中沢研は1970年東京都に生まれ、多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了。おもな展覧会に「MOTアニュアル1999 ひそやかなラディカリズム」、「横浜トリエンナーレ2001」などがある。針金やテグスなど視覚的ヴォリュームが希薄な素材を用い、展示空間に呼応したインスタレーションを制作する作家として国内外で高い評価を得ている。

本展では、白くペイントされた直径3mmの鉄材による新作インスタレーションが発表される。「壁」と題された同作は、高さ50cmほどのコの字型のオブジェが106体が、ギャラリーの壁面に平行に沿うようにして配置されている。コの字型の左右の辺から水平方向に伸びる2本の鉄棒の先は、床から約10cmの高さで壁面に固定されており、これがオブジェの基本の形となっている。1つ1つの高さや奥行きが異なる微妙に歪んだ形状の反復は、2008年に中沢が発表した絵画を想起させる。

また、オブジェをあえて人の目線より下に配置し、オブジェそのものの存在感を少なくすることによって、観者の意識が自然に空間へと向かっていく。その何もない空間に、私たちは一体何を見い出すことができるだろうか。そして、その答えは、いつでも私たちの中にあるのだ。