
“ここに収められている写真やスケッチは、三分一自らが行った、それぞれの地域や集落の風や水、太陽などの「動く素材」についての発見・調査・研究の記録です”という書き出しで始まる本書は、建築家・三分一博志の過去の実績をまとめた作品集という概念を超え、それぞれのプロジェクトとどのように対峙し、そこに何を見、何を創ろうとしてきたのかを、自ら撮り溜めたリサーチ写真と共に記録したアーカイブでもある。
少なくとも1年以上かけるというリサーチは、自ら敷地に足を運び、その土地に根付いた文化や人びとの営み、四季折々に変化する自然環境を観察することにはじまり、その町並みの形成にも大きな影響を与える風や水の流れ、太陽の動きを丹念に読み解き可視化していく。そうして創り出された建築は、その土地が本来もっている潜在力を最大限に引き出し、環境への負荷が抑えられるばかりか、その土地の文化や自然を後世に引き継いでいく役割りをも担っている。
本書では、三分一博志の代表作で日本建築学会賞(2011年)を受賞した「犬島精錬所美術館」(2008年、岡山県)から現在進行中の「おりづるタワー」(2016年、広島県)まで、瀬戸内の5つのプロジェクトのプロセスを、写真やスケッチ、図面などを交えて紹介するほか、三分一博志を深く知る建築家、研究者による寄稿文も収録、多角的に活動を俯瞰した一冊。
発行 | TOTO出版 |
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著者 | 三分一博志 |
ストーリ・レイアウト | アレックス・ホメル・リー |
仕様 | 200x200mm、並製、304ページ、和英併記 |
価格 | 2,600円(税抜) |
ISBN | 978-4-88706-357-0 |