リブランディングで従来のイメージを刷新
――主軸であるゲームと並行して、「リアルな体験」の提供にも力を入れているのがアカツキの特徴でもありますが、今回なぜ『そとあそび』をリニューアルされたのでしょう。
鈴木諭さん(以下、鈴木):リニューアルした『そとあそび』をリリースしたのは今年の6月ですが、リニューアル自体の話が出たのは昨年末でした。なぜリニューアルしたかというと、チーム全員でいま一度、自分たちがどのような体験を届けるのが理想かを考えたところ、自分たちが理想としている体験とそれまでに打ち出していたビジュアルを含めたメッセージとの間のギャップを埋めることで、より多くの人に届けられると感じたからです。従来の『そとあそび』はファミリー向けのようなイメージでしたが、僕らが思い描いていたのは、もっと幅広い層のユーザーに自然と遊ぶ体験を届けることでした。
村上一帆さん(以下、村上):既存サービスの『そとあそび』に、アカツキが共感して一緒に運営していくことになりました。その中で、従来の『そとあそび』のサービスに、アカツキのクリエイティブの強みでもあるブランディングデザインの力を合わせ、「思いをどう届けるか?」ということに対してのビジュアルやイメージを再定義しながらリニューアルを行いました。
鈴木:具体的に行ったことは、①ロゴ・VIなどのブランド再設計、②WebサイトのビジュアルおよびUIUXの改善、③アプリリニューアル、④オウンドメディア「SOTOASOBI LIFE」のリニューアルです。僕はCIやVIなどのブランド設計をおもに担当しましたが、それぞれを担当するデザイナーが戦略を理解した上でデザインにあたれたので、「点」ではくチーム全員が全体観を捉えた「面」でのリニューアルができたと思っています。アカツキのような自社サービスのデザイナーにとっての最大のメリットは、ワンストップでプロダクトの上流から運用まで長期的に深く関われることです。
村上:単発でロゴを直す、Webサイトを直すくらいならできると思いますが、ここまで大きな「リブランディング」って、外にいたらそうそう関われないと思うんです。運用まで含めた全体のストーリーとしてのブランディング設計をベースに、その後の反応とともに改善しながら届け続けられるところがブランディングの本質だと、僕らも改めて気付けたことは大きかったですね。
――いちばん最初に行ったことはなんだったのですか?
鈴木:ロゴマークを含め、ブランド全体のトンマナを整えました。新しいロゴのモチーフにしたのは、創業者が『そとあそび』をつくるきっかけになったグランドティトンという山のシルエットなのですが、それがWebサイトや印刷物に落とし込まれた時のイメージ、店舗だったら? など、イメージボードをつくって検討を重ねました。ここはすごく時間を割いたところでもあります。これにより、メンバーでロゴを決める際にも「どのロゴにするか」だけではなく、「どういう世界観をつくっていきたいか」をイメージして決めることができました。
ユーザーとの対話を意識したより使いやすいデザインに
――UIやアプリなど、CIやVI以外の中身の部分は具体的にどのようにリニューアルされたのでしょうか。
大幡佳代さん(以下、大幡):私が担当したのは『そとあそび』のWebサイトのUI改善です。従来のWebサイトの課題を洗い出し、改善策を考えデザインに落とし込んでいきました。
――どのような改善から始めましたか?
大幡:最初はサイトのUI改善をする際の定番と言われるような「お早めにご予約下さい」「000名の方が予約されました」といった、予約を促す手法でABテスト検証してみましたが、『そとあそび』のユーザーの心にはなかなか響きませんでした。その後、さまざまな切り口でテストを繰り返していくと、写真や動画を多く見せることが効果的であることが見えてきました。サイトに訪れたユーザーがアクティビティに関する興味を強めたり、イメージを膨らませワクワクしてもらう。その結果、楽しそう!やってみたい!と感じて予約をするという、ユーザーの心に寄り添った流れがこれまでのサイトで弱かった点だとわかりました。
『そとあそび』は、専任の「そとあそびナビゲーター」が現地で取材をしているため、たくさんの写真や動画をユーザーの方々にご覧いただけます。それは『そとあそび』の強みであり、それを活用することで『そとあそび』だからこそ提供できる価値をしっかりと届けることも大切だと感じました。また、改善を進めていく中で、ピンポイントに直すのではなく、全体の流れやストーリーを意識することも大切だとわかりました。サイトに来られたユーザーがどのような情報を求めているのかを把握し、それを適切なタイミングで提供すること。それが適切でないと離脱につながってしまいます。そのため、全体を俯瞰したり、一点に集中して細かいUI調節をしたり、臨機応変に視野・視点を変える必要がありました。
――アプリのリニューアルではなにをされましたか?また、どこに重きを置かれたのでしょう。
岡崎友香さん(以下、岡崎):『そとあそび』のアプリももともとあったのですが、今回のリブランディングにともない、このタイミングに合わせて構成から再考し、それを踏まえたUI設計やアニメーションの制作などを行いました。
Webの場合は、知りたい情報を徹底的に調べたい人や、検索流入で訪れる人など、それぞれのインサイトを踏まえた設計が重要ですが、アプリの場合は何らかの形で『そとあそび』を知った上でダウンロードの意思決定を行ったユーザー(=興味を示している人)が利用するので、Webと比較して「そとあそびで体験を予約したい」と、明確な意思を持っているユーザーが多いと考えています。また、デバイスがスマホですので、コースの探しやすさや予約のしやすさは外せないポイントです。情報をよりシンプルにすることで、行ってみたい体験がサクサク見つけられるという点に重きを置きました。ついあれもこれもとなりがちですが、それは本当にユーザーにとって必要なことか、ユーザーに届けたい・届けるべき価値は何かを一から考え直しました。
――リニューアルにともなう『そとあそび』らしさをうまく表現するために、今回改めて足した部分や引いた部分は?
岡崎:デザイン的な部分で力を注いだ点は、アニメーションです。Webよりもアプリの方がより豊かな表現をするケースも多いので、『そとあそび』のアプリでもユニークなものをつくりたいという思いで考えました。新しいロゴには大自然の持つエネルギーも表現されているので、それをアニメーションで表現してみたいなと。エネルギーがたまって発散されていく様子をスピード感も含めて設計してみました。一方で、サクサク体験が見つかるという点に重きを置いているので、文章量は大幅にカットしていたりします。
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