「Because it matters(大切なコト、価値あるモノを)」をモットーに、液晶モニターやプロジェクターなどの商品を手がけるメーカー「BenQ(ベンキュー)」。デザイナーモニター「PD2725U」は、BenQ独自の色精度、4K UHDによる超高解像度を実現したデザイナー向けの1台だ。シリーズとしては初となる輝度ムラ補正技術なども搭載し、デザイナーに快適な作業空間と作業効率アップをもたらしてくれる。
今回はテレビドラマのポスターや音楽アーティストのジャケットなどを多く手がけるアートディレクターの永瀬由衣さんに、デザイナーモニター「PD2725U」を一定期間使用してもらった。永瀬さんが最近手がけた仕事のこだわりや、「PD2725U」を使用してみての感想を語ってもらった。
K-POPからテレビドラマまで。色鮮やかに世界観をつくる
――まずは、永瀬さんの経歴を教えてください。
女子美術大学在学時の、大学2年の時から千原徹也さんが代表を務める、デザインオフィス「れもんらいふ」でインターンをはじめて、新卒で入社しました。れもんらいふでは女性アーティストに関するアートディレクションを主に担当することが多かったですね。
2022年の夏に独立し、その冬に株式会社Baby Octopusを設立しました。
――独立されてからはどんなお仕事が多いでしょうか?
テレビドラマのポスターや、韓国のアーティストさんのディレクションなども手がけています。今年6月に発売された、韓国のアイドルグループ・NCT DREAMのジャパンセカンドシングル「Moonlight」のジャケットのデザインを担当させてもらいました。
――「Moonlight」はどういうコンセプトでデザインしたのでしょうか?
クライアントからは、白昼夢のような「夏のお昼に見る夢」というキーワードをいただいていました。そこを出発点にしながら、プールサイドのシチュエーションを思いつき、韓国の老舗のホテルのプールで撮影させてもらいました。
この仕事はメンバーの方、それぞれのヘッドピースをつくったことも特徴です。もともと大学でもファッションを学んでいて仕事で衣装のイメージを描くこともあり、今回はその流れでヘッドピースをデザインしました。製作は日本のヘアメイクの方にお願いし、韓国まで持っていきました。
――デザイン画はパソコンで描いているんですか?
以前は手描きのものをトレースしていましたが、ペンタブで描くほうが楽なことに気付いてからは、ラフも含めてパソコン上で描いていますね。「Moonlight」は形態の数がとにかく多く、全体的にスケジュールがタイトでしたが、れもんらいふ時代の後輩に手伝ってもらいながら完成させました。
――でも完成したものはどれも愛を感じる素敵なものですね。アーティストのジャケットを手がける際に気を付けていることはありますか?
韓国のアーティストのデザインって、どれもクオリティが高くてカッコイイんですよね。NCT DREAMは個人的にもよく見ていたので、これまでのものに負けないように、「NCT DREAMらしさ」をリサーチしながら進めました。
――最近は、ドラマのポスター製作も多く手がけるようになったとお聞きしました。
はい、そうなんです。小さい時からドラマっ子だったので、ドラマのお仕事は大好きです。ドラマのポスターは視聴者がまず見るものですし、世界観をしっかり伝えなきゃいけない。ロゴもつくるので、ドラマの顔でもあるなと思っています。
ドラマのお仕事では最初に数話分台本をいただくこともあります。たまに結末まで知ってしまうこともあり、ドラマ好きとしては辛いのですが……(笑)。こういう風にしたいと要望が決まっている場合もあれば、自由にやってほしいという場合もあって進め方はさまざまですが、企画書やキャラクターの設定をいただき、そこからビジュアルをつくっていくのが一般的な進め方です。
――だいたい何案くらい提案されるんですか?
最低3案くらい提案しますが、作品によって資料がたくさんある場合は多めに提案することもありますね。メインのポスターのほかにも、一報出しと呼ばれる情報解禁の際に出されるビジュアルも一緒に担当することが多いです。
――ドラマのビジュアルのお仕事と、NCT DREAMのようなアーティストのアートディレクションの仕事の違いや面白さはどんなところだと思いますか?
アーティストさんのお仕事では曲やアーティストさんのイメージを大事にしつつ、全体の世界観を一からつくることも多いのですが、ドラマは決まっているお題に対し、どう応えるかというのが大事かなと思います。すでに設定資料があり、その表現をいかに膨らませるか、プロデューサーさんのイメージに合わせていけるのか。ドラマでも衣装のイメージをつくることもありますが、頭の使い方がちょっと違うように思います。
――いろいろお題が与えられると思うんですが、そこに応える際にインスピレーションになっていることはありますか?
ミュージカルや舞台を見に行くのが好きで、そこからヒントをもらうことも多いです。ファンタジーが大好きなので、ディズニーランドにもよく行きます。例えば私がはじめてアートディレクションした、アーティストのMICOさんとの最近のお仕事は、ディズニーの「不思議の国のアリス」がインスピレーションになっています。
彼女のアクセサリーブランドのミュージックビデオを撮影したのですが、彼女から「不思議の国のアリス」をテーマにしたいと言われて、アリスのアニメの中で涙で溺れていくシーンを思い出し、紅茶の涙で溺れるようなイメージをつくりました。
あとは、勉強になるので韓国のアーティストさんのCDはできるだけ買うようにしていたり、人と会って喋ったりすることも大事にしています。自分の軸はあっていいと思いますが、世界観をあまり狭めたくないんです。友だちと話しながら何にハマっているのか聞いたりするとイメージが膨らむこともあり、コミュニケーションは結構積極的に取っていますね。