成田国際空港第3ターミナル(LCC専用ターミナル)、デザインしないデザイン、PARTY伊藤直樹氏インタビュー(2)

成田国際空港第3ターミナル(LCC専用ターミナル)、デザインしないデザイン、PARTY伊藤直樹氏インタビュー(2)

LCC専用ターミナルなので、経済合理性を徹底的に追求したときに何ができるか、デザインしないデザインをコンセプトにしたそうだ。

「意匠を施すことは、華美につながります。アンビバレントな訳です。人を誘うばかりに、いろいろな文字表現が入ってくる。空間にサインをたくさんいれると華美につながり、それは空間というデザインを損なうことにもなる。邪魔にならないサインのあり方はないのだろうかと考えました。また、予算の問題もあり、サインそのものの数を最小限にする必要もありました。そして、動く歩道もエスカレーターも導入できないとはいえ、駅から距離があるので利用者の脚の負担も軽減したい」

三角だけの矢印

三角だけの矢印

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「思案する中『そうだ、トラックが良いのかな』と思いつきました。ナイキの仕事の影響もあるのかもしれません。中学のときは陸上部だったので、そのときの記憶もあるのでしょう。日曜に他の中学と共同で競技場を使って練習することがありました。ウォームアップで走るのですが、トラックのゴムチップの反発があるのでいつもより速く走れるのです。走り幅跳びも5センチ、10センチと遠くへ飛べたりする。こうした身体の拡張性という思い出が、アイデアに結実したのかもしれません」

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「トラックの色は、出発が空の色である青。到着が土の色である茶色です。これらは陸上の公式なトラックの色です。デザインの核をトラックにしたので、ピクトやデザインルールについては、陸上競技のサインや印刷物等を研究しました。たとえば、サインの矢印も本来は棒がつくのですが、陸上のスタイルで三角だけにしています。キャリーや重い荷物を持って歩く人たちに、より前向きな気持ちになって進んでもらいたい。もちろん走ることを推奨している訳ではないですが、気持ちが前を向くと思うのです」

到着は茶色のトラック

到着は茶色のトラック