33年目の家

未来と記憶、さまざまなイメージが存在する空間

デザインコンセプト
担当:ASSISTANT

東大寺に隣接した、幅6m、奥行30mの敷地に建つ住宅。建築主の夫婦は、子どもができた時に買った家に住み始めて33年目の年に、新しい家に移ることを決めた。

鉄骨で組まれた大屋根フレームの中に木造の部屋が点在しており、木造の部屋やバルコニーに設けられたパビリオンは、青森と仙台のふたつの施設でのアーティスト・イン・レジデンスの企画で製作し展示されたのち、一度解体して奈良の敷地に運ばれ、鉄骨フレームの下で再び組み立てられた。

「33年目の家」の中で最も小さいパビリオンは、フィリップ・ジョンソンの「ゴーストハウス」へのオマージュとして設計され、せんだい・スクール・オブ・デザインの協力のもと、東北大学建築学科の敷地内にて建築家が自ら制作し、大屋根の下のおもな木造部分は、国際芸術センター青森のアーティスト・イン・レジデンスおよび展覧会の機会に、展示室内で建設された。 別々の場所で建設された住宅の各部分が、最後に奈良へ運ばれ、実際の敷地で鉄骨造の大屋根の下に配置される。

この家は、家族の記憶を包む駅舎のような大きな家と、大小さまざまなフレームが重なる小さな家、その2つの家の透き間からできている。 小さな家の中で日常的な生活を送る一方で、日常から遠くなったものや行為は、透き間にはみ出して居場所を見つける。多数のフレームによってできた家の中では、はみ出したものや行為がいたる所で切り取られ、イメージが連鎖する。1つの記憶に多数のイメージが数珠つなぎで存在するように、住人が家の中を移動するたびに、あらゆる場所で記憶の断片に出会う。

所在地 奈良県
設計 松原慈、有山宙/ASSISTANT
延床面積 104m2
敷地面積 189m2
構造 鉄骨構造、木造
階数 2階
撮影 1~6枚目:新建築、8枚目:山本糾