デザインのチカラ

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INTERVIEW 13 lenovo 未来を拓く究極のビジネスPCを目指すThinkPad

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INTERVIEW 13

lenovo 未来を拓く究極のビジネスPCを目指すThinkPad

レノボ・ジャパン株式会社 デザイン/ユーザーエクスペリエンス 高橋知之氏(ディレクター) 平野浩樹氏(アドバイザリー・インダストリアル・デザイナー)

2013.02.27

進化を続けるウルトラブック

ThinkPad X1 Carbonは、モバイル性能とビジネスシーンでのパフォーマンスを徹底的に追求した、世界一軽い14型ウルトラブックとして2012年に誕生した。カーボン素材を天板に採用した頑丈な設計、独自の開発から生まれた妥協のないキーボードなど、レノボだからこそ実現できた高性能なノートパソコンだ。実際にデザインを担当した平野浩樹氏は、企画段階から関わってきた。

平野:X1 CarbonはThinkPad の中でも特に薄さを意識した機種です。実はコンシューマー寄りの製品で薄型モデルを作る開発プロジェクトからスタートしました。これまで目指してきた、ビジネスに特化するモデルとしてだけでなく、もう少し幅広く捉えたものだと言えます。

企画当初から主張していたのが、スーパースリムマシンであることの意義だった。

平野:デザインだけでなく、開発のチームも集まってコンセプトを固める話し合いを重ねました。当時、インテルのウルトラブックは正式に発表にはなっていなくて、CEOから告げられたのは「Beat MacBook Air」という一言。その背景には、ビジネスユーザーにも2010年くらいからこうしたスリムなノートPCへの需要が高まっていた現実もあったと思っています。

世界初のクオーツウオッチ クオーツアストロン(1969年)
最薄部約8.0mm、重さ約1.36kgの世界一軽い14型ウルトラブック「ThinkPad X1 Carbon」※2012年8月29日現在 lenovo調べ
フラットになるまで開くことができるのは、ThinkPadらしいこだわりのひとつ
フラットになるまで開くことができるのは、ThinkPadらしいこだわりのひとつ
開発の方向性が明確になると同時に、いくつもモックアップを制作しながら技術とデザインの検討が始まる。最新製品を手がけるデザイナーには、技術者とのコミュニケーションも求められる能力のひとつだ。

エンジニアとデザイナーの協同

時代の進歩に合わせ、エンジニアとともに試行錯誤して生み出すキーの形状は世代ごとに異なる
時代の進歩に合わせ、エンジニアとともに試行錯誤して生み出すキーの形状は世代ごとに異なる

ThinkPad X1 Carbonに限らず、すべてのThinPadでデザイナーは技術者との協同が欠かせない。ほんの小さなキーボードの隅にまで気を配ることが、見た目の形状だけでなく、使用感の向上にも結びつく。

平野:社員の間で「キーボードの神様」と呼ばれるベテランエンジニアがいるんです。ちょっとでも彼の哲学から離れるところがあると、その理由を追及されます。デザイナーの提案でキーの形状を変えることもありますが、使い勝手に直結する部分なので、打ち心地やキーの形状には毎回、細かく気を配り、コンマ数ミリの配置をめぐって、可能なピッチでいくつも試作する場合もあります。
「キーボードの神様」と一緒に、TrackPointボタン(キーボード手前の3つのボタン)の形状を数日間かけて決めたこともありました。ボタンを押下した時にキーボード全体を囲む縁に指先が当たらないようにするには、どの程度の傾斜をつけるのが適切なのか。あるいはスペースキーを押下する時にボタンに指が当たるのを避けるには、どのような形状が適切なのか。また、左・真ん中・右のボタンを押し間違いが少ない快適な操作ができるようにするには、どのような形状が適切なのか工夫していくんです。

ThinkPad X1 Carbonでは、キートップの表面領域を30%拡大し、快適なキータッチを実現した6列キーボードを採用
ThinkPad X1 Carbonでは、キートップの表面領域を30%拡大し、快適なキータッチを実現した6列キーボードを採用

ThinkPadはすべて特別なチューニングが施されたキーボードで、他社のように業者のリファレンスキーボードを元にしたものではない。また、一般的なアイランド型キーボードはたいてい1つのキーが四角い形状をしているが、ThinkPadでは下側が少し張り出すような丸みを帯びている。これも使い勝手とデザインが融合した部分だ。

高橋:ThinkPad X1 Carbonキーボードのキートップ形状は、非常に完成度の高いかたちだと考えています。これまでのThinkPadらしいデザインを継承しつつも、時代に合わせたモダンさを兼ね備えています。
また、以前のモデルではTrackPointボタンが手前の方に配置されていましたが、本体が小さくなり、ハードディスクを入れる場所などを優先していくと、上の方に配置するほうがバランス良くなってくるんですね。しかし他の部分を変更しない配置のままにだと、キーボードのタッチが不自然で、指がぶつかってしまうこともあります。デザイナーとエンジニアが密接な共同作業を重ねることにより、使いにくさを解消し、最適な形状を導きだすことができるわけです。

具現化できるのはデザイナーだけ

美しさや機能性はもちろん、ThinkPadらしいアイデンティティーをいかにキープしていくかという意識も大切にしている
美しさや機能性はもちろん、ThinkPadらしいアイデンティティーをいかにキープしていくかという意識も大切にしている

新しい製品の実現には、デザイナーにとっても技術者の力と理解が不可欠。そして最終的な形へと落とし込むのがデザイナーの役割だ。

平野:いつもすごくニュートラルな視野からデザインを始めます。旅に例えるなら、母港があるのでどれだけ遠くへ行ってしまっても必ず戻るべき場所が待っていて、安心して旅立ちができる、そんな感覚に近いかもしれません。だから何を提案してもいいんです。しかし、単にデザインが良いから、では決して社内で受け入れられません。お客様にとっての価値はどこにあるのか?技術やデザインをお客様にわかる言葉で説明できるのか?それを常に考えながら仕事しています。その姿勢は大和研究所全体に浸透しています。そして結果的には、すべてのデザインに価値が生まれ、意味のないデザインはThinkPadには存在しないと言えると思います。

高橋:いくら、素晴らしいアイデアが、開発段階でたくさんあったとしても、最終的に世に出るのは『ひとつの製品』としてです。そして、その開発段階での、問題を解決するアイデアを『カタチ』にするのがデザイナーの重要な仕事です。また、シンプルで、美しくて、使いやすい製品をデザインすることは当然の目標ですが、それに加えて、レノボとしてのアイデンティティーをいかに表現するかを、常に意識して仕事をすることもとても大切だと考えています。

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株式会社イマジカデジタルスケープ

1995年の創業以来、デジタルコンテンツのクリエイターの育成・供給、及びコンテンツ制作サービスをコアビジネスとして展開。現在では国内最大規模のクリエイター人材のコンサルティング企業として、企業とクリエイター、双方への支援を行っています。http://www.dsp.co.jp/