世界の海の暮らしをクラフトを通して紹介していく連続企画、“7つの海と手しごと”。〈第6の海〉として、インド洋に浮かぶスンバ島に伝わるイカット（絣織物）、ヒンギとラウを取り上げる。

17,000あまりの大小の島々からなるインドネシア共和国。その南部に位置するヌサ・トゥンガラ諸島に、日本の四国ほどの大きさのスンバ島はある。この島独特のイカットは、女性たちが昔ながらの腰機（こしばた）で織っている。男性用の衣服「ヒンギ」は腰に巻き、肩に掛ける。女性用「ラウ」は筒状に仕立てて纏うものだ。

描かれるモチーフには祖霊崇拝に基づいた世界観が表されており、さまざまな祈りも託している。島の特産であるスンバ馬は男性の富の象徴、エビは子孫繁栄、カニや魚は村人の一体感、両手を挙げた赤子は強い戦士の誕生など。安住の地を求めて島伝いに海を渡ってきた祖先の伝説を表す船も描かれる。文字のなかった時代に、一族の存続と繁栄を願う心を布に織り込め、後世に伝えてきた。

死者の埋葬の際には来世で着るためにと、男性にはヒンギ、女性にはラウを何枚も遺体にかける。ラジャ（首長）の場合は200枚を超え、弔問を迎え入れる準備が整うまで数年間も埋葬ができないという。スンバ島の人々にとって、ヒンギとラウは実用を超えた、民族の誇りそのものだ。

本展では、40年以上にわたってスンバ島をはじめとしたインドネシアの染織研究を続けてこられた渡辺万知子氏の貴重なコレクションから、ヒンギとラウほか民芸品・映像など約30点を展示。関連の講演やワークショップもあわせ、スンバ島の手しごとと生活文化を紹介する。

【関連イベント】
●講演会「スンバ島のイカットと人々のくらし」
日時：8月29日（土）14:00〜16:00
会場：生活工房4FワークショップルームB
講師：渡辺万知子（染織作家）
定員：申込先着50名
参加費：500円

●記録映像上映「スンバ島の家を建てる」
日時：9月6日（日）1日2回上映（13:00〜14:15／15:00〜16:15）
会場：生活工房5FセミナールームAB
定員：各回先着50名
参加費：無料（申込不要・当日直接会場へ）

●体験教室「腰機でベルトを織る」
日時：9月12日（土）13:30〜16:30
会場：生活工房4FワークショップルームA
講師：渡辺万知子（染織作家）
定員：抽選15名
参加費：1,000円（材料費込み）

※各詳細は公式ホームページを参照