2025年グッドデザイン大賞は、仮設住宅「DLT木造仮設住宅」に決定

公益財団法人日本デザイン振興会が主催する、2025年度グッドデザイン賞の大賞が発表された。受賞したのは、坂茂建築設計+株式会社家元+株式会社長谷川萬治商店の「DLT木造仮設住宅」。
2025年度は選出方法が前年と異なり、全20カテゴリーより上位5件をベスト100に選出、そのなかからカテゴリーごと1件に金賞が授与され、さらに金賞のなかから最も優れたデザインと認められた1件に最高賞である「グッドデザイン大賞」が贈られた。
審査委員長はクリエイティブディレクターの齋藤精一、副審査委員長はプロダクトデザイナーの倉本仁と建築家の永山祐子が務めた。募集テーマは「はじめの一歩から ひろがるデザイン」で、審査対象5,225件のなかから1,619件が受賞した。
大賞の「DLT木造仮設住宅」は、2024年の能登半島地震の際に建設された応急仮設住宅。並べた木材に穴を開け、木ダボ(棒状のパーツ)を差し込むことで組み上げる木質素材の「DLT(Dowel Laminated Timber)」を用い、約3ヶ月という短期間で建設が可能だ。シンプルな工法の仮設住宅でありながら、恒久的に利用可能な設計となっている。審査委員長の齋藤は大賞について以下のようにコメントした。
「坂茂さんは、阪神・淡路大震災のときから被災地支援の活動を続けられている。(中略)いろいろな工法があるなかで、地域の人たちでもつくることができる工法を先立って研究開発され、今回の能登半島地震で活かされた。(中略)坂さんが30年前にはじめの一歩を踏み出したものが世の中から必要とされ、時代に合わせながら、地域で困っている方々を助けている。そのことに非常に感銘を受けるとともに、グッドデザインというもの自体が、時系列も含めてデザインを見ていくべきではないかと考えた」

左から、公益財団法人日本デザイン振興会 理事長 深野弘行、審査委員長 齋藤精一、受賞者の株式会社家元 代表取締役社長 羽田和政・坂茂建築設計 坂茂・株式会社長谷川萬治商店 代表取締役執行役員社長 長谷川泰治、副審査委員長 永山祐子・倉本仁
受賞した坂茂建築設計の坂茂は、「DLTはスイスから輸入した工法。東日本大震災のあと、新しい仮設住宅として使えるように開発を続けていて、今回の能登半島地震で対応することができた。(中略)今後は復興住宅に取り組みます。美しい能登瓦や住宅に使われていた木材がごみになってしまう前に拾い集めて、これらを使った復興住宅をつくります」と、今後の活動についても語った。
総評のなかで齋藤は、DLTの木質素材が2020年のグッドデザイン賞を受賞していたことや、今年金賞を受賞したプロジェクト「水都・三島を再生 都市と農村を結ぶ水の道『ホタルが舞い、水中花が咲く清流・源兵衛川 ~三島の宝が世界の宝に!世界かんがい施設遺産~』」が30年以上前にスタートした取り組みであることにも触れ、「“長い時間のなかで生まれてきたデザイン、日々リニューアルされてきたデザイン”というのが今年のグッドデザイン賞の特徴であり、いまのデザインのひとつの特徴」と評した。