J-POWER 電源開発株式会社 本店ロビーリニューアル

目に見えない「電気」の存在を感じるエントランス

巨大なデジタルアート作品が目を引くこちらの空間は、電力会社であるJ-POWER 電源開発株式会社の本店のエントランスロビーです。2025年4月1日にロビーがリニューアルされ、このダイナミックで開放的な空間が生まれました。

デザインディレクションを手がけたのは、MTDO inc.(株式会社エムテド)。リニューアルの背景や、空間の特徴などについてコメントをいただきました。

■背景

1987年に竣工されたJ-POWER本店ビル。2021年に「J-POWER BLUE MISSION 2050」を掲げて以降、J-POWERグループは設備立地地域との共生により一層力を入れている。その一環として、約70年築いてきた発電事業などにおけるエンゲージメントを発信する場として、ロビーを誰もが訪れることのできる開かれたエントランスとしてリニューアルした。

リニューアルしたJ-POWER 電源開発株式会社 本店ロビ

リニューアルしたJ-POWER 電源開発株式会社 本店ロビー

■課題・コンセプト

いまから38年前に建てられた重厚感が強く漂う石造のインテリアから、地域との共生を掲げた親しみある空間へと大胆に変貌させながら、どのようにしてJ-POWERグループの考える未来を物語ることができるか。単に美しい空間に仕立てるのではなく、インターナルにもエクスターナルにもブランド価値を訴求させるために何をすべきかを考えることがプロジェクトの重要テーマであった。

普段から何気なく空気のように使っている「電気」は、その生産過程において想像し難いほどの壮大なスケールの事業が展開されている。しかし、私たちがその事実を知る機会はそう多くない。

J-POWERグループは日本全国・海外で電気を生み出しており、いずれも自然環境や地域社会の人々に支えられている。そうした私たちの暮らしに不可欠な事業を世の中に伝える機会となればという想いを込めた。また、エネルギーについて、訪れる人々の知的な感性を刺激して伝えたいという願いをコンセプトに織り込んだ。

■手法・特徴

エントランス正面には木目調積層ルーバーと大画面デジタルアートキャンバスを設置し、天高を生かしたダイナミックで開放的な空間づくりを目指した。経年で汚れも目立った壁面の石材は貼り直すことが困難であることから、ルーバーの木目と調和を図るために特殊な塗装を施し、トーンアップさせた。

J-POWER 電源開発株式会社 本店ロビーリニューアル

床も石材から木材に張り替え、天井の照明も青白い光から昼光色に変更することで、J-POWERグループのオリジンである水力発電所を取り囲む山々の木立や風が通り抜ける自然の情景を想起させるような、明るく温もりある空間に仕上げている。

■脇田玲氏によるデジタルアート

ロビーエントランスに足を踏み入れるよりも前に目に飛び込んでくる、真正面に位置する巨大スクリーン「デジタルアートキャンバス」。アーティスト・脇田玲氏を迎え、「活流図(KATSURYUZU)」「雷林図(RAIRINZU)」いう2つのアート作品を展開している。

脇田玲のアート作品「活流図(KATSURYUZU)」

「活流図(KATSURYUZU)」:自然界のエネルギーの流れを熱力学的なシミュレーションで表現し、その自然の恵みを巧みに活用する人類の営みを幾何学的な図形として重ねている

脇田玲のアート作品

「雷林図(RAIRINZU)」:本展示のために放電現象のシミュレーションを用いて、雷の集合が森林のような風景をつくり出すプログラムが開発された

水力、風力、火力、地熱などのエネルギーから日々、J-POWERグループが発電する電力量が演算処理の上、アートに昇華される仕組みとなっている。まるで繊細な日本画のようにも映る渦と雷のチューンは、五穀豊穣の神である風神雷神を彷彿とさせ、地球環境あってのエネルギーであることと、それらに生かされているという真の豊かさを感じさせる。

■展示スペース

また同ロビーには、「NEIGHBORHOOD WOOD Project」として、J-POWERグループの設備立地地域の地域材を取り入れたスツールとベンチを設置。そのほか、日本全国の拠点地域の風土や文化を立体的に紹介するための地域共生パネル展示スペースも新設した。災害時にはスツールなどを可動し、大空間に多くの市民を収容できるように配慮している。

展示スペース

展示スペース

社員の通用ゲートでもあることから、大画面には日々の発電の様相を映し出し、本店から遠く離れた拠点で生み出される目に見えない「電気」の存在と、その社会的意義を肌で感じることができるようになっている。都心に位置する本店も当然、国内外の各地域と共生している。

所在地 東京都中央区銀座6-15-1
建築主 J-POWER 電源開発株式会社
コンセプト/デザインディレクション MTDO inc.
設計 AXIS、MTDO inc.
デジタルアート 脇田玲
施工 J-POWERビジネスサービス、AXIS
構造 地上S造16階、地下SRC造4階
敷地面積 3775.11m2
延床面積 34326.21m2
竣工日(開業日) 2025年3月31日