これからのプロダクトデザインに求められることとは?:第5回「みんなでクリエイティブナイト」

第5回「みんなでクリエイティブナイト」レポート(後編)

これからのプロダクトデザインに求められることとは?:第5回「みんなでクリエイティブナイト」
デザインの役割や価値について“みんな”で考えていく、エイトブランディングデザインとJDNの共催イベント「みんなでクリエイティブナイト」。ザートデザイン代表・グッドデザイン賞審査委員長のプロダクトデザイナー・安次富隆さんと、PRODUCT DESIGN CENTER代表のプロダクトデザイナー・鈴木啓太さんのおふたりをゲストに迎えた第5回目の様子をお伝えする本レポート、後編ではいよいよ3人による鼎談の内容をお届けします。イベント当日は、JDNにて事前に募集した読者からの質問に対してそれぞれが答えながら、今回のテーマ「これからのプロダクトとデザイン」について語り合いました。
恒例のCOEDOビールでの乾杯から、トークセッションがスタート!

恒例のCOEDOビールでの乾杯から、トークセッションがスタート!

オープニングトーク:デザイナーはなぜ黒を着るのか?

西澤明洋さん(以下、西澤):今回は、「これからのプロダクトとデザイン」というテーマで、プロダクトデザイナーのおふたりにご参加いただいていますが、偶然にも全員インハウス出身ですね。僕はもともと東芝出身なので。

<strong>西澤明洋</strong> 1976年滋賀県生まれ。ブランディングデザイナー。株式会社エイトブランディングデザイン代表。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド開発、商品開発、店舗開発など幅広いジャンルでのデザイン活動を行っている。「フォーカスRPCD®」という独自のデザイン開発手法により、リサーチからプランニング、コンセプト開発まで含めた、一貫性のあるブランディングデザインを数多く手がける。おもな仕事にクラフトビール「COEDO」、スペシャルティコーヒー「堀口珈琲」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、ヤマサ醤油「まる生ぽん酢」、サンゲツ「WARDROBE sangetsu」、ITベンチャー「オズビジョン」、賀茂鶴酒造「広島錦」、芸術文化施設「アーツ前橋」、料理道具屋「釜浅商店」、手織じゅうたん「山形緞通」、農業機械メーカー「OREC」、博多「警固神社」、ブランド買取「なんぼや」、ドラッグストア「サツドラ」など。

西澤明洋 1976年滋賀県生まれ。ブランディングデザイナー。株式会社エイトブランディングデザイン代表。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド開発、商品開発、店舗開発など幅広いジャンルでのデザイン活動を行っている。「フォーカスRPCD®」という独自のデザイン開発手法により、リサーチからプランニング、コンセプト開発まで含めた、一貫性のあるブランディングデザインを数多く手がける。おもな仕事にクラフトビール「COEDO」、スペシャルティコーヒー「堀口珈琲」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、ヤマサ醤油「まる生ぽん酢」、サンゲツ「WARDROBE sangetsu」、ITベンチャー「オズビジョン」、賀茂鶴酒造「広島錦」、芸術文化施設「アーツ前橋」、料理道具屋「釜浅商店」、手織じゅうたん「山形緞通」、農業機械メーカー「OREC」、博多「警固神社」、ブランド買取「なんぼや」、ドラッグストア「サツドラ」など。

安次富隆さん(以下、安次富):そうですね、私はもともとソニーのインハウスでした。鈴木くんはNECだったしね。

<strong>安次富隆</strong> プロダクトデザイナー 沖縄県生まれ。1985年:多摩美術大学卒業。ソニー・デザインセンター入社。テレビ、オーディオ、ビデオなどのデザインを担当。1991年:ザートデザイン設立。2008年~:多摩美術大学プロダクトデザイン専攻教授。2000年~:日本デザイン振興会グッドデザイン賞審査委員。現在はプロダクトデザインの他、地場産業開発、デザイン教育など総合的なデザインアプローチを行なっている。

安次富隆 プロダクトデザイナー 沖縄県生まれ。1985年:多摩美術大学卒業。ソニー・デザインセンター入社。テレビ、オーディオ、ビデオなどのデザインを担当。1991年:ザートデザイン設立。2008年~:多摩美術大学プロダクトデザイン専攻教授。2000年~:日本デザイン振興会グッドデザイン賞審査委員。現在はプロダクトデザインの他、地場産業開発、デザイン教育など総合的なデザインアプローチを行なっている。

鈴木啓太さん(以下、鈴木):はい、そうですね。

西澤:あと、たまたまなんですけども、今日は3人とも黒い服で、ちょっと被ってしまって恥ずかしい(笑)。なんでデザイナーは黒い服が好きなんですかね?

安次富:いや、でもずっと黒を着てたわけじゃなかったでしょ?

鈴木:僕はプロになってから、色やかたちを見るときに、服の色が映り込まないようにということで、黒っぽい服が多くなってきましたね。

<strong>鈴木啓太</strong> プロダクトデザイナー 1982年愛知県生まれ。2006年多摩美術大学卒業。古美術収集家の祖父の影響で、幼少時からものづくりを始める。2012年PRODUCT DESIGN CENTER設立。デイリーアイテムや公共のプロダクトを中心に、国内外でプランニングからエンジニアリングまでを手がける。近年では工芸を取り入れたプロダクトも多く発表。アジアのもの作りへの理解に加え、欧米企業との仕事を通して、美意識と機能性を融合させたデザインを生み出している。2018年柳宗理記念デザイン研究所にて、同デザイナー以外では初となる個展を開催。2019年は車両デザインを手がけた「相模鉄道20000系」がローレル賞2019を受賞。

鈴木啓太 プロダクトデザイナー 1982年愛知県生まれ。2006年多摩美術大学卒業。古美術収集家の祖父の影響で、幼少時からものづくりを始める。2012年PRODUCT DESIGN CENTER設立。デイリーアイテムや公共のプロダクトを中心に、国内外でプランニングからエンジニアリングまでを手がける。近年では工芸を取り入れたプロダクトも多く発表。アジアのもの作りへの理解に加え、欧米企業との仕事を通して、美意識と機能性を融合させたデザインを生み出している。2018年柳宗理記念デザイン研究所にて、同デザイナー以外では初となる個展を開催。2019年は車両デザインを手がけた「相模鉄道20000系」がローレル賞2019を受賞。

安次富:私もまあ、同じですよね。プレゼンテーションで、いろんなものを見せる場面ってありますよね。白を着てるとやっぱり合わないんですよね。黒だと背景になるので、きれいに見える。それはあると思いますね。

西澤:僕はもっぱら面倒くさいというだけなんですけど、今度からそのように答えるようにしようと思います(笑)。さて、今回も事前にたくさん質問を頂いているので、それらにお答えするかたちで3人のトークを進めていきたいなと思います。

プロダクトデザイナーとしての「問い」と「五感」

Q.デザインを勉強していく中で、デザイナーとしての強みは、課題への観察力、そこから得られた発見を共感させる力だと考えています。第一線でデザインをされているみなさんは、日々仕事をしていく中で、問題を観察するときに心がけていることはありますか?

西澤:初っ端の出だしとしてはいい質問ですね。啓太さん、どうですか?問題を観察するときに心がけていること。

鈴木:まずは、多様な視点でものごとを見るということですかね。特に、コロナ禍で僕が意識的にやってきていることは、いままで以上にさまざまな領域の専門家の人たちと、一緒にものを考えるということです。それは、この状況の中では、スタンダードと呼べるものがなく、日々刻々と状況が変化する中で、できるだけ多くの知識や脳を入れておいたほうがベターだろうという考え方です。

あとは、デザインの視点で問題を解決するときには、やっぱりまずは「問い」が一体何なのかということを見つけ出すことが、いまとても重要なことだと思います。

西澤さん、安次富さん、鈴木さん

鈴木:去年、イケアが障がいを持つ人たちが家具を使えるように、3Dプリンティングでツールを配布するプロジェクトをはじめたんです。イケアは家具の民主化をテーマとして掲げていたと思いますが、イケアは「問い」として、障がいを持った人たちが同じように家具を使えるということを見つけ出したんだと思うんです。

いま、コロナ禍のような状況で大切なのは、何が「問い」になるのかを見つけ出すことなんじゃないかと思うんです。そのためには、多様な視点が必要だと考えています。

西澤:なるほど、ありがとうございます。安次富さん、いかがですか。

安次富:この質問では、「観察」ということばを使っていますが、人は視覚を観察において一番頼りにしているのでしょうけれど、やっぱり五感で感じることが大事なのかなと思っています。一つエピソードがあるんですが、僕がはじめて海外に行ったのはローマで、行く前にいろんなガイドブックを見たり、下調べをしたんですね。でも、ローマに降りた途端に僕が一番驚いたのは、「猫の匂いがする」ということだったんですよ。

西澤:猫の匂い。猫のおしっこですかね?

安次富:そう。これ何だろうと思って、ついホテルの人に聞いたんですよ。そしたら「あぁ」って言うんですね。「ローマの人は、第二次世界大戦中の食糧難のときに、猫を食べたことがある。それで救われたんだ」と。だから、街全体で猫をものすごく大事にしているそうなんですね。ガイドブックにそんなことは書いてないですよね、「ローマは猫の匂いがする」なんて。

そういった、身体で観察するための五感や、さらには第六感が重要になってくると思うんです。「ここに行ったらちょっと怖いな」とか、それは何かを感じているということですよね。だから、頭で分かるだけじゃなく、感じることがものすごく大事なんじゃないかなと思います。

西澤:いま、図らずともおふたりから観察を一歩超えた、五感のセンサーをフル活用していくことや多様な視点の話が出ましたね。おふたりはプロダクトデザイナーとして、そういったセンサーをどのように鍛えて、感覚を開いていったんですか?

鈴木:……難しい質問ですね、これ。

安次富:難しいですよね。

西澤:キョトンとせんといてくださいよ(笑)。やっぱりセンスなのかな、トレーニングというわけじゃないですよね。

西澤さん、安次富さん、鈴木さん

安次富:でもね、僕は思うんですけど、人はみんな子どもの頃に、すぐに道でものを拾うじゃないですか。お母さんが「そんなの汚いから拾っちゃ駄目」とか言うんですけど、子どもは拾うだけじゃなくて口に入れたりもする。

西澤:うちの子もドングリとか平気で口に入れますからね。

安次富:そうでしょ。これってね、人が持ってる本能なんですよ。そしてそれは、観察してるということなんです。世界を知ろうとしてる。でも、大人になるにつれて「これはやっちゃいけないことなんだ」という、常識的な人になっていくんです。でも、僕はやっちゃう人なんです。

西澤:え、口に入れちゃうんですか(笑)。

安次富:入れちゃいます。いや、まさか人前ではやらないですよ。たとえば、金属を見るとちょっと舐めたくなるんですが、真鍮とアルミと鉄は全然違うんですよ。鉄は血の味がしますよ、ヘモグロビンが入ってるから。ほかにも、錫はちょっとあったかみがあるんですね。熱の伝導率の問題もあるんですが。

安次富:舐めちゃいけないと習ってるから、普通は金属や鉄は観察するわけですよね。でも僕は舐めてるから、味で分かってるところがある。まぁ、舐めちゃいけない危ないものもありますが。

鈴木:基本は舐めないほうがいいかもしれませんね(笑)。

安次富:ぺろっと舐めるのと触るのとでは、全然違うんですよ。その材料が何かということを五感で感じていると、デザインするときに使う材料や、表されるものが違ってくるわけです。だから僕が言いたかったのは、子どものときに、世界を知るために行っている、舐めることや触ること、匂いをかぐことなどの本能的な行為を捨てないほうがいいということなんです。

西澤:啓太さんも舐めるクチ?(笑)

鈴木:僕はあんま舐めないかな。でも、香りは嗅ぎますね。

西澤さん、安次富さん、鈴木さん

安次富:嗅ぐでしょ?でもね、いまはみんな香りを嫌うんです。清潔好きだから。そうやって、どんどん人が五感で感じる情報を消す方向で動いてるでしょ。プラスチックは匂わないしね。僕はちょっとそのことは気になっていますね。

ものを集めるということ

西澤:実は今日、蒐集家でもあるお二人が、本能に従って集めたものの実物を見たいとお願いして、スタジオにコレクションの一部を持ってきていただきました。

手前が安次富さん、奥が鈴木さんのコレクション

手前が安次富さん、奥が鈴木さんのコレクション

西澤:安次富さんには、展覧会で展示されていたクリーニングした拾いものを。啓太さんは、事務所がうちのすぐ近所なんですけども、オフィスに所狭しと飾ってあるいろんな物の一部を持ってきていただきました。

鈴木:僕は、地域も時代も全然違う、世界中のものをたくさん集めています。たとえば、ドイツのブラウン社のディーター・ラムスというデザイナーがデザインしていたものをたくさん収集しています。これはその中の一つなんですけども。

鈴木さん

鈴木:これがつくられていた当時のヨーロッパは、プラスチックの成型がどんどんできるようになってきて、いままでなかったかたちがどんどん生まれていた時代。そんな中で、みんながどのように試行錯誤してデザインしていたのかということを、さまざまなものを集めて研究しています。

これは、スリランカで使われている瓦屋根ですね。

鈴木さん

西澤:スリランカに行ったときに持って帰って来たんですか?

鈴木:そうですね。スリランカの建築は、すべて赤いレンガの屋根なんです。それがとても印象的で、これをつくってるところを見たいなと思って、工場を探して、この瓦を見せてくれと。そこでひとつもらってきました。

これは縄文時代に、日本人がはじめてつくった最古のかごですね。木の皮を使ったかごですが、縄文の頃、すでに日本人はこういったかなり細かい仕事をしていたことが分かります。

鈴木さん

西澤:なんでこんなに集めちゃうわけ?

鈴木:興味があるんですよね。歴史に残ってきたものにある強さとは、一体何なのかということを、常に考えていて。あと、人類の歴史の中で、いろんな人が試行錯誤した技や知恵というものが僕は大好きで、すべてのものにそういったことが詰まってるんですよね。こうやって集ることによって、技術や知恵を勉強していく同時に、ものとしてこれらが残っているのをみることで、これがなぜ残ったのかということを考えて、目を鍛えていくトレーニングでもあります。

西澤:おもしろい。安次富さんのコレクションは、落ちてたものと思えない、なんかというか、生き物みたいな感じがしますが。これはどこで拾われたんですか?

西澤さん

安次富:沖縄の海ですよ。

西澤:へー。これはどこをクリーニングしたんですか?

安次富:これはね、そう聞かれるととても説明が難しい。2カ月ぐらいかかったんですけど。

西澤:2カ月。

安次富:これね、最初は1カ月ぐらいクリーニングしたんですが、どうにもならないなって思って一度諦めたんですよ。まずは、細かいところにごみとかが入っていたので、針みたいなもので丁寧に取り除くんですけれど、どうもうまくいかない。なので、ほかのものに手をつけているうちに、なんだかできそうな気がしてきてもう一度やり直して、さらに1カ月かかったんです。

だけど、たぶん最初のかたちとクリーニングし終わったかたちは、ほぼ変わらないと思います。自分では造形していないので。

西澤:なんだかおふたりとも集めてるものは違えど、根っこの部分で共通するようなものを感じるところがあるんですけど。

安次富:いやでもね、啓太さんのはちゃんと価値がありますよ。

西澤:いやいや、安次富さんのもありますよ(笑)。

安次富:私のはね、自分が価値あると思ってるだけなんですよ、たぶんね。すごくパーソナルなものなので。私は小さい頃から小石とかを拾ってばかりいて、母からは「あなたのズボン洗うと、必ずポケットから石ころやら釘やら出てきた」って言われるくらいで。これを展示するって言ったときにも「えっ、まだやってるの?」と言われました(笑)。

西澤:これを展示しようと思った理由は何なんですか?

西澤さん

安次富:それは、私が考えていることを表に出して、いろんな分野の人の意見も聞きたいということでしたね。

西澤:啓太さんのコレクションも、一回展覧会をやってもらいたいですね。なにか集めてる指針みたいなものはありますか?

鈴木:僕は日常にあふれているようなものや、いろんなものを集めているんですけど、指標というのはあんまりないですね。興味深いもの、人間が工夫してつくったと思われるものがすごく好きで。

自分の目指してることとして、過去と未来をつなぐ存在でありたいということを常に考えていまして。自分のデザインやいろんな企画のアイデアを考えていく上で大事なのは、過去の人類の営みをきちんと肯定して、それをいまの時代に生きてる僕がどのようなかたちに改良して、未来の人たちに渡していくかということなんです。

僕にとって、ものをつくることやものを考えることは、常にそういう感じなんですね。なので、過去のいろんなものについて自分は知っておかなくてはいけないといつも考えています。こうやって実際にものを集めるという行為もそうですが、時間があれば世界中の博物館や美術館のオンラインのアーカイブや、クリスティーズ、サザビーズなどのオークショニアのアーカイブもくまなく見ていて。どういう時代に何がどこで生まれているのかっていうことを、全部自分の中で一応、体系立てているつもりなんです。

西澤:つくりたいものをつくるというよりも、ものづくりのバトンを受け継いで、いまつくらなきゃいけない必然性を探している、という感じなのかな?

鈴木:そうですね、自分のデザインというのは、そういう意味ではかなり論理的だと思います。その中で、美しいかたちということにもちろんこだわる。基本的にはバトンをつないでいくものとして、長い人類の歴史の中でのいい「点」になれたらいいなと思っているんです。

デザインにとって「失敗」とは?

Q.失敗作とその責任の取り方とは?

西澤:ちょっとタイプの違う質問が来ていますね。

鈴木:なんか自分のクライアントが質問したのかなって不安になっちゃいますよ、この質問(笑)。

安次富:すぐには思いつかないですね、失敗作。

鈴木:僕も失敗作っていうのはあんまり思いつかないですね。

西澤:僕も一緒。

西澤さん、安次富さん、鈴木さん

安次富:デザイナーは作品をつくっているとはあまり思っていないですよね。大勢の人の力を合わせてものをつくっている。そのときデザイナーは、ある意味オーケストラの指揮者のような、ディレクター的な要素を持っていると僕は思っているので、責任の所在っていうのは種々様々。プロデューサーが責任を持ってる場合もあるし、ディレクターが責任を持ってる場合もある。だから、ただひとりで自分の作品づくりをしているのとはわけが違うので、この質問はなかなか回答が難しいですね。

西澤:なるほど。僕らみたいにブランディングデザインをやっていると、企業の方とタッグを組んで、共創的に動くわけですね。なので、安次富さんとかなり感覚が近いなと思ったんですけども、作品という意識は僕らもあまりなくて。デザインは、お客さんと一緒に育てている子どもみたいな感覚があるので、失敗というのはなくて、やっぱり何かしらやりようはあるし、諦めたときが失敗かなって思います。

あとは、デザインにおいてブラックボックスをつくらないようにすることは結構大事ですね。難しいですが、僕らは意識的にデザインをとことん言語化しています。クライアントにつくってるもののことを分かってもらわないと意見も言えないし、一緒につくっている感覚にもなれない。そうやってデザインの考え方のプラットフォームをつくりながらやっていくと、自然とその責任の区分がはっきりすると思うんです。

それが造形に由来するものだったら僕らだろうし、売り方に由来するようなものだったらクライアントかもしれない。でも、それは責任のなすりつけ合いをするわけじゃなくて、お互いのリスペクトがあってのことです。僕らは売り方にも関与するし、逆にクライアントも造形に関与してきますので、一緒に責任を取ればいい。逆に成功したら一緒にハッピーで、一緒にやっていくことがクリエイションの筋かなって最近思いますけどね。

啓太さん、どうですか?時間稼ぎましたよ(笑)。

西澤さん

鈴木:(笑)。確かに、何を失敗とするか、という話だと思いますね。デザインというものは、社会的で公共に近いものから、好きな人だけが買えばいいというかなりパーソナルなものまで、本当にさまざまですので。そういった意味では、プロジェクトの最初に、このデザインによって何を実現するんだという「問い」が達成できなかったときは、失敗と呼べるのかもなと思いますね。

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