編集部の「そういえば、」2022年4月

編集部の「そういえば、」2022年4月

ニュースのネタを探したり、取材に向けた打ち合わせ、企画会議など、編集部では日々いろいろな話をしていますが、なんてことない雑談やこれといって落としどころのない話というのが案外盛り上がるし、あとあとなにかの役に立ったりするんじゃないかなあと思うんです。

どうしても言いたいわけではなく、特別伝えたいわけでもない。そんな、余談以上コンテンツ未満な読み物としてお届けする、JDN編集部の「そういえば、」。デザインに関係ある話、あんまりない話、ひっくるめてどうぞ。

ゴールデンウィークにおすすめしたい、マンガ3選

そういえば、先月「漫画とデザイン展」に行った話が出ましたが、わたしも最近マンガ熱が再燃してきました。特に気になったマンガを3作品紹介させてください。

(写真左から)『違国日記/ヤマシタトモコ』、『九龍ジェネリックロマンス/眉月じゅん』、『分光器/伊図透』

1作目に紹介したいのは、ヤマシタトモコ作『違国日記』です。今月25日に最新刊9巻が発売されました。2017年から『FEEL YOUNG』で連載されている本作は、「マンガ大賞2019」第4位、宝島社「このマンガがすごい!2019」オンナ編第4位に選ばれるなどすでに注目を集めており、ご存知の方も多いと思います。

あらすじ:女性小説家の高代槙生は、両親を交通事故で亡くした姉の一人娘・田汲朝を引き取ることに。槇生は姉とは疎遠で、ほとんど顔を合わせたことがなかった二人。35歳と15歳、20歳の差がある二人が、戸惑いながらも二人暮らしをはじめる。

突然一緒に住むことになった、他人同然の二人。分かり合えないながらも、手探りに生活をともにしながら、対話を重ねていく。分かり合おうとする二人の姿に何度も勇気づけられ、心打たれました。人が人と向き合う姿はこんなにも美しいのかと気付かされるような作品です。

2作目は『週刊ヤングジャンプ』で2019年より連載中の『九龍ジェネリックロマンス』。現在6巻まで発売されています(最新刊の7巻は来月5月18日発売予定)。作者はアニメ化や映画化もされた『恋は雨上がりのように』の、眉月じゅんさんです。

あらすじ:東洋の魔窟、九龍城砦。上空では人類の新天地となるジェネリック地球(テラ)の建設が進む。そんな九龍城砦で不動産会社に勤める鯨井令子と工藤発。鯨井令子は、ともに働くなかで同僚である工藤発への恋心を自覚する。

不動産屋で繰り広げられる、大人のロマンチックラブコメディかと思いきや…、九龍城砦という舞台設定がそうはさせず、巻が進むごとに明かされる主人公と九龍という街の謎、SF的な展開に引き込まれます。また眉月じゅんさんが描く登場人物たちの表情が、なんともフェティッシュで、その凄まじい描写も本作の魅力です。人が恋に落ちたときの美しさに、思わずドキッとしてしまいます。

3作目は伊図透作の短編集『分光器』です。『月刊コミックビーム』にて、2021年4月号から2022年2月号の間に掲載された5話の短編が収録されています。伊図透さんは『銃座のウルナ』で第21回文化庁メディア芸術祭優秀賞も受賞しています。

ハートウォーミングな日常から、復讐劇にSFまで、描かれる世界の多様さに驚きました。数十ページの中で展開される世界の奥深さに、改めてマンガの醍醐味を感じる作品群でした。短編の一作目「箱型丸目」は、工業デザインを学ぶ美大生たちが主人公ということもあって、JDN読者のなかには共感してしまう方もいらっしゃるのかなと思います!

残念ながらお天気が安定しない日々が続くとの予報が出ているゴールデンウィーク、おうちでまったり過ごす方も多いかもしれません。そんなおうち時間のおともに、ぜひ今回紹介した3作品はいかがでしょうか?

(荒木 瑠里香)

揺らぎのある線と色のグラデーションが美しい作品群

そういえば、以前「見たい、知りたい!今月のイベント」のタイトルイラストを描いてくださった、イラストレーターの宮岡瑞樹さんの個展「Tonic water」に伺ってきました。

会場は、東京・神宮前にある「ニュースペース パ」、4月22日から5月1日まで開催されています。

グラフィックデザイナー兼イラストレーターとして活動する宮岡さん。「SEKAI NO OWARIファンブック R.A.I.N.S」や『POPEYE』の挿画、「ZOZOTOWN」のバナーなど多方面で活躍されています。

宮岡さんは普段はデジタル中心で絵を描くことが多いそうですが、今回は久しぶりにアクリルガッシュを使って描かれた作品もいくつか展示されています。

(写真左2枚)とても丁寧に均一に色が塗られているため一見するとわかりませんが、近付いてみると絵の具の盛り上がりや質感がわかります。

近年太めの線で描かれたイラストで人気なものが多いように感じますが、宮岡さんが描く線は葉がさやさやと揺れるような、独特の揺らぎを持つ細いところが特徴。グラデーションを使った色味と相まって、爽やかだけど不思議なシュールさや間合いを感じるような世界観があらわれています。

都市に暮らす人物や生活の一部を切り抜いたような風景が軽やかに描かれている作品たち。ビルや団地など建物に落ちる影が好きなのだと話してくださった宮岡さん。そのあたりにもぜひ注目してみてください。

(石田 織座)