まずは、数々のデザイン性に優れた工業製品を見出してきた富山プロダクツから、2023年度に選定され、市場からの注目度が高い売れ筋アイテムをご紹介します。

■PESCALLY／助野株式会社

「PESCALLY（ぺスカリー）」は、しろえび漁という過酷な環境で働く漁師のみなさんと共同開発された高機能靴下。吸水速乾性に優れた和紙の糸を使用するなど、ムレや汗冷え、ズレ、足の負担といった悩みを解決する素材や編み方、設計が考え抜かれています。

PESCALLY

漁師だけでなく、釣り人や多種多様な環境下で働く人に合うレッグウェアです。富山県高岡市に開発・生産拠点を構え、2万種類以上のレッグウェアや関連アイテムを手がける助野株式会社が企画・製造をおこなっています。

■どんぐりん／有限会社四津川製作所

どんぐりの形をした小さくて可愛い“おりん”の「どんぐりん」。木製の蓋をつまんで持ち上げると現れる振り子で鳴らす斬新な仕組みと、小さくてもゆらぎのある澄んだ音色が特徴です。

どんぐりん

おりんは、もともと読経の際に音を鳴らす仏具の一種。「どんぐりん」は高岡鋳物発祥の地、高岡市金屋町で代々続く美術銅器製造元の有限会社四津川製作所が展開する、癒しと祈りのインテリアブランド「空穏 KUON」の商品です。

■9°／シロウマサイエンス株式会社

「9°（クド）」は、耐熱温度が−20℃から220℃までと幅広く、調理、食事、保存の3つの機能をあわせ持っています。電子レンジ調理が得意で、そのまま食卓に出すことができ、食洗機や食器乾燥機にも対応。収納性や持った時の感触など、試作をかさねて最後に到達したフォルムがブランド名の由来です。

9°

使い捨てにされることが多い樹脂製品を、日本の風習である「三々九度」のように9°（クド）を永く愛着をもって使ってほしいという想いもこの名前に込められています。製造を担当するのは、食品、医薬品等の幅広い分野で画期的なプラスチック製品を開発する富山県入善町のシロウマサイエンス株式会社です。

■デザイン性に優れた工業製品が生まれる背景

2023年度は、先に紹介した商品を含む10社15点が選定された「富山プロダクツ」。20年以上かけてこれまで400点以上の優れた製品が見出されてきました。その中には国内外のデザインアワードでも高い評価を得るものも数多くあります。いったいなぜ、富山からデザイン性の高い工業製品が多く生まれるのでしょうか？

その背景にあるのは、加賀藩の奨励により400年以上の歴史を持つ、金工・漆工をはじめとする、和紙、木彫、陶芸などの伝統産業や、富山の薬売りとして有名な薬種商から発展した医薬品産業とその財力を生かした金融業の基盤。

さらには立山連峰などまわりを囲む山々からの豊かな水資源とそれによる安定・低廉な電力が支える日本海側屈指のものづくり産業にあります。豊かであると同時に厳しい自然の中で培われた、実直な職人気質が、信頼性と質の高い製品を生み出しています。

そして、進取の気性（自ら進んで物事を進めること）に富んだ富山の人々は、気鋭のデザイナーたちとの協働によって現代のライフスタイルに合った意匠や機能を持つ商品開発にいち早く取り組んできました。そのひとつに、デザインウエーブ開催委員会（富山県、富山市、高岡市）が主催する「富山デザインコンペティション」があります。これらの要素が融合し、質の高い工業製品が富山から次々と生み出されているのです。

「富山プロダクツ」公式Webサイトでは、これまで選定された多様な製品や選定企業について紹介しています。富山生まれの優れた製品から、これからのものづくりの可能性を感じてみてはいかがでしょうか？

【富山プロダクツ選定事業】

富山県内で企画または製造されている性能、品質およびデザイン性に優れた工業製品を「富山プロダクツ」として認定。富山ブランドとして国内外に情報発信し、企業の販売開拓を支援しています。

選定事業は2002年にスタートし、これまでにさまざまな工業製品が選定されてきました。選定された製品を生産・販売する企業には、広報や各種展示会への出品について県が支援をおこなうほか、共通シンボルマークの使用も認められます。そして、県が随意契約で購入できる「トライアル発注制度」の応募対象となります。さまざまな分野でものづくりに取り組む県内企業を対象に募集をおこなっています。

【富山県総合デザインセンター】

1999年に創設した、デザインを専門とする公設試験研究機関。デザイン性に優れた製品の共同開発や販路開拓の支援、デザイン人材の育成などに取り組んでいます。商品化を目的とした「富山デザインコンペティション」のほか、さまざまな支援活動を実施。

富山県総合デザインセンター外観

また、近年は激変する市場環境に対応すべく、デザイン交流拠点「クリエイティブ・デザイン・ハブ」、バーチャルリアリティのコンテンツ制作システムや大型スクリーンを使ったシミュレーションの環境を備えた「バーチャルスタジオ」を整備し、先端産業とデザインの融合や異業種連携による新商品開発・新事業創出をめざしています。