港町のトタン造りの建物群になじむ同施設の背景やコンセプトなどについてうかがいしました。
■背景
茨城県大洗町に建つ、木造2階建ての元酒屋をリノベーション。施設は、岡山県倉敷を本拠地とするディベロッパーの茨城県における事業展開の拠点として、ワーケーションでの利用など社員の福利厚生の側面と、会社が重点エリアとしているこのエリアに根ざすために飲食店も運営することとなった。
今回の事業は施主にとっても初めての試みであったため、テストケースとして中古物件をリノベーションして、極力イニシャルを抑えつつ大洗の街に馴染み、住人や街を訪れる人に受け入れられることが求められた。

茨城県大洗町
■コンセプト
我々は安価でどこにでもある素材を使い小さな手数を積み重ね、この海街に自然に佇み、人が集まる建物を考えた。
具体的には、敷地周辺のサーベイで目についた、港町のトタン造りの周辺建物に習い、既存建物の傷みの酷いサイディング(建物の外壁に張られる板状の建材)の上にトタン板を貼り、二次止水面を形成。鉄粉を塗り付けて外壁表面に「もらい錆(別の鉄分などから発生した錆が移り付着する現象)」の状態をつくり、経年変化をまとった外観とした。

トタン板を貼った外壁
コストを抑えるために選択した既存建物の再利用は、ライフサイクルCO2の削減効果が47%と大いに効果的である。また、敷地付近のアンティークショップなどから店舗に利用する骨董家具を調達するなど、SDGsに配慮しつつ、どこか懐かしい店舗デザインになるように務めた。

アンティークショップから調達した家具が並ぶ内観
■課題となった点、手法、特徴
敷地向いの商店街は、神社の門前街としてかつてはにぎわっていたが、現在はイオンなどのショッピングセンターに駆逐され、活気を失っていた。そして現在は、店舗が少しずつ取り壊されて駐車場などに置き換わっている。多くの地方都市のいわゆるスプロール現象と同じである。
計画地は広大な奥庭がある敷地だった。我々は奥に広い庭があることを利用して、さまざまなイベントができる多目的スペースとして整備し、来訪者を奥に引き込むようなプログラムを展開できるようにゾーニングした。

敷地内にある広い庭
既存建物が建てられた80年代は、ポストモダン建築が官民に関わらず極東の国の地方でも隆盛を極め、世界的なムーブメントであった。既存建物もその名残が残る建物だった。同じ茨城のつくば市に建つ、磯崎新設計のつくばセンタービルの完成年とほぼ同じ時期の建物であることは偶然ではない。
経済的な勢いが鈍化しつつもSNS全盛のグローバリズムの時代に飲み込まれた現代の日本において、それらをどう繫いでいくかを思案した。
| 所在地 | 茨城県東茨城郡大洗町磯浜町938−2 |
|---|---|
| 設計 | 田中亮平/G ARCHITECTS STUDIO+Japan. asset management |
| 施工 | ZOSUN |
| 構造 | 木造 |
| 敷地面積 | 498.65m2 |
| 延床面積 | 212.18m2 |
| 竣工日(開業日) | 2023年11月5日 |
| 撮影 | 志摩大輔 |




