デザインのチカラ

IMAGICA DIGITALSCAPE

INTERVIEW 14 KEN OKUYAMA DESIGN いま、デザイナーに求められていること

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INTERVIEW 14

KEN OKUYAMA DESIGN いま、デザイナーに求められていること

KEN OKUYAMA DESIGN KEN OKUYAMA DESIGN 代表 奥山清行氏

2013.07.17

アウトプットがインプット

移動中に描いたスケッチの写真を撮ってスタッフに送り、指示することも
移動中に描いたスケッチの写真を撮ってスタッフに送り、指示することも

奥山氏のデザイン手法はまず、手描きのスケッチから始まる。プロセスの基本はどんなプロジェクトでも変わらないと話す。

奥山:絵を描いて、プロトモデルを作って、スタッフやクライアントと意見を交わしながら物を作っていくスタンスは同じです。今は各地での仕事が増えたので移動も多くなりました。山形、東京、ロサンゼルスはスタジオがあるので当然ですが、国内では大阪、福岡、神戸、名古屋、にはほぼ毎週のように、それから海外へも実際に行きます。移動中、例えば新幹線の中で描いたスケッチの写真を撮ってスタッフに送り、指示することもあります。

常に多数のプロジェクトを抱えながら、新しいアイデアを生み出し、スケッチでアウトプットする。そうやってアウトプットしながら繰り返しアイデアを練り、また新たな着眼点に気づく。だから「アウトプットがインプットにもなる」のだ。

奥山:絵を描いている時は頭の中に完成形があるのではなくて、試行錯誤している状態なんです。手は道具、話すことや文字も道具であり手段。だから描いたりディスカッションしたりという行為は、アウトプットなんだけど、逆にアイデアが整理されてインプットにもなる。そしてまた新しいものが生まれます。アイデアを考え、手を動かして描いている時間そのものが、自分にとっての財産になるんです。
人の頭の中に入り込んで、そこにあるアイデアをビジュアル化する。それが車でも、建物であっても、目の前にないことを形にできるデザイナーがいま、必要とされていると思っています。

大学卒業後、3年は海外へ

「大学で基礎を身につけたら、すぐに就職せず、自分の貯金で海外に行って専門性を高めてほしい」
「大学で基礎を身につけたら、すぐに就職せず、自分の貯金で海外に行って専門性を高めてほしい」

国内外の美術系大学で教鞭もとる奥山氏だが、デザイナーになるには「大学を出て就職するパターンを崩すべきだ」と考えている。

奥山:できれば大学を卒業してから3年ぐらいは海外へ行ってほしい、自分の貯金だけでね。あるいはもう一度専門学校に入ってもいい。

これは、とりわけ日本の大学で現在、実践的な教育ができなくなっている状況に理由があると言う。大学での勉強を基礎に、さらに専門性を高め、実社会の仕組みで動くことを身につける時間として、社会に出てからの3年間くらいが必要になる。

奥山:今は雇用する側の年齢制限も徐々に緩くなっているので、人生経験がある人材のほうが有利に就職できる時代になってきています。デザインも同様です。美術学校を卒業してそのままいきなり企業に入ってそのまま勤めていこうと考えているならば、良いデザイナーには絶対になれません。
僕自身、卒業後、嫌っていた広告デザイン業界に入ってしまったために、案の定、嫌気がさして辞めてしまった経験があります。それで海外に行って、たまたまデザイン学校で車のデザインができたのですが、いきなり入ったから軍隊みたいな訓練を受けました。そのあとは恵まれてゼネラルモーターズに入社し、ヨーロッパで仕事をするようにもなりました。でも、今の時代でかつての自分のようなことをしていたら、僕は今ここにいられないでしょう。

誰にも負けない何かを深堀りする

美術系大学で教鞭をとり、KEN OKUYAMA DESIGN でも若手デザイナーを率いる奥山氏
美術系大学で教鞭をとり、KEN OKUYAMA DESIGN でも若手デザイナーを率いる奥山氏

そしてもうひとつ、自分が興味をもったことの中から1点だけ掘り下げることが大切だと奥山氏は強調する。これだけは誰にも負けない、と胸を張れる何かをひとつ、確立することが重要だ。

奥山:例えば、工作機械の扱いについては誰よりも得意、でもいい。誰にも負けない、というものを持っている人はいいデザイナーになります。間違いありません。逆に、それがないとキツいです。
僕は車のデザインなら誰にも負けません。特にスポーツカーのデザインで僕が負ける訳ないですから。今まで、コルベットとポルシェとフェラーリをデザインした人間は僕だけで、関わったプロジェクトの数も誰よりも多い。そのくらいひとつのことを深堀りできれば、そこから広がっていきます。

デザイナーになってからも、仕事をしながら専門性を高め、得意分野を見つけてそれを究めたとき、一流のデザイナーとして認められるに違いない。

インタビュー:高橋美礼 撮影:永友啓美

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