書籍や印刷物などの紙の積層を「彫る」、アーティスト・デュオ「Nerhol」の個展が恵比寿のPOSTで開催
書籍や印刷物といった紙の積層を「彫る」ことで美術作品へと変容させる彫刻家の飯田竜太と、アイディアを「練る」ことで二次元的表現における視覚伝達の新たな可能性を提案するグラフィックデザイナーの田中義久より構成される「Nerhol(ネルホル)」。
現在、「Nerhol」にとって日本の美術館での初個展となる「Promenade(プロムナード)」が金沢21世紀美術館で開催されている。伐採処分された街路樹をモチーフとした新作シリーズ「multiple – roadside tree」を発表。街路樹を薄く輪切りにしては撮影を繰り返してでき上がった写真を出力し、紙の束にしてから彫り込んだ作品だ。
像が印刷された写真の束は同一の素材でありながら、50通りの彫り込みを施すことによって、各々がユニークピースの彫刻作品へと変容します。それらを羅列することで、multiple(マルチプル=量産された美術作品)として成立するのだ。
同展のカタログには47点が収録。ユニークピースとなったマルチプルが図版としてもう一度印刷され、書籍の形を帯びて大量生産されていく。著しく消費される写真の積層が一点物の彫刻作品となって価値を帯び、その表面を再び写真に収めて今度は印刷物となって大量生産され、市場に流通する。ひとつの素材が繰り返し変容を遂げることで、その度に価値の転換が生じる。
恵比寿のPOSTで7月5日から7月18日まで開催される、「roadside tree – Printed Matter」では、同書を見開いた状態で並列させるインスタレーションが出現。同作のバリエーションを見比べることのできる唯一の機会となる。同一の紙の束からあらわれる多種多様な断面を見つめながら、彼らの示唆に富むアプローチを体感する。
http://post-books.info/news/exhibition-nerhol-roadside-tree-printed-matter