「これがオフィス…?」と思ってしまうような、リラックスした雰囲気を感じさせる「山王のオフィス」。ふわっと広がるトランポリンのような屋上空間が印象に残ります。
設計を手がけたのは、愛知県岡崎市を拠点に活動する「studiovelocity 一級建築士事務所」の栗原健太郎さんと岩月美穂さん。この特徴的なオフィスのコンセプトや曲面のつくり方などについてお話を聞きました。
■コンセプト
愛知県岡崎市に建つ、木造2階建てのオフィスの計画です。「一つの曲面がつくる多様な屋根下空間と包まれたような屋上空間」をコンセプトとしました。
大きな1つの曲面の下には、場所によって天井高の異なる多様性のあるワンルームをつくり出し、その上にはお皿の中のような柔らかく包み込む空間をつくり出しました。密集住宅地にありながら開放的な内部空間と、適度にプライバシーが確保された屋上空間とを同時に確保できています。
■手法、特徴
曲面のつくり方は一般に、
(1)RC(=鉄筋コンクリート造)で曲面をつくる方法
(2)多角形構造とし、仕上げ材で曲面をつくる方法
(3)曲げ集成材・ビルドH曲げ鉄骨材で曲面をつくる方法
などがあるのですが、(1)や(3)はコストが高くなってしまう側面があり、(2)は造作手間がかかる上に不要にスラブ厚(コンクリート厚)が大きくなってしまいます。そこで、とても薄く偏平した断面のフラット材を使用し、重力とテンションによって曲面を生成する、新たな曲面のつくり方を考えました。
ランダムに配された極小径の木テンション材は、やわらかく空間を規定し、家具の配置やスペースのまとまりと同時並行で設計しました。多角形構造とし、仕上げ材で曲面をつくるでもなく、曲げ集成材や曲げ鉄骨材で曲面をつくるでもない、とても薄く偏平した断面のフラット材を使用した、重力とテンションによって曲面を生成する新たな曲面のつくり方となりました。
屋上に人が乗っていくと下部の垂直柱にかかるテンションは徐々に減っていき、最大150人に達するまで圧縮がかからないように設計されています。屋上の積載荷重と引張テンションが、時によって差し引きしながら、建築の形状を一定に保っています。
使用される約1,000本の木材に積載荷重試験を行って得られた個々のデータを基に、ラミナ材の配列を設計することで、12本の精密な木材の梁を製作し、構造計算に合致した木構造を実現しました。
所在地 | 愛知県岡崎市井田町山王22-1 |
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設計 | studiovelocity 一級建築士事務所 |
構造 | 藤尾建築構造設計事務所 |
敷地面積 | 331.25m2 |
延床面積 | 209.5m2 |
竣工日(開業日) | 2018年9月1日 |
撮影 | studiovelocity 一級建築士事務所 |