Vectorworks ベクターワークス活用事例

内と外がシームレスにつながる新しい空間-カスケード原宿(1)

UDS株式会社/有限会社ソラ・アソシエイツ

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内と外がシームレスにつながる新しい空間-カスケード原宿(1)
UDS株式会社(高宮大輔安藤数保
有限会社ソラ・アソシエイツ(藤田久数塩井弘一
「カスケード原宿(CASCADE HARAJUKU)」は、表参道から一本奥まった敷地にある食の複合施設。幾何学的な形状をもつ建物は開放感に溢れ、中央には建物4階にわたる吹き抜けがある。第9回 International Design AwardsのArchitecture/Landscape部門金賞受賞、JCDデザインアワード2016 BEST100にも選ばれ、国内外からの注目を集めている。企画・設計、ランドスケープ・照明を担当した4名に、施設の特徴やVectorworksの活用状況についてうかがった。
カスケード原宿(撮影:ナカサアンドパートナーズ)

カスケード原宿(撮影:ナカサアンドパートナーズ)

文化のなかったエリアに新しい食の施設を発信

高宮大輔さん(以下、高宮):JR原宿駅徒歩2分。表参道と竹下通りに抜ける2本の道路につながり、どちらからでもアクセスできる好立地。カスケード原宿(CASCADE HARAJUKU)は、そんなポテンシャルの高い場所に位置しています。ところが、プロジェクト開始前は周辺に目的施設が少なかったため、大通りから一本奥まった場所なので人通りが少ないという現実がありました。ですが、現地を訪れたときにまず感じたのは、環境の利を生かせば新しい文化の発信地となり得るチャンスのある場所ということでした。

クライアントは、当初はオフィスを中心とした施設も検討されていましたが、「単体目的となるオフィスビルや建物ではなく、きちんとコンセプトを立てて、その場所から何かを発信するくらいのインパクトがある施設をつくるべきでは」とお話ししました。クライアントにとって新規事業となりましたが、商業中心の複合施設をあえて提案したところ受け入れていただき、ブランディングやサイン計画なども含めた、企画の段階から関わることになりました。

高宮大輔(たかみや・だいすけ):UDS株式会社 COMPATH General Manager 千葉大学大学院卒業後、2001年都市デザインシステム(現UDS)入社。株式会社コプラスを経て、現在はUDS COMPATHのGeneral Managerを務めている。商業・宿泊施設から住宅まで幅広いジャンルの建築設計・空間デザインに携わり、近年では家具デザインを手掛けるなど、多岐に活動している

高宮大輔(たかみや・だいすけ):UDS株式会社 COMPATH General Manager
千葉大学大学院卒業後、2001年都市デザインシステム(現UDS)入社。株式会社コプラスを経て、現在はUDS COMPATHのGeneral Managerを務めている。商業・宿泊施設から住宅まで幅広いジャンルの建築設計・空間デザインに携わり、近年では家具デザインを手掛けるなど、多岐に活動している

いびつで高低差のある敷地に“新しい道”と“顔”をつくる

高宮:商業施設は、路面に対してどれだけ“顔”が見えているかで、お客様を引き込む力が変わってきます。しかし今回の敷地は、接道距離に対して奥行きがあり、かつ特徴のかなりある不整形な形状をしていたため、大事な“顔”が狭くなってしまうことが大きな課題でした。さらに、土地の高低差は約4m。表参道側は1階レベル、竹下通り側は地下レベルと分断されていて、「向こうに行きたいのに、スムーズに行けない」というストレスが生まれていました。そこで、設計よりも先に考えたことは、施設の中に“新しい道をつくる”ことです。お客様がゆるりと道を歩いている延長で、いつの間にか施設の敷地内に入ってしまうような道。敷地内に生まれる新しい道にも“顔”をつくることでお客様が集まり、にぎわいを彷彿するようなさまざまなプランを考えました。

好立地だが、高低差約4m(右上の図面)ある不整形な敷地

好立地だが、高低差約4m(右上の図面)ある不整形な敷地

安藤数保さん(以下、安藤):設計は、“新しい道”を中心に進められました。1階から地下へ続く大きな階段を降りると、中央にサルスベリの巨木がある中庭があります。そこから、竹下通りへ抜ける道は、テナント専用スペースにもなる通路です。こうして、高低差を生かした道が生まれました。大きな階段はゆるやかに降りてこられるように、そして中庭は3階まで吹き抜けにすることで、見上げるとすべてのテナントの入口、つまり“顔”が見えるようになっています。また、中庭を囲むように各階にはテラスが巡っていますが、これも人々のにぎわいが感じられるようにと設計しました。複雑な形状の敷地という条件のもとで、吹き抜けが課題解決の唯一の方法でしたね。

安藤数保(あんどう・かずほ):UDS株式会社 COMPATH designer 慶應義塾大学大学院修了後、UDSの企画デザイン事業部に入社。CASCADE HARAJUKUの企画・設計を担当した後、複数のホテル設計に携わり、現在は沖縄のホテルの企画・設計を担当している

安藤数保(あんどう・かずほ):UDS株式会社 COMPATH designer
慶應義塾大学大学院修了後、UDSの企画デザイン事業部に入社。CASCADE HARAJUKUの企画・設計を担当した後、複数のホテル設計に携わり、現在は沖縄のホテルの企画・設計を担当している


地下から竹下通りへ抜ける通路。テナント専用のスペースになっている(撮影:アック東京)

地下から竹下通りへ抜ける通路。テナント専用のスペースになっている(撮影:アック東京)

インテリア、エクステリア、テラスをつないでシームレスな空間に

藤田久数さん(以下、藤田):私たちソラ・アソシエイツが参加したときは、すでに建築のボリュームやおおよその骨格はできていました。建築設計を見たとき、とてもワクワクするものを感じましたね。おもしろい立地、形状、建物、それらをランドスケープとライティングの力でさらに活性化したい。外気に心地よく触れられるような空間に展開できないだろうかと考えました。

藤田久数(ふじだ・ひさかず):有限会社ソラ・アソシエイツ代表 ランドスケープデザイナー 1980年照明デザインのLDヤマギワ研究所入社。 1993年自然光が生み出す景色に魅せられALS景観デザイン研究所設立に参画。ランドスケープデザイン、環境アートを担当。1998年照明デザイナーの川村和広とソラ・アソシエイツを設立。個人邸から再開発まで広範囲にプロジェクトを手がけける。主なプロジェクトに「山梨県立博物館」「パレスホテル東京」「新宿イーストサイドスクエア」などがある

藤田久数(ふじだ・ひさかず):有限会社ソラ・アソシエイツ代表 ランドスケープデザイナー
1980年照明デザインのLDヤマギワ研究所入社。 1993年自然光が生み出す景色に魅せられALS景観デザイン研究所設立に参画。ランドスケープデザイン、環境アートを担当。1998年照明デザイナーの川村和広とソラ・アソシエイツを設立。個人邸から再開発まで広範囲にプロジェクトを手がけける。主なプロジェクトに「山梨県立博物館」「パレスホテル東京」「新宿イーストサイドスクエア」などがある

塩井弘一さん(以下、塩井):意識したのは、インテリアとエクステリア、テラスをつないで、敷地や施設の内と外をシームレスな関係にすることです。例えば、テラス照明には、ふだんは部屋の中を照らすために使うスタンドタイプを採用しています。これをあえてテラス空間に連続して置くことで、内と外をあいまいにしました。また、吹き抜け部分を中心とした立体的な建物形状を生かすために、吹き抜けの周囲にスタンドライトを配置して、上階へと導く効果も演出しています。

塩井弘一(しおい・こういち):有限会社ソラ・アソシエイツ ランドスケープデザイナー 2007年ソラ・アソシエイツ入社。公共施設、商業施設から住宅まで幅広いジャンルのランドスケープデザインに関わる。主な担当物件に「新宿イーストサイドスクエア」「国立科学博物館 筑波研究施設」「JR神田万世橋ビル」などがある

塩井弘一(しおい・こういち):有限会社ソラ・アソシエイツ ランドスケープデザイナー
2007年ソラ・アソシエイツ入社。公共施設、商業施設から住宅まで幅広いジャンルのランドスケープデザインに関わる。主な担当物件に「新宿イーストサイドスクエア」「国立科学博物館 筑波研究施設」「JR神田万世橋ビル」などがある

塩井:それから、外気を感じるアイテムとしてグリーンは欠かせません。今回の計画においては、刺激的で人を呼び込むパワーが絶対に必要だと思ったので、植栽選びにはかなりこだわりました。見た人が「なんだこれは!?」と驚いてしまうような樹種であったり、形が変わっていたり、足元にふわふわした植物やもっさりした植物を選んだり……。これほどに多品種でパワーのある植栽計画はなかなか見られないと思います。

施設の至るところにある多品種の植栽は見どころのひとつ(撮影:ナカサアンドパートナーズ)

施設の至るところにある多品種の植栽は見どころのひとつ(撮影:ナカサアンドパートナーズ)

高宮:建築だけでいくら頑張ってもいいものには仕上がらないんです。与えられた環境と一体化するランドスケープ、それらを相乗させる照明計画などが組み合わさって、インパクトのある施設ができ上がる。ソラ・アソシエイツさんなしでは成り立たないプロジェクトだったと思います。

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