スタートアップと並走して課題解決を行う、PARK佐々木智也がブランド「LOGIC」を立ち上げるまで

第6回「みんなでクリエイティブナイト」レポート(中編)

スタートアップと並走して課題解決を行う、PARK佐々木智也がブランド「LOGIC」を立ち上げるまで

デザインの役割や価値について“みんな”で考えていく、エイトブランディングデザインとJDNの共催イベント「みんなでクリエイティブナイト」。「スタートアップとデザイン」をテーマに、KESIKI INC. パートナーを務める石川俊祐さんと、PARK Inc.代表の佐々木智也さんのおふたりをゲストに迎えた第6回目の模様を、3回に分けてお伝えしていきます。

前編に続き、中編では佐々木さんのレクチャーをお届けします。

スタートアップやベンチャーのビジネスとの並走

PARK Inc.代表の佐々木智也です。僕は大体10年ほど広告業界にいて、アートディレクターとしておもにマス広告などをつくっていたのですが、「そろそろマス広告だけやっててもまずいんじゃないか」といった危機感を抱くようになり、ITベンチャーのカヤックに転職しました。そこで、企業と長いお付き合いをし、並走しながらブランド価値を高めていく仕事がしたいと思い、現在のPARKという会社をつくりました。

PARKのメンバーは、デザイナーの比率がいちばん多いんですが、コピーライターやプロデューサーなど、多様な職能のメンバーが集まっています。いまでも僕も含めて3人が共同代表を務め、株も3等分しているので、いわゆる喧嘩すると大変なパターンなんですが(笑)、3人ともカヤック時代からの同僚であり、近い志を持つ友人でもあるのでむちゃくちゃ仲良くやっています。

佐々木智也 アートディレクター。1979年生まれ。東京造形大学インダストリアルデザイン専攻卒。広告制作会社、Saatchi&Saatch Fallon、面白法人カヤックを経て、2015年にPARK Inc.を設立。 広告やインタラクティブの幅広い経験を活かして新しい産業へのコミットを目指し、 スタートアップ・ベンチャーのコーポレート及びサービスブランディングを中心に、Web、パッケージ、プロダクト、グラフィックなど領域横断的に手掛ける。2020年夏、新規事業としてメンズスキンケアのD2Cブランド『LOGIC」を立ち上げ、自らスタートアップ起業家としてのキャリアもスタートさせる。

「デザイン経営」が最近はよく取り沙汰されていますが、デザインやクリエイティブといったものが、どこまで経済活動やビジネスに寄与できるのかということが、一般的にはまだふわっとしていると思うんですよね。なので、僕らはそれをどうすればうまく支援できるのかを実践することを、ミッションとして掲げて活動しています。

具体的には、おもにスタートアップやベンチャーのブランディングやデザイン領域の支援を行っています。もともと自分のバックグラウンドとしては広告やデジタルの領域のデザインですが、クライアントから相談を受けた上で、その課題ベースで領域を超えて仕事をしています。

当初の相談内容から話を聞いていくうちに、それだけじゃ解決しないということが分かってくるんですよね。たとえば、最初はWebサイトやロゴを変えたいといったご相談をいただくんですが、そこから一歩引いた目線で、そもそもなぜ変えたいと思っているのかであったり、いまの会社の状況や、従業員、サービスについても話を聞いていくと、ミッションやビジョンの見直しやコーポレートアイデンティティも変えた方がいいんじゃないかという話になったり。そうすることで、結果的に広い範囲でお手伝いさせていただいたり、当初とまったく違うソリューションになったりすることが多いので、手段をうまく組み合わせて解決に導いていくようなやり方をしています。

PARKは6期目が終わり、7年目を迎えたところなんですが、3、4年ほどに前に、ベンチャーキャピタルのブランディングについて相談をいただいたことをきっかけに、ベンチャーキャピタルの投資先であるスタートアップ企業の課題解決に関わるようになりました。気がついたら、いまでは7、8割ぐらいはスタートアップやベンチャーの仕事をしていますね。

スタートアップやベンチャーの支援の中で、どのようなことを解決しているのかというと、大きく2種類があると思います。1つ目は、スタートアップ企業でよくある例として、自分たちが会社の魅力や強みだと思っていることと世の中が思っている会社の強みがずれていたり、アピールしたいことが多過ぎて、優先順位が付けられない、もしくは自分たちの魅力に気付いていないということがあります。これはスタートアップに限らずですが、本来の強みや「らしさ」をクリエイティブやデザインの力で解決していく仕事がいちばん多いですね。

2つ目は、スタートアップでは、成長期には1ヶ月で80人くらい入社することもあったり、信じられないほど短期間で人が増えることが普通にあるんですよね。そうすると、初期メンバーと会社が大きくなってから入社したメンバーとのカルチャーギャップが生じてしまうことがあって。初期のメンバーの間では、会社のビジョンについてあうんの呼吸でわかってるけれど、後から入社した人は会社の知名度で入っていたり、中には勝ち馬に乗りたい人がいたりとさまざまなので、本来会社としてまい進していきたい思いが薄まってしまうこともあります。その時に、改めて会社の理念やミッションを見つめ直したり、社員が原点に戻るためのお手伝いをしています。

「AMOEBA ENERGY」

具体的にいくつか事例を紹介します。これは、慶應大学SFCでアメーバの研究をしている青野真士さんの会社「AMOEBA ENERGY」での仕事です。実はアメーバはすごく頭がよく優秀で、青野さんはそれを人工知能にしようとしていて、コンピューティングを通して、アメーバのぐにゃぐにゃとした環境適応力が高いフィジカルと頭脳を使って、物流のラストワンマイルを解決するロボットをつくっているんです。これはいろんなパートナーと一緒に仕事をしたんですが、僕らは会社自体のブランディングはもちろん、ロボットをかたちにするプロセスにも一緒に関わらせていただきました。

「Pococha」

DeNAが運営している「Pococha」というライブ配信サービスの仕事では、VIなどのデザイン資産を、ユーザーが自由に使えるようにデザインしています。キービジュアルやフォントはもちろん、グッズや小道具でもデザインが使えるようにパターンのルールをつくったり、ユーザーが制限なく自由に使えるための仕組みをつくる仕事でした。

「ARCHI-DEPOT」

寺田倉庫がはじめたサービス「ARCHI-DEPOT」では、UI/UXデザインに関わらせていただいています。これは、建築を志している人や建築家が建築模型を預けることができて、さらに売ることもできるサービスです。実は日本の建築模型は世界中で骨董価値があるとされていて、お金を払って買いたい人が海外にはいっぱいいるんですね。なので、ここに建築模型を預けることでポートフォリオとして使っていただきつつ、マーケットプレイスにもなるようなプラットフォームを一緒につくりました。

「TSUKURUBA」

リノベーション物件の売買やマーケットサービスの「cowcamo(カウカモ)」など、不動産系サービスを展開しているツクルバという会社が、創業10年目の上場のタイミングで、アイデンティティを新しくすることになり、お手伝いをさせていただきました。

最初は代表を中心に進めていたのですが、ある程度かたちになった時点で、やっぱりちゃんとメンバーを巻き込んだボトムアップでつくっていこうということになり、全社員ではないんですが、関わりたい人たちを募り、1回30人くらいが参加するワークショップを4回ほど実施しました。あとは、会社内でロゴリニューアル委員会をつくり、10人ぐらいのメンバーでもワークショップをしたり。会社の一大イベントとして、1年数ヶ月ほどかけて、ロゴタイプやVIをつくりました。

真に愛せるブランドをつくるために立ち上げた「LOGIC」

いままでクライアントワークをしてきたんですが、スタートアップと一緒に仕事をやっていたら、自分でも事業をやりたくてしょうがなくなってきてしまったんですよね。

以前、化粧品メーカーのブランド立ち上げに関わる仕事を3年ほどしていたのですが、その時にいち消費者として化粧品にはまってしまって。同時に、男性向け化粧品の選択肢があまりに少ないことに気がついたんです。また、僕はいま41歳なんですが、僕ぐらいの年齢とライフスタイルに寄り添ってくれる商品がないんですよね。たとえば、こういった人前で話す場面や対面での打ち合わせの機会も多いんですが、ビジネスでの身だしなみや、毎日のメンテナンスとして本当に使いやすい化粧品というものが見つからず……。

最初は、世界一の化粧品見本市がある香港に行って、世界中の化粧品ブランドの中から、日本未発売のものを直接交渉して代理販売することも考えたのですが、なかなかご縁がなくて。でも、そういった商品に対して、メーカーの人ほど強い思い入れを僕自身が持てないなと感じたんです。真に愛せるものはやっぱり自分でつくるしかないなと、リスクを負ってでも自分でやろうと思って立ち上げたのが「LOGIC」というブランドです。

化粧品市場はものすごく大きいので、僕らみたいな小さな存在が立ち向かうためには、振り切った表現をしないといけないと思い、こういったインパクトのあるビジュアルをつくっています。2020年の6月にクラウドファンディングを実施し、共感して応援してくれる人たちを集めることからはじめました。僕らは化粧品業界からすると新参者なので、人と同じことをしてもしょうがないと思い、あえて自分たちがどういう思いで化粧品のブランドをはじめたのか、そしてどのように商品をつくったのかを最初からオープンにしています。また、このブランドはスタートアップの仕事をしてきた僕が使いたくてつくったものであり、同時にこの商品を使ってほしいのもそういった人たちなので、商品の特徴も、スタートアップの仕事をする人たちの生活習慣に合わせています。なので、自分の思いを正直に発信するようにしていて、そうすることでストーリーに共感してくれた人が集まってきてくれていますね。

反響はものすごく大きくて、オンラインを中心にメディアで取り上げていただいています。もともとは、いわゆるD2Cとしてオンラインをメインに販売していますが、小売店からもお声がけいただいていることもあり、実際に体験ができる場を設ける必要もあるなと感じています。今後は自分たちの考えに賛同してくれる方々と一緒に、ブランドを展開していきたいと思っています。

写真:服部冴佳(エイトブランディングデザイン) 文・編集:堀合俊博(JDN)

【関連記事】
・スタートアップと並走して課題解決を行う、PARK佐々木智也がブランド「LOGIC」を立ち上げるまで:第6回「みんなでクリエイティブナイト」レポート(中編)
・スタートアップの美意識を生む、カルチャーのデザインとは?:第6回「みんなでクリエイティブナイト」レポート(後編)