平川祐樹「映画になるまで 君よ高らかに歌へ」

映画になるまで 君よ高らかに歌へ 2018 Video installation, 4K UHDTV, stereo, 9'00 映画になるまで 君よ高らかに歌へ 2018 Video installation, 4K UHDTV, stereo, 9'00"

アーティスト・平川祐樹は、場所や事物に宿る「時間」や「記憶」をテーマに、映像を主軸とした作品を制作している。おもな展覧会に2013年「眠りにつくまで」、「あいちトリエンナーレ2013」、「札幌国際芸術祭2014」などがある。

アンドーギャラリーで初めての個展となる本展では、2017年より制作している「Lost Films」シリーズの第3作目となる映像作品「映画になるまで 君よ高らかに歌へ」を発表する。壁に投影された黒い背景に、古い日本映画のタイトルと製作年が淡々と現れては消え、タイトルを朗読する男性の声が低く会場に響く。一見するとタイトルの羅列のように見えるが、それぞれのタイトルにゆるやかな繋がりがあり、詩的な意味が垣間見える。それらの映画は、かつて一般公開された日本映画で、雑誌やポスターなどに記録はあるものの実際のフィルムが残っていない「失われた日本映画」である。驚くべきことに、1930年代までに上映された日本映画のうち約95%のフィルムが行方不明になっていると言われている。その理由として、1940年代までの多くの映画が発火性のあるニトロセルロースを原料としたセルロイドフィルムを使用していたこと、映画フィルム保存に対する認識の薄さ、関東大震災や世界大戦の空襲による焼失などが挙げられる。

平川は制作の過程で、失われた日本映画のリストを眺めていた際に、いくつかの映画タイトルがリストの中で繋がり、ひとつの言葉の流れを構成していることに気がついたと言う。それらのタイトルを抽出し並べ替えていくと、断片的ではあるものの、詩と呼べるようなものが完成した。それは言わば、輝かしい映画史の背後で失われてきた日本映画の「声」なのである。本展は、張り巡らされた歴史の糸を絡め取り、黒い光としてスクリーンに投影し、失われた何千という膨大な数の映画の魂を呼び起こすだろう。

開催期間 2018/06/12(火)~2018/07/28(土)
※イベント会期は終了しました
時間 11:00~19:00
休館日 日曜日、月曜日、祝日
入場料 無料
参加アーティスト 平川祐樹
会場
  • アンドーギャラリー
  • 東京都江東区平野3-3-6
会場電話番号 03-5620-2165
会場URL http://www.andogallery.co.jp/