「手が生んでいるから、あたたかい。」、「minne」がブランド・アイデンティティに込めた思い(2)

「手が生んでいるから、あたたかい。」、「minne」がブランド・アイデンティティに込めた思い(2)
ハンドメイドの価値を再定義する

――minneのアイデンティティを言語化していく上で、どんなことに重きを置かれましたか?

小藥:基本的にブランドのステートメントなどを策定する場合は、企業とカスタマーを軸に考えていくわけですが、今回はそこにつくり手さんも加わりますし、メッセージを届けるべき相手というものが多いんですね。その中で、すべてのターゲットに共通して流れている価値というものを伝えると同時に、この時代におけるハンドメイドのあり方というものが提示できるような言葉を探していきました。

杉山:購入者にヒアリングをしてみると、一点物であること、作家さんと直接コミュニケーションが取れること、カスタマイズができることなど、既製品にはない部分に価値を感じていただけていることがわかったのですが、それらが「ハンドメイド」という言葉に無理矢理押し込められてしまうことで、見えにくくなってしまっている気がしていました。

だからこそ今回のブランド・アイデンティティ策定では、小藥さんにもおっしゃっていただいたように、minneというサービスやハンドメイドというものが持つ価値を改めて伝えていきたいという思いがありました。

阿部:minneでは、作家さんが自主的に作品をラッピングして発送してくださることが多いんですね。ハンドメイドの作品を初めて買う時にはちょっとしたハードルのようなものもあると思うのですが、それを越えて一回体験していただくと、もう離れられなくなるんです。

杉山:それは実際に数字でも出ていて、最初に良い購入体験があると、ずっと使っていただけるんですね。ユーザーに購入体験のエピソードを募ったことがあるのですが、予想以上にたくさんの投稿が集まり、その一つひとつがハートフルなんですよね。作家さんからの直筆の手紙などが同封されていることなどもあり、自分でお金を払って買っているのに贈り物が届いたような気持ちになるというのが、minneの不思議なところであり、魅力なのだと思います。

小藥:やっぱりハンドメイドの作品は愛着や大切にしようという気持ちが全然違うし、出逢ったところから買い手にとってもストーリーがはじまるんですよね。GMOペパボの佐藤社長にお会いして名刺交換をした際、お持ちの名刺入れがminneで買われたものだと教えていただいたんです。その時に、お客さん一人ひとりにとってハンドメイドの作品というのは「ただ買ったもの」ではない特別なものなんだということが伝わってきました。minneは喜びや幸せをつくり手と買い手、買い手がほかの誰かにシェアできるサービスなんだと感じました。

――そうしたさまざまな要素が絡み合って、「手が生んでいるから、あたたかい。」というタグラインが生まれたわけですね。

小藥:「ぬくもり」という言葉を起点に、なぜあたたかいのかということを考えていくなかで、それは手が生んでいるからなんだということが見えてきたんです。つくり手と近い距離感でサービスを運営してきたからしっかり言えるブランドだし、これからも信じていくべきなんだと。また、ブランドステートメントでは、「それは『売れる』から生まれたのではなくて、『作りたい』から生まれた。」という言葉も書いているのですが、私たちがここで感じているあたたかさというのは、いま忘れ去られつつあるものなんじゃないかという時代に向けたメッセージでもあるんです。

ものづくりの楽しさを伝えたい

――同時にリニューアルしたロゴについてもお聞かせいただけますか?

minneの新ロゴ。デザインはアートディレクターの櫻井優樹さん(METAMOS™)が担当

minneの新ロゴ。デザインはアートディレクターの櫻井優樹さん(METAMOS™)が担当

minneのロゴの変遷

minneのロゴの変遷

阿部:櫻井さんが手がけたこのロゴは、イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動に参画し、自身も作家活動をしていたエリック・ギルという人が開発した「ギル・サン」という書体がベースになっています。また、よく見るとこのロゴは、櫻井さんが手書きしたドットの集合で構成されているんです。しかも、「i」のドットの部分はminneのスタッフたちがみんなで打ったもので、こうしたディテールにまでストーリーを持たせたロゴになっています。

小藥:今回のプロジェクトは、新しい要素を外から入れて大きくリニューアルするようなものではなく、すでにテーブルに並べられていたものを固めて柱をつくっていくような作業だった気がします。“minneっぽい”という、それまでフワフワしていたイメージを形にして、minneの性格というものをしっかり伝えるという意味で、非常に重要な取り組みだったと思います。

杉山:実はリニューアル後に最も反響が大きかったのは作家さん側だったんです。ブランドステートメントに共感してくれた作家さんがとても多く、これからもminneで活動を続けていきたいという声をたくさんいただくことができました。それは非常にうれしいことでしたし、その反響を見てチームのみんなも、自分たちが提供しようとしている価値や向かおうとしている方向は間違ってなかったんだと確信できたところがありました。

新しいブランド・アイデンティティが、プロダクトやマーケティングの面に反映されるのはこれからですし、作家さん全員にもまだ届けきれていないところがあるので、これからも根気強く発信を続けていきたいと思っています。

阿部:minneというサービスの根底にあるのは、ものづくりに対する「楽しい」という純粋な気持ちなんですね。楽しさやワクワク感というものをminneを通じて提供していけると、ハンドメイドの世界はもっと広がっていくはずですし、ものづくりの周囲にある配送や問い合わせ対応などの壁をシステム面で解消していくことが、自分たちの大きな役割だと思っています。

小藥:いま阿部さんがおっしゃったような「楽しい」という気持ちの部分は、タグラインと同時に開発した「これね、あのね、いいね。」というコピーにも込めています。つくり手側の「これ、いいでしょ?」という気持ちや、使い手側の「これ、見て見て」という思いなどを押し付けがましく伝えるのではなく、あえて余白を残しながらお互いが共有できるような言葉で表現したいという思いがありました。

「手が生んでいるから、あたたかい。」というタグラインと同時に開発したコピー、「これね、あのね、いいね。」

「手が生んでいるから、あたたかい。」というタグラインと同時に開発したコピー、「これね、あのね、いいね。」

阿部:今回はクリエイターのみなさんに素晴らしいアウトプットをしていただき、本当に感謝しています。このご縁を引き続き大切にしていきたいですね。

小藥:ホントですか? 一回限りのご縁にならないことを期待しています(笑)!

取材・文:原田優輝 撮影:中川良輔

minne
https://minne.com/