敷居を越える一週間、「Design Week Kyoto ゐゑ 2016」出張レポート(オープニングイベント)

敷居を越える一週間、「Design Week Kyoto ゐゑ 2016」出張レポート(オープニングイベント)

“敷居を越える一週間”をテーマにした「Design Week Kyoto ゐゑ(いえ)」は、京都市内のさまざまな工房やオフィスが開放されるイベントです。普段入れない「クリエイティブの現場」でクリエイターと会話したりワークショップに参加することで、あたらしい京都の一面を知ることができます。第一回目となる今回は、2016年2月21日~28日の期間で開催されました。

好きな神社がいくつもあり、京都には毎年訪れているのですが、これまで「ものづくり」という視点で京都を見たことはありませんでした。今回、「京都でデザインウィーク? しかも記念すべき第1回目」ということで、1泊2日で取材に行ってきました!

DSC08843

参加店舗やオフィスは約140組と多く、全部は見切れませんでしたが、2月21日~22日に参加したものにしぼってレポートします。

・オープニングイベント
・NOSIGNER京都オフィス 展示&オープンオフィス
・KYOTO ART HOSTEL kumagusuku
・中村ローソク
・つづれ織工房 おりこと
・修美社

「Design Week Kyoto ゐゑ 2016」オープニングイベント

日時:2016年2月21日
会場:西本願寺聞法会館3Fホール(京都市下京区花屋町通堀川西入柿本町869−1)

「Design Week Kyoto ゐゑ 2016」の開幕に合わせ、下京区にある西本願寺聞法会館にて、オープニングイベントが開催。「敷居を越える一週間」というコンセプトにふさわしい、さまざまな分野のゲストによるトークイベントが行われました。

DSC08660

オープニングでの雅楽演奏。演奏後には笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)、篳篥(しちりき)の3種の楽器についての説明も行われました

このイベントの発起人は、文化ビジネスのコーディネートを行うCOS KYOTO代表・北林功さん。「Design Week Kyoto ゐゑ」を始めたきっかけについて、「京都はいろいろな人がものづくりなどの活動に従事していますが、たとえば近所の人が工房をやっていたとしても、お互いが詳しくどんなことをやっているのか知らないということが多いなと気付きました」。北林さんは全米でもっとも住みやすい街と言われるポートランドに視察に行った際に、ビジネスのあり方について考えさせられたそうです。

DSC08668

「Design Week Kyoto ゐゑ 2016」の発起人・北林功さん(COS KYOTO代表)

「ポートランドでは、いろいろな取り組みをしている方が密に結びついてプロジェクトをおこなっていました。それを京都でもやってみたら面白いのでは? と思い、まずお互いのことを知るきっかけになるイベントを実施しようと企画しました。1年目なので、まずきっかけの場として、年月を重ねた時に“あの出会いがあって良かったな”という小さなきっかけがイベントを通してたくさん起きているといいなと思います」

トークショーでは「京都と聞いて何を思い浮かべるか?」というテーマで、北林さんがファシリテーターとなり、京都府副知事の山下晃正さん、京都経済同友会代表幹事の増田寿幸さん、Portland KIRIKOファウンダーのKatsu Tanakaさん、元「greenz.jp」編集長の兼松佳宏さんという、年代や職業がまったく違うメンバーによる熱い意見交換が行われました。それぞれの京都に対する印象や、「Design Week Kyoto ゐゑ」に期待することという発言の中から一部抜粋します。

京都に長年在住の山下さん、増田さんの意見

山下晃正:「京都は大人のまちですね。皆が皆、商品を売りたいという人ではなく、自分の価値観を曲げてまで商売はしたくないという人もたくさんいます。ひとりひとりの価値観が大事にされているのだと思います」

増田寿幸:「仕事上で(京都を)意識することはほとんどないですね。外から来た人に言われて意識するくらいです。友達を案内したときに、“京都って意外と普通のまちなんですね”と言われたことが印象に残っています」

京都に移り住んで1年の兼松さん、海外在住のKatsuさんの意見

Katsu Tanaka:「僕もそうですが海外に住んでいる人にとっては、京都って聞くだけでポジティブな印象を受けますね。住んでいる中の人よりは、住んでいない外の人のほうがプラスな印象を持っているかも。このデザインウィークを開催したことで、いつか“made in KYOTO”という名前が付くだけで価値が付くようなものが、多く生み出されればいいなと思います」

兼松佳宏:「京都は儀礼的な空間が多いなと思います。神社や小さいお地蔵さんにお祈りしている人が多かったり、気持ちをリセットできるような空間が多いなと。敷居が高いと思われていますが、ご縁さえあればどんどん受け入れていってくれるまちなんだなと思います。このデザインウィークからはじまることが多くあればいいなと思います。消費していくだけではない軸で、“京都っていいな”と思えるイベントにしてほしいです」

DSC08670

【写真左から】北林功さん、山下晃正さん(京都府副知事)、増田寿幸さん(京都経済同友会代表幹事)、兼松佳宏さん(元greenz.jp 編集長)、Katsu Tanakaさん(Portland KIRIKOファウンダー)

また、その後に行われた4つのクロストーク(2コマ×2)では、京都についての話からそれぞれの職業の話などに展開しました。私が参加した1つめのグループは、北林さん、兼松さん、浄土真宗本願寺派総研の高橋一仁さんの3名によるトークショーでした。まず、はじめのトークショーを受けて、観客がどう思ったかということが話されました。観客から質問が多く飛ぶ場面もあり、物理的にも精神的にも距離の近いセッションになった印象でした。

【写真左奥から)】クロストークでの、北林功さん、浄土真宗本願寺派総研・高橋一仁さん、兼松佳宏さん

【写真左奥から】クロストークでの、北林功さん、浄土真宗本願寺派総研・高橋一仁さん、兼松佳宏さん

2つめは、現代アーティストの木崎公隆さん(Yotta)がファシリテーターとなり、能楽師の松野浩行さん、デザイナーの太刀川英輔さん(NOSIGNER)の3名によるクロストークに参加しました。想像していたものを形にするデザイナーと、自分が演じることで観客の頭にイメージをつくり出す能楽師。お互いの共通点についての話や、松野さんによる能の実演がおこなわれる場面もありました。

DSC08682

【写真左から】木崎公隆さん(Yotta)×松野浩行さん(能楽師)×太刀川英輔さん(NOSIGNER)

いろいろな職業や立場の人にとっての「京都」を知れる良い機会になり、あらためて自分にとっての「京都」についても考えさせられたオープニングイベントでした。

また、参加店舗やオフィスだけでなく、街中でも「Design Week Kyoto ゐゑ」を盛り上げていました。京都駅直結のジェイアール京都伊勢丹には、インフォメーションセンターが設置され、建物の外には、のぼりやショーウィンドウも展開されていました。

DSC08830

ジェイアール京都伊勢丹にものぼりがちらほら

DSC08864

伊勢丹2階の中央エスカレーター付近のインフォメーションセンターでは、イベント開催マップを配布

▼そのほかの「Design Week Kyoto ゐゑ 2016」レポート
・NOSIGNER京都オフィス 展示&オープンオフィス
・KYOTO ART HOSTEL kumagusuku
・中村ローソク
・つづれ織工房 おりこと
・修美社

実際に2日間参加してみて、京都のイメージが本当に変わりました。普段、観光で訪れるのとはまったく違う、京都の人の日常に触れることができたなと思います。勝手に「京都は敷居が高い」というイメージを持っていましたが、少し勇気を持って扉を開け、工房やオフィスに伺うと、みなさん温かく迎えてくれて熱心に自分の仕事について話してくれます。あらためて敷居というのは外の人がつくっているのだなと実感しました。今後もぜひ続けていってほしいイベントです。

石田織座(JDN編集部)

Design Week Kyoto ゐゑ 2016
http://www.designweek-kyoto.com/ja