- デザインコンセプト
- 担当:kurosawa kawara-ten
千葉県いすみ市大原にあった、明治44年(1911年)築の卸酒屋の蔵の改修プロジェクト。ところどころ梁が崩れ落ちていたり、柱が白蟻に食われていたり、全体的に傾いていたり、到底そのまま使用できるような状態ではなかった。この地方もまた、この蔵のように衰退しきっており、この蔵のある自治体も現時点で準限界自治体であり、空家の問題にも悩まされていた。そんなおり、千葉大学の「COC+」という、学生を地域に根付かせることを目的としたプログラムのために学生を活動させることになり、この古い蔵を大学生が活動するための事務所へと改修することになった。
現在日本では、新しい住まいや店舗などをつくる際には、古い建物は一瞥もされずに壊されて、地域の文脈とは全く関係のない新建材や量産のための工法で建て替えられてしまう。それこそが各地域を均質化させ、無価値化して崩壊させる根源の一つであり、地域を再生させる際にその誇りやアイデンティティを無視することはできないのは明らかだった。そこで、この蔵の改修も使えるものは引き続き使い、また、新しいプロジェクトのための必要な新しさは、古いものや既存のものを最大限尊重して決定されるべきだろうと考えた。
地域での活動や交流に必要な開放性をつくるために、蔵の東西面をすべてガラスの開口部とした。それとは反対に、学生たちの作業への集中や地元の人々との適度な距離感のための緩衝材として、南北面の壁は既存のままに残すこととした。弱くなった耐力は、開口部に新しく鉄骨の骨組みを挿入することで補強し、庇の受けや出入り口のゲートとして既存建物に溶け込むように配慮した。床面は基礎スラブをそのまま仕上げとしてある。庇の下の砕石は古い瓦を砕いて再利用したもので、外装のトタンも年代はあまり古いものではないが、海の町の人々がよくトタンを用いて倉庫などをつくっている雰囲気を残すためにそのままにしている。
所在地 | 千葉県いすみ市大原7777-3 |
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平米数 | 76.185m2 |
構造 | 木造 |
開業日 | 2018年6月 |
設計 | kurosawa kawara-ten |
グラフィックデザイン | しなやかデザイン |
千葉大学地域コーディネーター | 加藤美栄 |
撮影 | 佐藤亮介 |