建築と不動産、建築と経営の「あいだ」を追究する:第4回みんなでクリエイティブナイト(中編)

建築と不動産、建築と経営の「あいだ」を追究する:第4回みんなでクリエイティブナイト(中編)

デザインの役割や価値について“みんな”で考えていく、エイトブランディングデザインとJDNの共催イベント「みんなでクリエイティブナイト」。「アフターコロナとデザイン」をテーマに、noiz /gluonのパートナーである建築家の豊田啓介さんと、創造系不動産代表を務める高橋寿太郎さんのふたりをゲストに迎えた第4回の様子を、3回に分けてお伝えしていきます。

前編に続き、中編では高橋さんのレクチャーをお届けします。

設計事務所から不動産営業へ

私は創造系不動産という会社の代表をしています。土地や建物の売買を仲介したり、大家さんや地主さん、家を建てたいという方の不動産やお金のやりくりなどをバックアップする仕事をしています。私たちが不動産会社として変わっているのは、建築家やデザイナーの方とコラボ―レションする案件しか請け負っていないところだと思います。

<strong>高橋寿太郎</strong> 創造系不動産代表 1975年大阪市生まれ。2007年まで東京の設計事務所で、住宅から商業施設、公共建築まで14件の建築設計監理業務をチーフとして歴任。その後2011年まで東京の不動産総合会社で、分譲開発・売買仲介・賃貸管理・コンサルティングなど幅広く業務。2011年11月、創造系不動産株式会社を設立。建築家とのコラボレーションに特化した不動産会社のリーディングカンパニーとなる。2012年から継続する「創造系不動産スクール」には、多数の建築設計者が集まる。2019年、外房のいすみ市で「いすみラーニングセンター」を展開。

高橋寿太郎 創造系不動産代表 1975年大阪市生まれ。2007年まで東京の設計事務所で、住宅から商業施設、公共建築まで14件の建築設計監理業務をチーフとして歴任。その後2011年まで東京の不動産総合会社で、分譲開発・売買仲介・賃貸管理・コンサルティングなど幅広く業務。2011年11月、創造系不動産株式会社を設立。建築家とのコラボレーションに特化した不動産会社のリーディングカンパニーとなる。2012年から継続する「創造系不動産スクール」には、多数の建築設計者が集まる。2019年、外房のいすみ市で「いすみラーニングセンター」を展開。

もともと私は建築家になりたくてずっと建築を学んでいました。社会人になってから7、8年設計事務所に勤めていたので、十数年間どっぷりと建築設計の世界に浸かっていたことになります。古市徹雄さんという建築家の設計事務所に勤めていたのですが、運よくたくさんの案件を担当させていただき、事務所経営に関わる部分も携わらせていただきました。

高橋さんが設計事務所時代に手がけた建築

高橋さんが設計事務所時代に手がけた建築

住宅や体育館、商業ビル、マンションなど、いろんな設計を担当させていただいていたのですが、なんとその後、不動産営業に転職します(笑)。「なぜですか?」というのはよく聞かれることなのですが、ただ、勇気がなかったんですね。「独立して建築家になる」というのは、憧れとしてしか考えていなかった。当時30歳ぐらいだったんですが、このまま独立していいのかなって悩んでいたんですね。建築事務所時代は自分でも誇らしいくらい頑張っていたのですが、ちょっと休憩しようかなという気持ちで、当時クライアントだった小さな不動産会社に声を掛けていただいたので、ありがたくそちらに転職しました。

で、そこで不動産の営業をはじめたんですが、いきなり土地やマンションを売ったり、あとは不動産の契約をしたり。利回りや収支の計算とか、銀行ローンとか、もともとの建築設計の仕事とはまるで違う仕事をしていました。そこで気が付いたのは、建築の設計の仕事と不動産の仕事っていうのは、本来は近しい分野で、土地と建物というものはセットで考えるもののはずですが、それぞれ不動産と建築という別の領域に分かれてしまっている。なぜこんなにこのふたつの世界は違うんだろうと、転職して1年くらい経ってようやくこの大きな「壁」に気が付いたんです。

最初はすごく苦労しましたけど、粘り強くやってるうちに不動産営業も楽しくなってきたんですね。すると、その「壁」をなんとかしなきゃいけないという使命感がむくむくと湧いてきた。その頃に、創造系不動産のコンセプトになっている「建築と不動産のあいだを追究する」という意気込みを抱いたんです。

建築と不動産のあいだを追究する

創造系不動産は建築家の方とタッグを組んで仕事をしているんですが、私たちは、それぞれの建築における土地の売買や収支計算、住宅ローンなど、クライアントや建築家の方を、不動産やお金の面からサポートする仕事をしています。 いまは15人ぐらいのメンバーが働いていますが、全員が私と同じで、設計事務所出身なのに不動産をやってる、かなり変わったメンバーです。

創造系不動産がこれまで手がけてきた「ケーススタディ」(<a href="https://www.souzou-kei.com/casestudy/">https://www.souzou-kei.com/casestudy/</a>)

創造系不動産がこれまで手がけてきた「ケーススタディ」(https://www.souzou-kei.com/casestudy/

そういった、私が創造系不動産をつくるまでの過程や考えていることについては、『建築と設計のあいだ』『建築と経営のあいだ』という本を書いてきたのですが、建築と不動産の間にある学びや、建築と経営の関係について、建築士のみなさんにもっと伝えていきたいという思いで、会社をはじめてから割と早い段階で、創造系不動産スクールというものはじめました。だんだん口コミで広がってきて、いまでは教育プログラムを提供するビジネスとして展開しています。

創造系不動産スクールの様子

創造系不動産スクールの様子

また、千葉県の外房にあるいすみというところに、創造系不動産の支店をつくりました。私は関西から出てきてずっと東京で仕事をしてきたので、あんまり地方には興味がなかったんですが、2年ほど前にはじめていすみに行ってからハマってしまい、通っているうちに素敵な方々との出会いが本当にたくさんあったんです。

千葉県いすみ市

千葉県いすみ市

千葉県いすみ市

そこで支店をつくることにしたのですが、せっかく地方でやるのなら創造系不動産スクールのローカル版のようなかたちでやろうということで、「いすみラーニングセンター」という活動をはじめました。月に1回、東京方面からいすみに集まって、地域の方から、地方での暮らしやビジネスなど、いろんなことを教えてもらっています。

いすみラーニングセンターの様子

いすみラーニングセンターの様子

地方でいろんな方の話を聞いてると、田舎にいらっしゃるのにITを駆使して情報発信しながら仕事をしてる人が、けっこうたくさんいるんですね。一方で、農家や役所の方など、逆に情報発信したいっていう方や、ほかにも東京の暮らしから離れて地方で仕事をされている方もいて。いすみラーニングセンターは、そういったさまざまな価値観についてみんなで話を聞いていくような、そんな場所にしていきたいなと思っています。

(後編に続きます)

【関連記事】
・デジタルとフィジカルを跨ぎ、「コモングラウンド」を建築する:第4回みんなでクリエイティブナイト(前編)
・コロナの時代を生きるための「変化」:第4回みんなでクリエイティブナイト(後編)

文・編集:堀合俊博(JDN) 写真:深地宏昌(エイトブランディングデザイン)