「大地の芸術祭」は約760km²の広大な里山を10のエリアに分けて展示。全作品を回ろうとすると1~2日では到底足りない(1週間前後が目安といわれている)。 今回は下記の5エリアに絞って新作を中心に紹介したい。
・キナーレ・十日町市街地周辺エリア
・うぶすな・下条飛渡エリア
・絵本と木の実・十日町南エリア
・農舞台・松代中央エリア
・アジア芸術村・津南エリア
キナーレ・十日町市街地周辺エリア
越後妻有里山現代美術館[キナーレ]を中心に、十日町駅や周辺に広がる市街地に多くの作品が設置されている。
蓬莱山/蔡國強(2015)
「大地の芸術祭」に第1回からフルエントリーしている蔡國強氏。越後妻有里山現代美術館[キナーレ]の中央の池に、仙人が住むといわれていたユートピア「蓬莱山」が出現。それを取り囲むように、地元住民とともにつくった約1000体の戦闘機・軍艦・潜水艦などのわら細工のオブジェが設置された。東アジアが緊張状態にあるなか、国内外の関心が集まる「島」をテーマにした大規模なインスタレーション。「アートには毒が重要、そして冗談も重要です。」と語るように、架空の島をつくることで、理想の島とは何かを問う作品だ。
原広司+アトリエ・ファイ建築研究所が設計した「キナーレ」は、大地の芸術祭の中心的施設で、インフォメーションセンターの役割を担っている。2003年交流館として竣工した後、2012年に現代美術館としてリニューアル。中庭を囲む回廊の2階に12点の常設作品が展示されている。
トンネル/レアンドロ・エルリッヒ(2012)
越後妻有地域の特徴を最もよく表していて、よく見かける「トンネル」に着想。写真では伝わりづらいが、この地域特有の風景を取り込んだ視覚・体感トリックを生み出す。
Rolling Cylinder, 2012/カールステン・ヘラー(2012)
世界共通で理容室を示す、赤白青の螺旋模様の回転するトンネルが平衡感覚が揺さぶる。
今回の「大地の芸術祭」は、これまで取り組みが弱かった、十日町の市街地にもアプローチをはかっている。
合成ミクロコスモス2015/ホアン・スーチェ(黄世傑)(2015)
かつてバーとして使われていた細長い店舗を利用し、ビニール袋やペットボトルなどの人工物が怪しげな生命体が漂うような小宇宙をつくりだす。
越後妻有民俗泊物館/深澤孝史(2015)
十日町産業文化発信館のいこての2階、中心市街地と里山をつなぐ新しいミュージアム。地域の家庭に「みんぱく研究員」がホームステイし、あまり知られてこなかった歴史やエピソードの聞き取り調査を実施。独自の視点で収集した資料を見学できる。
T+S+U+M+A+R+Iのかけらミュージアム/武藤亜希子(2015)
十日町の火焔型土器をモチーフにした布製の器を制作。器の表面は、住民から集めた布や端切れ、ボタンなどをつなぎ合わせている。取材で訪れたときは、子どもがパーツを楽しそうに付け替えていたのが印象的。
チョマノモリ/淺井裕介(2015)
キナーレから駅前商店街を結ぶ広場と道路に、横断歩道などに使われる素材をバナーで焼き付けた作品。「チョマ(苧麻)ノモリ」は、かつて越後縮が特産品として知られていた、織物の町「十日町」を由縁としている。どこにでもある路地が活き活きとした表情に。
▼ほかのエリアのフォトレポート
・うぶすな・下条飛渡エリア
・絵本と木の実・十日町南エリア
・農舞台・松代中央エリア
・アジア芸術村・津南エリア
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」
会場:越後妻有地域(新潟県十日町市・津南町)760k㎡
会期:2015年7月26日(日)~9月13日(日)
http://www.echigo-tsumari.jp/