- デザインコンセプト
- 担当:Eureka + G architects studio
筑波の新興住宅地と商業地の境目のロードサイドに建つ、酒屋倉庫の計画。脈絡なしに接する風景を混乱や退屈として目を背けるのではなく、わずかに離れ広がる古い村落とともに、地域の二重性へ着目した。また、この酒屋倉庫には実店舗としてのローカルな商いと、遠隔地の酒蔵、顧客とを結ぶ物流中継の場が並存する。特にネット販売事業拡大にともなう無数の実体なき店舗群の1つである姿にも注目。重ね合わさる地域や営みの在処として、風景をつむぎなおす建築を試みた。
ロードサイドの閉鎖的な箱型店舗や、均質なハウスメーカーの住宅が並ぶ敷地において、ワンボリュームの倉庫を分解し、地域環境や商いの活動へとアジャストさせることで、複雑な全体を構成している。構造形式は在来木造であり、適所で製材や集成材、鉄骨を使い分け、多様な営みに供する外部空間が四周を取り巻く。とりわけ、裏方として取り扱われがちな荷下ろし場や瓶置場などを積極的に計画することで、裏のない建築とした。地域に開かれた筑波山への眺望テラスは、交通量の多い歩道から浮かぶパブリックスペースであり、第2のエントランスともなっている。置き屋根や頂部の排気窓、テラスや軒下の天幕・簾を設置し、環境性能を向上させるとともに、外部に現れる人の営みの風景になるよう努めた。
倉庫を覆う素材は、おもにロードサイドに立ち並ぶ建築群にならいながらも、よりきめを細かく強調するようにして、板金やセメント板をコラージュした。一方、道路を走行する速い視線に対しては、大きな倉庫の外観を左官仕上げで素材自体の起伏による大きな模様を施した。さまざまな土地由来の自然素材で構成される土壁は、付近の土着性にはない「倉」の象徴でもある。店内では、倉庫の中身や酒瓶の物量が醸す貯蔵風景も手触りある営みとした。回遊するシークエンスと什器の鏡面への映り込みが、店内の営みと街並み、両者共存の風景を表現している。
所在地 | 茨城県つくば市研究学園3-19-1 |
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建築・監理 | 稲垣淳哉、佐野哲史、猪又直己、梶田知典※(※元所員)/Eureka 田中亮平、許光範/G architects studio |
構造 | 永井拓生、大場康史/Eureka |
環境 | 堀英祐/Eureka |
店舗グラフィック | 杉本和歳/タイラーデザイン |
敷地面積 | 677.37m2 |
階数 | 地上2階 |
構造 | 木造(一部鉄骨造) |
工期 | 2015年6月〜2016年11月 |
撮影 | 大倉英揮/黒目写真館 |