過去から未来、人々の思いとともに時を刻む“時計”を改めて考える。「RHYTHM時計デザインアワード」が目指すこと

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過去から未来、人々の思いとともに時を刻む“時計”を改めて考える。「RHYTHM時計デザインアワード」が目指すこと

「刻(とき)を彩り、暮らしを包むリズム」をブランドステートメントに掲げ、自社での一貫した企画・開発、製造技術などを強みに多くの時計を世に送り出してきたリズム時計工業株式会社(以下、リズム時計)。

2020年に創業70周年を迎える同社が、社名でもある「RHYTHMブランド」の歴史に新たな一歩を刻むためのアワード「RHYTHM時計デザインアワード2019」を開催する。募集内容はプロダクトと掛時計の文字盤デザインの2部門に分かれ、プロダクト部門の入賞作品は商品化を視野に入れた募集だ。創業以来はじめてとなるアワード開催にいたった経緯や思いを、主催者であるリズム時計マーケティング部の谷野修さんと、清水宏昭さんに伺った。

多くの時計を生み出してきた会社がはじめる、新たなアワード

――リズム時計ではどのような製品をつくっているのでしょうか?

清水宏昭さん(以下、清水):弊社では低価格のものは980円から高価格のものは200万円まで、さまざまな世代に向けた幅広い価格帯の製品を展開しています。時計にもタイプがありますが、アナログとデジタルという表示方法の違いはもちろん、目覚まし時計や掛時計、そしてホールクロックと呼ばれる大型の置時計まで、総合クロックメーカーとして全ラインアップをそろえているのが特徴です。

清水宏昭

清水宏昭:リズム時計工業株式会社 時計事業部 マーケティング部 デザイン課長

谷野修さん(以下、谷野):もう一つ大きな特徴としては、弊社で製造する時計は自社で一貫して生産する「マニュファクチュール」というスタイルです。外装のデザインはもちろん、ムーブメント、からくり機構、電子プログラムの開発・製造まですべて自社で行っています。現在日本でマニュファクチュールと呼べるのは、クロックだと弊社を含めた2社だけです。

カッコー時計

カッコー時計

――今回が第1回となる「RHYTHM時計デザインアワード」ですが、立ち上げの理由や経緯を教えてください。

谷野:これまで弊社では、国内においては別ブランドのクロックを製造販売してきたことから、社名でもあるリズム(RHYTHM)が知られていない現状がありました。ただ、海外では長らくRHYTHMブランドとして販売していたので認知もされ、日本と海外でブランドの認知度に開きがありました。創業当時は国内でもRHYTHMブランドを謳っていたので、もう一度「リズム時計」という名前での認知度を復活させたいと考え、2014年から本格的に動き出した経緯があります。その中で、多くの人に認知していただくために企画したブランディングの一つが、「RHYTHM時計デザインアワード」です。

谷野修

谷野修:リズム時計工業株式会社 時計事業部 マーケティング部 次長 デザインディレクター

――「アワード」という形にしたのはなぜですか?

谷野:広告を打つなどブランディングの方法はさまざまだと思うのですが、デザイナーやクリエイターの方はオピニオンリーダーになりやすく、シャワー効果が見込めます。まずはデザインやものづくりに精通、または興味のある層にリズムブランドを認知してもらうことで、そこから徐々に広げていければと考えました。

「時刻を知る“だけ”」のプロダクトの未来を考える

――アワードのテーマである、「あしたのRHYTHM」と「あなたのRHYTHM」はどのように生まれたのでしょうか。

谷野:アワード自体はアナログムーブメントを使ったクロック全般をデザインする「プロダクト部門」と、掛時計の文字盤デザインをする「文字盤デザイン部門」の2つがあります。「あしたのRHYTHM」はプロダクト部門の、「あなたのRHYTHM」は文字盤デザイン部門のテーマになっています。

先行して考えたのが「あなたのRHYTHM」で、テーマを考える過程で、“とき”、弊社のブランド名である“リズム”などのキーワードが出てきました。自然の営みや日々の生活においても私たちの周りはリズムであふれていて、しかもその人なりのリズムがあリます。そこで、あなたならではのリズムを表現してほしいという意味を込めました。

「あしたのRHYTHM」は、時計の立ち位置やあり方を改めて振り返って考えてほしいと思ったので、「これからの時計ってどういうものですか?」という問いかけも込めています。というのも今の時代、時計というプロダクト自体が単体ではなかなか成立しにくい現状があります。スマートフォンや家電の時計機能はあくまでオマケですが、ほとんどの人がそれで事足りてしまっています。あえて「時刻を知る“だけ”」のプロダクトをどれだけ買ってもらえるのかというところで、時計にはどんな未来があるのだろうと。

――ちなみにプロダクトについて、アナログに絞って募集されているのはなぜですか?

谷野:液晶画面が一つあれば、例えば鳩時計をグラフィクスで再現することも可能ですし、何でもできてしまいます。そうなるとプロダクトという部分での深掘りがあまりできないことと、デジタルだとモノとしての価値がなかなか伝わりづらいと考えました。アイデア重視でなんでもあり=絵に描いた餅では終わらせたくないので、ちゃんと製品として成立するアイデアを募集したかったんです。最初から商品化を前提にしているのもそのためです。さらに、アナログならマニュファクチュールという弊社の強みも活かせるので、ある程度デザインの汎用性がきくというメリットもあります。

時計は時代や人々の思いとともに時を刻むもの

――2020年に創業70周年を迎えますが、改めて今後のビジョンを聞かせてください。

谷野:ビジョンというわけではありませんが、一度過去を振り返ってみてもいいと思っています。バブルの頃にからくり時計が一大ブームだったように、その時代ごとの価値観や人との関わり方によって製品も成立しているはず。改めて時代の流れを振り返ることで、今の時代に向けた新たな気づきが生まれ、それがこれからの新しい製品の見せ方のヒントに繋がるかもしれません。

また、最近は時計売り場に足を運ぶ人が減っていたり、「時計を買いたいけど、どこで売っているの?」という質問を受けることもあります。そういった意味ではユーザーと時計とのタッチポイントを増やす必要があるので、これまで弊社とあまり接点のなかったようなインテリアショップなどにもアプローチして、販路を拡大していければと考えています。

――そういった意味でもアワードが楽しみですね。最後に応募者に向けたメッセージをお願いします!

清水:「モノ」としてはもちろんですが、これからの時計のあり方という点では、「コト」という新しいアプローチでの提案があると嬉しいです。時刻を知らせるもの、時の流れを感じさせるのも、時計の捉え方は人それぞれだと思いますが、「時計ってこういう見方があるんだ?」という新たなテーマを待っています。どんなアイデアが届くのだろうと、今から楽しみです。

谷野:我々は時計の総合メーカーなので、機能を重視したうえで見やすく、使いやすく、多くの人に受け入れられるデザインをベースにしています。それはそれでいいのですが、今後を考えるとまた違ったアプローチが必要になるので、既視感のない、ハッとするような切り口のアイデアが出てくるといいですね。時計は過去、現在、未来を繋ぎ、人々の思いとともに時を刻むもの。感情移入しやすいプロダクトである反面、クロックはウォッチと違い人や場、空間との関係性などさまざまな要素が絡んできます。その点難しさもありますが、ぜひ楽しみながらデザインしてもらえればと思います。

今回、プロダクト部門の審査員には、デザインジャーナリストの川上典李子さん、家具デザイナーの小泉誠さん、建築家の鈴野浩一さんの3名が選ばれた。以下、審査にあたってのコメントを一部紹介する。

(左)川上典李子(中)小泉誠(右)鈴野浩一

(左)川上典李子(中)小泉誠(右)鈴野浩一

審査員コメント(RHYTHM時計デザインアワード2019 公式サイトより抜粋)

デザインジャーナリスト 川上典李子さん
太陽がつくる影の変化で時の経過を知り、星の位置によって時間や季節の移り変わりを捉える。時間を把握し、伝え、記録し、考察することで私たちの文化は大きく発展してきました。こうした歴史を振り返るたび、時計が生活の骨格となる重要な存在であることに気付かされます。本アワードは、現代における時間の意味を改めて考え、空間において時の経過を示すデザインの可能性を探る興味深い内容です。

家具デザイナー 小泉誠さん(武蔵野美術大学空間演出デザイン学科教授)
子供の頃は振り子時計が時を刻み、長針が真上にくると「ボーン、ボーン」と時を告げる。時を刻む音が日常となり、情緒的な気配をつくっていた。リズム時計工業は、長らく振り子時計や鳩時計をつくり続け、国産でムーブメントを量産する日本で唯一のメーカー。今回のコンペでは、単に美しいプロダクトを形づくるのではなく、日本の技術と心意気を活かし、空間に時を奏でる情緒的なデザインが集まることを期待しています。

建築家 鈴野浩一さん(トラフ建築設計事務所)
忘れてしまっていることを気づかせてくれるような時計があっても良いし、「大きな古時計」の歌のように、その子の成長とともに時を刻んでいけるような時計があるかもしれない。または、家のシンボルとして受け継いでいきたくなるような時計、次の1時間後が待ち遠しくなるような、生活を豊かに楽しくするカラクリ時計、それらの時計のデザインとはいったいどんなものだろうか?広いテーマ設定なので、何かしらの問いを各自で設定して、デザインに取り組んでほしい。

創業70年というと、一般的な企業としては歴史を感じるが、世界的な時計メーカーを考えるとまだまだ若手だと話していた谷野さんと清水さん。本アワードをおこなうことによって、リズム時計の新たな定番となるプロダクトひいては、時計業界自体に浸透するような新しい時計が生まれるかもしれない。立ち止まって考えることが少ない時計や時について、あらためて考えてみてはいかがだろうか?

取材・文:開洋美 撮影:中川良輔 編集:石田織座(JDN)

RHYTHM時計デザインアワード2019

■プロダクト部門

【テーマ】あしたのRHYTHM(リズム)

【募集内容】テーマにそった未発表でオリジナルのクロック(人との関係性、場との関係性を紡ぐ、時計というプロダクトの意味・価値を向上させる、または再定義するようなクロックを提案ください)

【募集期間】
エントリー期間:2019年4月1日(月)~6月18日(火)正午(日本時間)
作品応募期間:2019年4月1日(月)~7月18日(木)正午(日本時間)

【賞金】
●大賞(1名) 賞金100万円、商品化を検討
●優秀賞(2名) 賞金30万円、商品化を検討
●入選(4名) 賞金10万円、商品化を検討

■文字盤デザイン部門

【テーマ】あなたのRHYTHM(リズム)

【募集内容】テーマにそった掛時計の文字盤デザイン

【募集期間】
応募期間:2019年4月1日(月)~7月18日(木)正午

【賞金】
●RHYTHM大賞(1名) 賞金10万円、受賞作品の掛時計
●RHYTHM賞(3名) 賞金5万円、受賞作品の掛時計
●入選(5名)入選作品の掛時計

https://compe.japandesign.ne.jp/rhythm-award/