クリエイター5人に聞く―2022年、なに買った?

クリエイター5人に聞く―2022年、なに買った?

桝永絵理子さん

古代の建築や道具、暮らしといった何千年も前から受け継がれているものや技術に魅了され、アートとテクノロジー、原初と未来、そして野生の思考と科学的思考の融合をテーマに分野を横断した活動をする「AATISMO」。活動拠点を東京から神奈川に移したAATISMOの建築分野を担当する、桝永絵理子さんが2022年に惹かれたものは?

コミュニケーションが取れる相手、ミニチュアブルテリアのネロ

「買ったもの」というと語弊があるかもしれませんが、昨年家を引っ越した際、ミニチュアブルテリアをうちに迎えたんです。Instagramでミニチュアブルテリア特有の愛嬌や変なしぐさが可愛いなと思って惹かれ、ブリーダーさんに連絡を取って会いに行きました。すぐには決められないかなと思っていたのですが、会ってみると人懐っこくて性格も明るく、可愛かったのですぐに飼うことを決めました。

ずっと原宿に住んで仕事をしていたんですけど、家にいる時間がすごく長く窮屈に感じてしまって。理想とする暮らしを実現しながら建築の仕事を考えていきたいなと思ったのがきっかけで引っ越しをしました。夫の祖母の一軒家が空いていたので、その家の管理も兼ねて住みはじめ、庭で畑作業をしたり、これまでとは違った暮らしをしています。

畑画像

桝永さんのご自宅の畑

新しい環境になって始めたこともいろいろあったんですが、夫が仕事に行って私は在宅で仕事をしていると一人の時間が長く、畑だけで満足ができなくなってしまって……。あとは、いきなり都内のすごく狭い部屋から一軒家に一人だとちょっと怖いこともあり、コミュニケーションを取れる相手がほしくて、ミニチュアブルテリアのネロを家に迎えたんです。

ミニチュアブルテリア

ミニチュアブルテリアのネロちゃん

家に来たときは生まれて5カ月で比較的大きく、基本的なしつけがされていましたが、まだしつけてもわかってくれないときもあって、でもそういう思い通りにならないところも楽しいなと思うようになりました。

建築の実験、水耕栽培

これも引っ越してからの話になりますが、キッチンでハーブなどを栽培しているうちに、これを建築に応用するためにはどうしたらいいんだろうと考え、水耕栽培をやってみることにしました。将来的に何か建築をつくる上でのヒントにならないかという実験も含めて、株式会社アクポニの水耕栽培ができる「アクアスプラウトSV」を購入しました。

桝永さんが購入した「アクアスプラウトSV」

桝永さんが購入した「アクアスプラウトSV」

畑は虫がついたり、土を耕したりとか結構手間がかかるんですけど、この水耕栽培は土を使わないので虫がつくこともないですし、温度管理もできます。それから、水耕栽培では、魚の糞から出る栄養が植物に回り、アンモニアなどを吸収して浄化するという自然のサイクルがこの中で起こっています。

いろいろ見たなかで、この商品は魚を育てられ、水槽の面積も大きく、インテリアとしてデザイン的にもよかったので購入しました。ライトがついているので、暗い部屋でも栽培することができますし、水の流れる音とかも聞こえるので気に入っています。

アクアスプラウトSVとミニチュアブルテリア

「アクアスプラウトSV」に興味津々なネロちゃん

“買い物”について

家電製品はすぐ性能が落ちたり保証が必要だったりと、関係が続かない気がしてあんまり好きじゃないんです。ずっと使い続けられるものの方が好きで、あまり中途半端なものは買わないようにしてます。フライパンなども鉄製とか、ずっと育てていけるようなものが好きです。

ただ、調理器具はついつい買ってしまいます。結構マニアックなものもあって、ジンギスカン鍋や焼き鳥焼き器、燻製機、低温調理機やフードドライヤーなどいろいろそろえちゃうんですよ。食材ではなくどの調理器具を使うかでその日に料理するものを決めたりすることも多いですね。

建築をやるうえで、自分で生活を楽しまないといろんな提案もしづらいと思っていて、今後も自分の実体験が何かヒントになったらいいなと。それが生活のなかでも馴染みつつ、ちょっとスパイスになるようなものを今後つくっていきたいなと思っています。

■桝永絵理子
中森大樹(工業デザイナー)、海老塚啓太(建築家・コンセプトデザイナー)、桝永絵理子(建築家)の3人によって東京を拠点に「AATISMO」を結成。
https://aatismo.com/

武笠太郎さん

「コレジャナイロボ」や「自爆ボタン」「土下座ストラップ」など玩具・ガチャガチャの企画開発やデザインを軸に、キャラクターデザイン、作詞作曲などジャンルにとらわれないコンテンツ制作をおこなうザリガニワークス。工作を担当する武笠太郎さんに、2022年に購入したお気に入りの商品をご紹介いただきました。

わずらわしさを解消した、ネックライト

4年前に山間部に引っ越しをしたので、現在、まわりが山に囲まれた野生的な生活をしています。そんななかでの買い物のためどうしても山の生活に寄ってしまうのですが、近所のホームセンターでネックライトを買いました。実は地域の炭焼き部に入っていて、炭窯に入って作業をしたり、夕暮れに外で作業したりなどを休日にやっています。その時にヘッドライトを使用する場面が多いんですけど、ヘッドライトはゴムバンドがちょっと煩わしかったり、ちょうどいい位置に調節するのが下手で苦手でした。

ネックライト

武笠さんが購入したネックライト

ネックライトは前々から調べていたとかではなく、何気なく購入したらものすごく便利でした。デザイン的に洗練されているとは言えないかもしれませんが、とても気に入っています。2022年に買ってよかったと思うもの第1位です。明るさは2段階に調節できるし、ワイヤーは左右それぞれ動かせるので、明るくしたいところを楽に照らすことができます。バイク屋さんなどの界隈で整備する時に便利だって噂になってるみたいです。

2022年ダントツで一番のガチャガチャ

仕事でガチャガチャの企画に携わることが多く、気になったものをたくさん買うんですけど、2022年で一番好きだったのが「ぴちぴち鮮魚」です。本体にあるギアを指で回すと魚がピチピチ動くんですよ。こういうバカバカしいのが大好きで、昨年はこれがダントツで印象に残りました。イカが出なかったのが残念ですが……(笑)。

ぴちぴち鮮魚

残念ながらコンプリートとはならなかった「ぴちぴち鮮魚」

18年前の会社設立のときからガチャガチャの企画をしていて、お仕事でガチャガチャの企画を考えるときは相方の坂本とコンビでアイデアを出し合いながら、「最近ちくわが気になるんですよね」などポロっと言ったアイデアを膨らませて選んでいます。昔はガチャガチャを企画しても実現が難しかったのが、最近はガチャガチャの専門店も増え、市民権を得た感じがしますね。企業のイメージアップにもつながりますし、攻めた企画も通りやすくなりました。

それから最近では、カプセルレスのガチャガチャがブームになっていて、カプセルがそのまま商品になっているものもあります。たとえば、カブトムシのガチャガチャでカプセルが虫かごのようになっていて、捨てずにそのまま使えるなどいろいろ発売されています。環境負荷についてはガチャガチャ業界も気にしていて、バイオマスプラスチックにしたりなどいろんな工夫をしています。

ガチャ「虫かご甲虫採集標本~Wood~」

カプセルが虫かごになっているガチャ「虫かご甲虫採集標本~Wood~」

“買い物”について

移住してから買うものは変わりましたね。たとえば都内に住んでいるときは絶対に「砂利」とか買わなかったですし(笑)。砂利は雨や台風で流れてしまった箇所を補修するのに必要で、ホームセンターで1袋2袋買ってきても全然足りなくて、軽トラ一杯分はほしいくらいです。それからノコギリやチェーンソーなど道具系は増えました。

道具を買う時は、木の切り方ひとつにしてもすごく詳しくまわりの方がいろんなことを教えてくれます。悪く言うと隠れていられないとも言えますが、飛び込んでいくといろいろな知識を教わることができますし、地域との関わりは楽しいですね。

あと、ガチャガチャはつい買ってしまいます。ほかの買い物は品質的にいいものや生活においてどのようなシチュエーションで使うかなど考えますが、それとは違って「参りました!」「よくぞこの企画を通した!」という感じで、企画や心意気に投票したり、いいねボタンを押す感覚で買っていますね。

あとは、ガチャガチャは本体の表面に描かれたワンビジュアルが重要になりますが、ジャケ買いみたいにそのビジュアルデザインの素晴らしさや企画力に惹かれて買ってしまうこともあります。月にだいたい10~20個くらい買いますが、新商品は月に300個くらい発売されているそうなので、全然追いつかないです。

武笠さんのガチャガチャコレクション画像

武笠さんのガチャガチャコレクション

■武笠太郎
マルチクリエイティブ会社「ザリガニワークス」の工作担当。個人活動として、地域×ガチャガチャ「地産ガチャ」や、アート工作&デザイン教室「くりえいと」、ダンボールキャップブランド「fullergile」など主催。
http://www.zariganiworks.co.jp/

タイトルイラスト:カチナツミ 取材・編集:石田織座/岩渕真理子(JDN)