学芸出版社
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CREATIVE LOCAL

エリアリノベーション海外編

CREATIVE LOCAL

日本より先に人口減少・縮退したイタリア、ドイツ、イギリス、アメリカ、チリの地方都市を劇的に変えた、エリアリノベーション最前線。空き家・空き地のシェア、廃村の危機を救う観光、社会課題に挑む建築家、個人事業から始まる社会システムの変革など、衰退をポジティブに逆転するプレイヤーたちのクリエイティブな実践。

ナカムラケンタ(日本仕事百貨代表、popcorn共同代表)おすすめコメント

「リノベーションの次に起きたのは、建築の◯◯化だった」


もはや建築家は必要ないんじゃないか。世の中には建築が溢れているし、人口も減っていく。そんな予感がした建築学生時代に1つの答えを提示したのが、この本の著者の1人である馬場さんだった。それが「リノベーション」という手法。新築せずに既存の建築を活かすという意味で画期的。まさに薄暗い建築の世界に射す、一筋の光だった。ただ、そのリノベーションによって、建築家の役割が変わるきっかけにもなったように思う。それは新築に比べて予算などの規模感が小さいことなどもあり、建築家に設計以外のことも兼任する状況が生まれた。たとえば、資金調達なども考えるし、不動産的な知識も必要になる。さらにプロジェクトのブランディングや広報まで担当することも増えたし、自ら大家になるということも起きた。枠にはめられていた建築家という役割は、氷が溶けていくように境界を越境していくことになる。


この本はその次に何が起きるのか、という問いに見事に答えたものになっている。それは建築というものが、建築家だけでなく、みんなでつくるものになっていくということ。建築家の役割が広がった先にあったのは、建築に関わる人の多様化だった。建築のプロじゃない人が場所をつくったり、住民主体で考えたり、余白が住まい手に用意されていたり、この本にはさまざまな多様化の形態が描かれている。まさに建築の民主化というものが世界中で起きているのだ。その手法がどれもおもしろい。


それじゃ、やっぱり建築家は必要なくなってしまうのだろうか?この本を読むと、実は新しい建築家の役割が見えてくる。それはプロジェクトのファーストペンギンを担うということであったり、関係者をファシリテートしていくことだったり、参加できる余白をデザインしていくことも。そういう意味では、今の建築家のほうがワクワクする。


発行 学芸出版社
編著 馬場正尊、中江研、加藤優一
著者 中橋恵、菊地マリエ、大谷悠、ミンクス典子、阿部大輔、漆原弘、山道拓人
装丁 アカオニ
仕様 四六判、256ページ
価格 2,200円(税抜)
ISBN 978-4-7615-2666-5