“現象を創造する”都市メディア、テクノロジーアートの祭典「MEDIA AMBITION TOKYO」

“現象を創造する”都市メディア、テクノロジーアートの祭典「MEDIA AMBITION TOKYO」

有機的に拡張を続けてきた「MEDIA AMBITION TOKYO」。メイン会場は六本木ヒルズ 森タワー52階 東京シティビュー「MAT LAB」ということになるが、12のエリアではそれぞれ個性的なプログラムが展開された。さわり程度にはなってしまうが、印象的なプログラムを通して拡張の一端を紹介しようと思う。

DIGITAL CHOC 2016

飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京で同時期に開催される、日仏メディアアートのフェスティバル「DIGITAL CHOC (デジタルショック)2016」とのコラボレーションは今年で2回目となる。「フュチュラマ(未来展望)」をテーマに、バイオテクノロジーやロボット工学などに対する、新たな未来を表現している。このコラボレーションは前年以上に意見交換も深め、六本木ヒルズ 東京シティビューの「MAT LAB」に展示される、1024 architectureやアレックス・オジエの作品は「MAT」と「デジタルショック」の共同主催という形だ。

【関連記事】フェスティバルでありプラットフォーム、日仏のメディアアートが交流する「デジタル・ショック」

'WALKING Cube | DIGITAL CHOC 2016' by 1024 architecture / Media Ambition Tokyo 2016

‘WALKING Cube | DIGITAL CHOC 2016’ by 1024 architecture / Media Ambition Tokyo 2016

Shadowing/Chomko & Rosier

テクノロジーやイノベーションの集積が進む虎ノ門ヒルズで展開される「Shadowing」 は、英国ブリストルを拠点にするメディアセンター、ウォーターシェッドによる「Playable City Award」の2014年度の最優秀賞作品で、今回の「MAT」で日本初公開された。英国を拠点に活動するデザインデュオ、チョムコ&ロジアによる「Shadowing」は、街を歩く人々が、過去に同じ場所を通った人が残した影と出会い、一緒に歩いたり、踊ったりするなどして交流し、その様子はデータとして蓄積されていく。そして、自分もまた次にそこを通る人のために影を残していくというもの。都市にテクノロジーカルチャーを実装し、新たな体験を生む作品の最たるものではないだろうか。

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Relight Days/Relight Project

これまでの「MAT」とは少し異なるインパクトを残し、メディアアートが宿命的に向かい合う問題、「時の経過」について考えるきっかけとなるのは「Relight Days」だろう。「Relight Days」は、人間の「生と死」をテーマにした宮島達男氏のパブリックアート作品「Counter Void」を、2016年3月11日に5年ぶりとなる再点灯する(そして再消灯する)3日間限りのイベントだ。

六本木ヒルズけやき坂に設置された「Counter Void」は、ある時期までは間違いなく東京を代表するパブリックアートだった。東日本大震災の発生から2日後の2011年3月13日、震災による犠牲者への鎮魂の意を込め、作者である宮島氏自身の手で消灯されて以来、その光が灯ることはなかった。

「Relight Days」は、ひとりひとりが生きることを考えた日を風化させないために、生と死、人のあり方を問う場をつくるためスタートした「Relight Project」によって、何度も勉強会やワークショップを重ねて進められてきた。それぞれの東日本大震災に対する思いや記憶が移り変わるなか、人々の心に問いと気づきを生み出すシンボルとして「Counter Void」を再点灯させ、未来の生き方や人間のあり方を考えるプラットフォームを目指している。

「Relight Project」を進めてきたRelight Committeeメンバーと宮島達男氏

「Relight Project」を進めてきたRelight Committeeメンバーと宮島達男氏

宮島氏は「Relight Days」に関して、以下のように語っている。

「震災からしばらくは東京中が灯りを消していたが、だんだんと街に光が灯りだし、3年くらいしたらすっかりイケイケになってしまった。「Relight Project」は、ただ消えていたものに灯りをつけることが目的ではなく、再び作品にエネルギーを吹き込んでいく作業。このプロジェクトを通じて、「Counter Void」をどう使っていくか?どう外に開いていくか?もう一度思考することからはじめた。「Counter Void」は協同していく時のプラットフォームやOSのようなもので、作者の手を離れて誰のものでもなくなったと感じる。作品が社会化していくことは、親(作者)としては寂しいけど本当に嬉しいこと」

3月11日の「Relight Days」の点灯式には、多くの人々が集まった

3月11日の「Relight Days」の点灯式には、多くの人々が集まった

こうした社会への、あるいは他者へ問いかけをしていくプロジェクトとコネクト、そして新しい可能性を内包するエネルギーが「MAT」には既に備わっている。レポートの冒頭で「MATは実験的プログラムを都市にインストールするだけのイベントではない」と書いたことの意味が少し理解していただけると思う。ここからどう変容を重ねて、そしてどう未来に継続していくのか楽しみだ。個人的には全体像の把握が困難なくらい、葉脈のように拡張することを期待している。

瀬尾陽(JDN編集部)

MEDIA AMBITION TOKYO 2016
開催期間:2016年02月26日(金)~2016年03月21日(月・祝)
会場:六本木ヒルズ 他 都内各所
http://mediaambitiontokyo.jp/