んでくれる常連客にいつも新鮮な気分を提供できればと考えた。