Dan Dan Dan House

落ち着きと解放性を両立した、大家族を包む二世帯住宅

工場のような佇まいをしたこの建物は、周辺環境を考慮した閉鎖性と、柔らかな光が広がる開放感を感じることのできる二世帯住宅です。

設計を担当した2id Architectsの岡田宰さんに、この建物の背景やコンセプトについて伺いました。

■背景

このプロジェクトでは、二世帯住宅という独自の生活様式における、家族の関係性と空間のあり方を模索しています。敷地条件は、静岡県浜松市の北部に位置する工業地域内で、周辺を工場に囲まれ、住環境としては決して良好とはいえない場所でした。

家族構成は母1人、息子家族は子どもを合わせて6人。このアンバンランスな人数比率をどう配置し、かつ開放的な家族の交流の場をどう確保するかが求められました。さらに、外部環境へ積極的に開くことが難しい敷地状況を読み取りつつ、内部空間の開放性と光の扱い方について考えていきました。

■コンセプト

周辺環境を考慮し、外部空間とは一定の距離感を保ち、閉鎖性を確保しています。一方で、高窓から多くの光を集め、壁面に反射した柔らかな光が空間全体に広がります。

閉鎖性と開放性。一見すると相反する言葉ですが、外部から守られた安心感と柔らかな光が広がる開放感。それぞれの個性を同居させることで、落ち着きと開放性の両方を生み、大家族を包み込むおおらかな空間を目指しました。

Dan Dan Dan House 共有リビングの画像

閉鎖性と開放性を兼ね備えた共有リビング

家族が集う共有リビングには、高窓により多くの光が集まり、そこには自然と家族が集い、常に賑わいあふれる交流の中心となります。また、リビングに集まった光は、柔らかな光となって隣接する部屋へと運ばれます。柔らかな光が空間を緩やかに繋げ、お互いの気配をほのかに感じながら暮らすことができる――これらの光によって、二世帯住宅独自の家族の関係性が生まれます。

集まった光が隣接した部屋へと広がっていく

■課題となった点、手法、特徴

アンバランスな家族構成を整理し、各ボリュームを「母」「共有」「息子家族」と機能を3つに分割しました。断面的でシンプルなボリューム操作によって、「プライバシーを確保した高窓からの採光」「気積(室内の空気の総量)の大きいリビング空間と大容量の床下収納」「夫婦家族の2階部分」を確保。各ボリュームを段々と変化させることで、周辺の工場のような高窓が連続した佇まいとなりました。

Dan Dan Dan House 断面図の画像

断面図

共有リビングの床一面には畳が敷かれています。共有リビングは各部屋と繋がる6箇所の出入り口と2Fの子ども部屋へと繋がる螺旋階段が設けられ、暮らしのさまざまな動線が重なる家の中心でもあります。フローリングなどの固い素材ならばサッと通り抜けてしまうかもしれません。畳という柔らかな素材だからこそ、その場に座ってもいいし、寝転んでもいい。つい居座りしたり、家族の交流が自然と生まれる空間へと変化するでしょう。

また、リビング壁面に採用したポリカーボネートは、光を柔らかく透過させ空間を繋げてくれます。お互いの気配を感じながら、プライバシーを確保した適度な家族の距離感が生まれる。この畳とポリカーボネートの素材の新しい組み合わせが、この二世帯住宅独自の空間性を高め、家族の関係性に大きく寄与しています。

Dan Dan Dan House 共有リビングの画像

中央に配置された、共有リビング。畳とポリカーボネートを新しい組み合わせを実現

家族みんなが集う共有リビング空間に、畳から生えたかのように象徴的な螺旋階段は2階の子ども部屋へと繋がり、家族の憩いの場に子どもたちが常に行き交い、空間全体に賑わいと動きを与えます。

所在地 静岡県浜松市
設計 岡田宰/2id Architects
施工 野沢建築
構造 木造在来工法
敷地面積 345
延床面積 206
竣工日 2020年5月
撮影 西岡潔