「DESIGNART TOKYO 2024」開催レポート-東京の街でデザイン&アートとの出会いを楽しむ

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「DESIGNART TOKYO 2024」開催レポート-東京の街でデザイン&アートとの出会いを楽しむ

東京のまちがデザインとアートで彩を増す秋の季節。デザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO 2024」が、2024年10月18日から10月27日まで開催された。舞台となったのは、東京の表参道・外苑前・原宿・渋谷・六本木・広尾・銀座・東京駅周辺の各エリアのギャラリーや商業施設など約100カ所。

「DESIGNART TOKYO(デザイナート トーキョー)」は、「INTO THE EMOTIONS ~感動の入口~」をコンセプトに、2017年にスタートしたデザイン&アートフェスティバルだ。世界屈指のミックスカルチャー都市である東京を舞台に、世界中からインテリア、アート、ファッション、テクノロジー、フードなど、多彩なジャンルをリードする才能が集結し、都内各所で多彩な展示を開催している。

2024年度のメインテーマは「Reframing ~転換のはじまり~」。これまでの概念や枠組みにとらわれず、別の視点から見つめ直すことにフォーカスされた。本記事ではイベントの中から一部を紹介する。

オフィシャルエキシビジョン「Reframing展」

ワールド北青山ビルで開催されたのは、オフィシャルエキシビジョン「Reframing展」。現代美術キュレーターの金澤韻、インテリアスタイリストの川合将人、伝統技術ディレクターの立川裕大、芸術監督の青木竜太という4名のキュレーターが、「Reframing ~転換のはじまり~」をテーマに、18組のクリエイター作品を展示。

サーモグラフィーカメラを用いた人物の体温が伝わってくる写真作品のシリーズや、キュビズム絵画を立体化したようなつくりのフラワーベースなど、国内外で活躍するクリエイターの研ぎ澄まされた作品が一堂に集合した。

国内外で活躍するクリエイターの作品が所せましと並んだ(Photo ©Nacasa & Partners)

LIXIL/bathtope

トイレやお風呂、キッチンなどの水まわり製品で著名なLIXILは、新しいコンセプトの浴室空間「bathtope(バストープ)」を出展。

bathtope

bathtope

bathtopeは、布製の浴槽(fabric bath)にお湯をためて入浴し、使用後はコンパクトにたたんで収納することができるリムーバブルな浴槽を備えた浴室空間だ。2024年11月26日の発売開始に先んじて、今回展示された。

ライフスタイルが多様化する近年、人々の環境への意識や、ウェルビーイングを重視する傾向が高まるなかで、ありそうでなかった提案を披露。水まわり・タイルの国内事業が100周年を迎えた同社が、次の100年に向けた新たな一歩を踏み出した。

写真提供:株式会社LIXIL

写真提供:株式会社LIXIL

Sony Group Creative Center/CREATE MORE FUN

ラグジュアリー家具ブランド「Stellar Works」ショールームの一画で開催されたのは、ソニーグループのデザイン部門であるクリエイティブセンターの展示。CMF(Color, Material, Finish:色、素材、仕上げ)の可能性をフィジカルとデジタルの両面から探求する体験型展示で、今年6月にデンマーク・コペンハーゲンで開催された「3daysofdesign 2024」でも好評だった。

製品のCMFを検討する際、独自の視点で将来のソニー製品やサービスに取り入れるべき色や素材を提案する活動もおこなっている同クリエイティブセンター。CMFを含むデザイントレンド分析とフィールドリサーチを継続的に実施し、それらのリサーチ結果から生活者およびデザイナーの動向を読み解き、将来を予見するキーワードやビジュアル、カラーパレット、サンプル素材をクラスターごとにまとめた「CMFフレームワーク」というツールを作成している。

CREATE MORE FUN

「CMFクラスター」。あえて完成されたプロダクトは置かず、触って遊んで創造のヒントにつながるような展示

本展では、この活動を通じてソニーのデザイナーが導き出した8つのCMFクラスターを、キュレーションした素材のコレクションと共にフィジカルに紹介しつつ、「CMFフレームワーク」をインタラクティブなデザインツールとして体験できるプロトタイプも披露した。

会場の様子(Photo©RYO USAMI)

アクアクララ×HONOKA/Trace of Water ―水の痕跡-

アクアクララ株式会社とデザインラボのHONOKAは、新プロジェクト「Trace of Waterー水の痕跡ー」を日比谷OKUROJIにて発表。同プロジェクトは、ウォーターサーバー用リターナブルボトルの素材としての潜在力にフォーカスし、その未知の可能性や用途を探求する取り組みだ。

Photo©HONOKA - Ryo Suzuki

Photo©HONOKA – Ryo Suzuki

環境に配慮し、洗浄して繰り返し利用できるリターナブルボトルを採用しているアクアクララ。使用期限が過ぎたボトルを適切にリサイクルし、100%再資源化することを2030年までのブランド目標として取り組んでいる。

今回HONOKAは、使い終わったボトルを新しい表現方法で再利用することを考えた。さまざまな加工法や素材に触れてきた経験を活かし、「建材」という切り口でマテリアルをデザインした。審美性と機能性を兼ね備えた建材、またそれらを応用したプロダクトで空間に新たな価値の提案をおこなった。ウォーターサーバー用リターナブルボトルからできたと一見ではわからない、静謐な空気感が流れる会場だった。

Photo©HONOKA - Ryo Suzuki

展示にいたるまでの過程がわかるプロトタイプも展示された(Photo©HONOKA – Ryo Suzuki)

Takram/Takramのプロダクトデザインとその裏側

デザイン・イノベーション・ファームのTakramは、プロダクトのデザインに焦点を当て、実際の製品とともにそのデザインの裏側を公開。

資料やプロトタイプなどプロセスを垣間見れる痕跡が並んだ

さまざまな分野のチェンジメーカーとプロジェクトを共にしてきたTakram。会場では、コクヨ株式会社のはさみ「HASA」、つっぱり棒のトップシェアメーカーである平安伸銅工業株式会社のシェルフシステム「AIR SHELF」、株式会社タムロンのカメラ用交換レンズシリーズなどのプロジェクトを公開。

テーブルにずらっと並んだ資料やプロトタイプからは、積み重ねられた検討の痕跡がわかり、デザイナーの思考が垣間見れる貴重な展示となっていた。

Paola Lenti/Hana-arashi by nendo

今年2月に麻布台にオープンした、Paola Lenti Tokyoでは、nendoとのコラボレーションプロジェクトが披露された。Paola Lentiは、イタリアのファニチャーブランドで、クラフトマンシップと革新性が融合した高耐久のアウトドアコレクションが国内外で高く評価されている。

今回は、日本の美徳「もったいない」という言葉の意味を解釈した生産哲学から端を発したプロジェクトにて、デザインスタジオのnendoを招聘。既製品の端材に新たな命を吹き込み、「花嵐」シリーズというファニチャーが完成した。

「花嵐」とは、桜の花びらが風に舞う「第二の美」を意味する日本語。Paola Lentiの自社開発ファブリック「Maris」の端材を使ってつくられたこのコレクションは、新たな資源の消費を最小限に抑え、最大限に再利用するというPaola Lentiの哲学を反映している。普段モノトーンなイメージが強いnendoに、カラフルな素材を渡したら何が起こるか?というチャレンジ性も感じられるプロジェクトだった。

最後は、東京ミッドタウンにて展示されていた、これからの活躍が期待される若手3組の作品を紹介する。

AAAQ/Visible stress

プロダクトデザイナー/プロデューサーの都淳朗・UIデザイナーの太田壮によるクリエイティブ・ユニットAAAQは、「光弾性(photoelasticity)」と呼ばれる現象に着目した作品を発表した。

光弾性とは、外力を受けてひずんだ弾性体に光を照射すると複屈折を起こす性質のこと。本作品はこの光弾性を利用し、真空成形の負荷から生まれる光のテクスチャーを鑑賞できる作品だ。

千葉大学大学院を修了後2021年に発足し、東京を拠点に活動しているAAAQ。“Answer(答え)をつくってつくってつくって、新しいQuestion(問い)を生む“というフィロソフィーのもと、感性と研究に基づく制作をおこなっている。

竹下早紀/Eeyo

ギターのエフェクターデザインからインテリアプロダクトなど幅広くデザインをおこなっている竹下早紀。ものと人と空間の関わりをテーマに、素材に触れながら手でつくり、考えることを大切にしている。

今回の展示では、世界一軽い木材として知られるバルサ材を染色し、200度近い熱風を当てて色を変化させ、グラフィカルに展開した作品「Eeyo(イーヨー)」を発表した。

©KOHEI YAMAMOTO

Photo©KOHEI YAMAMOTO

染める時間や熱の当て方、木材と染料の相性によって色や模様を変化させることができる不思議な現象を使って表現された椅子の数々。色味や柄、形もバラバラなユニークな風貌の椅子は、買い物で訪れた人々も思わず足を止めていた。木目の表情やテクスチャーはそのままに、凹凸や曲面、立体物に対してグラフィカルな加工をしていける点は、木材のプロダクトデザインの新しい表現方法を感じられた。

若田勇輔/RE 47 CRAFTS

「RE 47 CRAFTS」は、日本全国のご当地の果物や食品の廃材をアップサイクルし、新しいプロダクトに生まれ変わらせるプロジェクト。廃材を活用してつくられるのは、こけしや鬼瓦、赤べこなどそれぞれの地方の伝統工芸品だ。たとえば、愛媛県はみかんの廃材と鬼瓦を組み合わせた「みかん瓦」、宮城県ならずんだに使用される枝豆とこけしを組み合わせた「ずんだこけし」など。

本プロジェクトをおこなうのは、広告会社で企業のブランディング業務に携わりながら、個人で「未来のための“問い”をつくる」ことをテーマに活動する若田勇輔。「RE 47 CRAFTS」では各地方の文化と可能性をリデザインしている。

©KOHEI YAMAMOTO

Photo ©KOHEI YAMAMOTO

このほかにも会期中は都内の多様な会場で作品が発表され、いつもの街並みに非日常を色濃く感じる芸術の秋となっていた。毎年参加者や参加エリアが増え、進化を続けているDESIGNART TOKYO。「転換」がテーマとなった今年を受け、来年のイベントもさらなる期待が寄せられている。

取材・執筆:石田織座(JDN)