クリエイションの発火点

千原徹也 / れもんらいふ

「れもんらいふ」は千原徹也の肩書きであり形容詞-千原徹也インタビュー(3)

みんなが思う「れもんらいふ」に向かって行きたい

取材・文:瀬尾陽(JDN編集部) 撮影:寺島由里佳

クリエイターの交流を生む「れもんらいふデザイン塾」

元々はロフトワークが京都支店を建てた時に、代表の林(千晶)さんから「れもんらいふ」も京都支社をつくらないかとお声がけしてもらって。でも、僕の身体もひとつなので、東京と京都の半々でどう進めていくのかが見えなくて、週1くらいでならやれたら良いなあ……と思っていてました。そこから、週1でゲスト呼んでトークショーとかやるなら現実的だし、仮に僕が行くことができなかったとしても、ゲストだけでトークとかワークショップならできるかも、それなら面白いかもと思い、「れもんらいふデザイン塾」をスタートさせるにいたりました。

僕は京都で育ったので、東京に住んでみて改めて思うのが、クリエイターとの距離感がすごく近いんですよね。東京にいると間接的にでも知りあうきっかけはあるんですが、それが京都にいるとまったくない。もちろん、京都を拠点に活動されている人もいるんですけど、東京のほうが人との関わりあう可能性でいうと大きいですね。

2016年の4月から開講した「れもんらいふデザイン塾」

2016年の4月から開講した「れもんらいふデザイン塾」

「れもんらいふデザイン塾」は「塾」と銘打ってはいるんですけど、京都でクリエイター同士の飲み会をしたかったんですよ。トークイベントで「質問ターイム!」って言っても、たいてい誰も手を上げないじゃないんですよね(笑)。もし、そこで面白い質問ができたら人生が変わるかもしれないじゃないですか?だから「れもんらいふデザイン塾」では、授業が終わった後に1時間半の交流会があるんですよ。京都のカフェとかにケータリングとお酒を出してもらって、自由に話ができる時間なんですね。

ある意味ではそこがメインですよ。お酒の力を借りつつ、憧れているクリエイターとかに話しかけてみることで、自分の人生が変わるきっかけになるかもしれないでしょ?第1期生は50人ぐらいいるんですけど、みんな目がキラキラしているんですよね。ここで自分の人生を変えようっていう意識があるので。一方通行で話を聞くだけじゃなくて、自分から話しかけたりできる空間が欲しいなという思いがあったので、「れもんらいふデザイン塾」をはじめて良かったなと思っています。

photo_06

京都からの帰りにゲストの先生と「あの子は良かったね」っていう話もするんですよ。「あの子はすごいパワーあったから東京に仕事で呼んでみようか?」とか。僕らからしても面白い人と出会える機会になっています。お酒の力を借りるという言い方すると軽い感じするけど、でもなんていうんですかね……「いい夜」とか「あの夜」とか、記憶に残るような時間っていうのは、飲んでる時なんですよね(笑)。

人から与えてもらった「れもんらいふ」らしさ

コピーライターの小藥さんが「千原くんは”れもんらいふ”っていう肩書きで、それが形容詞としても成り立っているよね」と言ってくれたのがすごいうれしくて。だから、”れもんらいふ”であることが自分のいちばん目指すところなのかなと思っていて。「れもんらいふだったらこうかな?」とか、そういう感覚はあるかも知れないですね。

「れもんらいふ」という屋号自体は僕がつけたわけじゃないので、そんなに深い意味はないんですけど、”僕がつけたわけじゃない”ってところがけっこうミソかなと思っていて、なんというか自分のデザインの個性って、自分ではあまりはっきり言えないんですよ。そういうのは人から与えられるものなんじゃないかと思っています。

photo_61

スマイルズの遠山(正道)さんが、「千原くんのデザインの雰囲気って平仮名だよね」といって「れもんらいふ」と名づけてくれました。「はっぴいえんど」とか「はちみつぱい」とか昔のめちゃくちゃかっこいいバンドは意外と平仮名だったりするし、平仮名で意味がよくわからないけどめちゃくちゃかっこいい、そういうところを目指してほしいという想いが入っているらしいです(笑)。

だから、僕の”れもんらいふらしさ”は人から与えてもらっているものだから、人が解釈してくれたものに対して、そこに向かって行きたいというか、あんまり自分の野望みたいなものはないんですよね。みんながいう「れもんらいふ」がそうだったらそっちに行くわ(笑)っていう感じくらいが良いんじゃないかな。僕はものごとに対してあまりこだわりはないんですけど、でも与えてもらったものに対しては120%で取り組む、そういうこだわりは持っていたいなと思っています。

千原徹也のしごとば

渋谷は憧れの場所という感じですね。僕が10代後半の時に小沢健二とかピチカートファイブとか、田島貴男とかの人気が出てきて、「渋谷系」という言葉があったと思うんですけど、渋谷という場所は地方にいた人間からすると、憧れみたいなものはすごくあったし、そこに事務所を構えるというのはなんというか、自分にとってはひとつの大きなルーツの輪の中にいる感じはありますね。

photo_20

photo_47

この場所はデザイン会社なのに「家」がテーマです(笑)。デザイン会社って、わりとどこも真っ白な空間でぴりっとしているんですよね。なんとなく訪問しづらいというか、入っちゃいけない感じがあるじゃないですか?僕は訪問しやすい空気をつくりたいので、入ってすぐにリビングが合って、ソファがあって、テレビがあって、ちゃぶ台があるみたいなつくりなので、そういう感覚でみんなが入りやすい場所にしています。

photo_58

並木橋の交差点というのも、渋谷と恵比寿と代官山と青山のちょうど真ん中ぐらいで、ここが人間交差点みたいになると良いなと思っていて。待ち合わせに使ってくれても良いし、ちょっと時間つぶすために来たでも良いし。それをみんなが気にせずに出入りできる空間になれば、デザインにとっても刺激になるんじゃないかな。

photo_49

今度、ウチの事務所の2階部分をノマド的に開放するんですよ、フリーのデザイナーとかイラストレーターとかカメラマンとかが使えるようにしたんですね。事務所には、モデルや女優が来たり、クライアントが来たりするので、その時にクリエイターに紹介できるので、そこからつながって、何か新しいことが起きるとすごく良いなと思って。上手く「れもんらいふ」を利用してもらいたいですね!

れもんらいふ
www.lemonlife.jp/