Shed Inc.の「個」が強い組織づくりとカルチャー(1)

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Shed Inc.の「個」が強い組織づくりとカルチャー(1)

メディアやコミュニケーションのかたちが多様化する中、デザイン制作会社がクライアントからの多種多様なオーダーに応える「いいデザイン」を導き出すためには、所属するクリエイターたちの能力を最大限に引き出す組織づくりが不可欠だ。橘友希さん率いるShed Inc.(以下、Shed)は、デザイナーとエンジニアだけで構成される職能特化型の制作会社として数々の企業のブランディングなどを手がけ、10年以上にわたってクリエイティブ業界を走り続けてきた。

近年は、さまざまな職能を持つクリエイターを集め、総合力で勝負するクリエイティブエージェンシーが多い中、いかにしてShedは結果を出し続ける少数精鋭のスペシャリスト集団となったのか。2回にわけてお届けする本企画の前編では、新卒採用に力を入れるShedの採用や組織に対する考え方を、代表取締役の橘さんにうかがった。

Webサイト制作からブランディングへ

ーーまずは、Shedを設立した経緯についてお聞かせください。

橘友希さん(以下、橘):私が仕事を始めた2000年代前半はFlashの全盛期だったのですが、美大や専門学校ではなく、大学の工学部出身だった私にとって、Flashはテクノロジーとクリエイティブの中間のような存在で、自分にフィットしたんですね。新卒でデザインとFlashが両方できる人材として制作会社でしばらく働き、2006年に自分と同じようなスキルを持つメンバーたちでShedを立ち上げました。

ーーすでに設立から10年以上が経っていますが、その間に仕事の内容に変化はありましたか?

橘:当初はWebサイトの制作がおもな仕事でしたが、最近はブランド全体に関わる仕事が多くなっています。もともと、広告という大きなくくりの中でWebサイトの制作を担うケースが多かったのですが、当時からWeb制作が大きなブランディングの一部であることを意識していました。幸いなことに我々は、外資系企業の案件を担当することが多く、それらを通してVIのガイドラインなどブランドのビジュアル管理に関する知見を蓄積できたことが現在に生かされています。

Shed Inc. 代表取締役 橘友希さん

Shed Inc. 代表取締役 橘友希さん

ブランディングは総合的なアウトプットが求められる仕事であるため、さまざまな知識が必要とされます。Shed設立当初からブランディングの仕事をしたかったのですが、Webからスタートしている我々に幅広い知識はなかったですし、軽はずみには手が出せない領域だと思っていました。そこから10年以上を経て、私個人にブランディングのメソッドやソリューションが蓄積されてきたので、それらの知見を社内のメンバーに共有することで、ようやくブランド全体のデザインができる会社になりつつあるのかなと感じています。

採用基準は、会社のカルチャーとの相性

ーー現在、Shedには何名のスタッフがいるのですか?

橘:役員を除いて6名のメンバーが在籍しています。私たち世代の特徴かもしれませんが、以前は、クオリティを保つためには自分で手を動かさないとダメだという職人的な考え方が強く、あまり採用には積極的ではありませんでした。ただ、時代とともに仕事の量やスピード感が増し、内容も多様化していく中でどうしても一つひとつの案件に対する注力の度合いが下がってしまうところがあり、リソースを増やしてチームをつくる必要性を感じるようになりました。ただ、あくまでも私がクオリティチェックできる範囲で仕事を進めたいという思いがあるので、今は社内をチーム分けする必要がない10人未満というのが理想的な規模感だと感じています。

Shed, Inc. のWebページ

Shed, Inc. のWebページ

ーー現在Shedでは新卒採用を重視されているとうかがいましたが、そのように至った経緯について教えてください。

橘:Shedでは、基本的に今は新卒か第二新卒しか採用していません。当初は中途採用から採用活動をはじめたんですが、軒並みうまくいかなかったんですね(笑)。当時は即戦力に入ってもらい、自分の仕事を助けてほしいと考えていたのですが、そういった人材は独立して自分の仕事をしていることがほとんどです。そこで考え方を改め、経験が少なくても筋が良い若手を採用しようと考えるようになり、新卒採用を始めることにしたんです。

ーー採用では、どんなところを大切にしていますか?

橘:いまの若い世代は総じて勤勉ですし、デジタルツールの発達によってスキルを習得する時間も昔ほど必要ではなくなり、早い人なら1、2年の訓練でプロと遜色がないレベルのスキルが身につけられます。そういう状況の中で大切になってくるのは、会社のカルチャーとのマッチングです。

デザインスキルの習得には一定の方法論や共通の指標が少なからずありますが、会社の考え方というのはさまざまで、正解がありません。つまり、すでにスキルも経験もある人材が我々の会社にマッチするというあまり高くない確率に時間やお金を投資するよりも、会社のカルチャーに合う若手を採用し、育成していく方が早いという結論に至ったんです。

ーーShedという会社のカルチャーについて詳しく聞かせてください。

橘:まさに採用基準に直結することなのですが、Shedでは、デザインが好きで毎日続ける覚悟があることを重視しています。デザインという仕事は実際にやり始めると泥臭く、地味な作業を継続していかなくてはいけません。Shedは、マネージャー1名を除けば、基本的にデザイナーとエンジニアしかいない会社です。つまり、手を動かしてつくることに注力している小さな会社なので、デザインそのものにモチベーションを持ち、特化していく意識がないと難しいところがあるんです。

それと同時に、デザイナーという職業に就くこと自体を目的にしている人は採用していません。デザイナーになることはスタート地点でしかないので、どうやってデザイナーとしてやっていくのかということよりも、デザインというものを使っていかに幸せになれるのかというところをゴールに設定できることが大切だと考えています。

ーー新卒の時点で自分の職業についてそこまで考えて判断するには、かなりの覚悟が必要になりそうですね。

橘:そうかもしれません。ただ、こうしたメンタリティの部分は、社会に出る前までにある程度かたちづくられているものだと考えています。逆に、仕事をしていくうちに、自分はこれで生きていくんだという意識が急に芽生えるようなことはあまりないと思っているからこそ、採用の時点での会社とのマッチングを重視しているとも言えます。また、採用時には、人のために何かをつくりたいと思えるか、自分に何かしらの「足りなさ」を感じているかという部分も見ています。アウトプットすることへのモチベーションは大切ですし、自分自身や日々の生活に何も不満がない人は、そもそもものをつくらないんじゃないかと思っているんです。