交わるいと 「あいだ」をひらく術として

交わるいと 「あいだ」をひらく術として

織物の大半は空気でできている。織物の質量のうち繊維が占める割合は通常20~50%に過ぎず、繊維をひねって糸を紡ぐにも、糸と糸を交わらせて布を織るにも、そこには必ずすき間ができる。そのすき間、空間があるからこそ、布は薄く軽やかで、伸び縮みして丈夫で、あたたかくあることができるのだ。糸と糸がどのように交わって、どのような形のすき間をつくるのかによって、布の布たる所以が生まれ、その性質や表情もでき上がっていく。

本展では、糸や布、繊維を素材に制作を続ける15人と1組のつくり手たちによる営みが紹介される。伝統工芸から現代美術、デザインまでジャンルはさまざま。それらを貫く導きの糸としたいのが、精神病理学の第一人者であり、臨床哲学の先駆者でもある木村敏の次のような言葉だ。「自己とは、自己と他者とのあいだ ─ 現在の事物的世界とのあいだだけでなく、当面の他者とのあいだ、所属集団とのあいだ、過去や未来の世界とのあいだなども含む ─ の、そしてなによりも自己と自己とのあいだの関係そのもののことである」(『関係としての自己』みすず書房、2005年)。つまり、糸や布と向き合うことで、自己そして人の生のあり方を深く見つめてみようというわけだ。

タイトルの「いと」は素材としての「糸」を意味すると同時に、つくり手たちの「意図」でもある。糸が交わって布が生まれるように、作家たちの意図が交わって本展ができていく。さらに来場者が会場を訪れ(あるいは会場を出て、まちを散策し)、思い思いに交わりながら「あいだ」の関係を幾重にも紡いでいく。

開催期間 2017/12/22(金)~2018/03/04(日)
※イベント会期は終了しました
時間 10:00~17:00(入場は閉館30分前まで)
休館日 月曜日(ただし、2018/1/8、2/12は開館)、2018/1/9、2/13、12/27~2018/1/1
入場料 一般1,030円/大学生720円/高校生・65歳以上510円/中学生以下無料
参加アーティスト 上原美智子、上前智祐、北村武資、鈴田滋人、須藤玲子、髙木秋子、ヌイ・プロジェクト、平野薫、福本潮子、堀内紀子 他
会場
  • 広島市現代美術館
  • 広島県広島市南区比治山公園1-1
会場電話番号 082-264-1121
会場URL https://www.hiroshima-moca.jp/
詳細URL https://hiroshima-moca.jp/majiwaruito/