美術は語られる-評論家・中原佑介の眼-

美術館のコレクションはどのような基準で収蔵され、展示構成されるのだろうか。その基準こそ各美術館のポリシーでありアイデンティティだが、同時代および同じ領域における共通の基盤というべきものも存在している。その基盤はジャーナリズム、マーケット、研究者そして国内外の美術館活動など様々な要因が密接に関わりあいながら形成されていく美術史観だといえるだろう。
本展は、ひとりの美術評論家の仕事から、おもに1960年~70年代の美術がどのように日本で紹介され、評価されてきたかを、DIC川村記念美術館所蔵作家を中心に振り返ろうとする試みである。
中原佑介(1931-2011)は、戦後日本を代表する美術評論家のひとり。理論物理学を学んだ京都大学理学部在学中に『美術批評』誌の評論募集(1955)で一席に選ばれて評論活動を開始した。前衛作家を支持し、理論的な評論を多数手がけて長く第一線で活躍しながら、「不在の部屋展」(1963)、「人間と物質展」(1970)など展覧会企画においても功績を残した。
中原は国内外の多くの前衛作家たちと交流し、彼らに関する評論文を書いた。美術評論家は画廊などの展覧会リーフレット、雑誌記事、画集、美術館の展覧会カタログ、さらには自身の著作など、さまざまなメディアに文章を発表する。それらは時を重ねながら社会性を強め、作家の評価をかたち作る要因となる。作り手が制作を重ね、自他ともに認める地歩を築く過程に、評論家の仕事もあると言えるのではないだろうか。
DIC川村記念美術館コレクションには、中原と交友をもった作家、評された作家たちの作品が数多く含まれている。本展では当館所蔵の現代美術作品を中原の視点からとらえ直し、当時の出版物等の一部を紹介するとともに、彼の元に残された小品のコレクションから約40点を選んで、共に展覧する。
【関連イベント】
●シンポジウム
日時:3月6日(日)13:30~16:00
パネリスト:中村宏(画家)、福住廉(美術評論家)、渡部葉子(慶応義塾アートセンター教授)
※詳細が決まり次第、ホームページに掲載
●学芸員によるギャラリートーク
日時:2月11日(木・祝)、3月5日(土)、3月12日(土) 14:00~15:00
※入館料のみ、予約不要(14:00エントランスホール集合)
定員:60名
●ガイドツアー
日時:毎日14:00~
※シンポジウム、ギャラリートーク開催日を除く
開催期間 |
2016/02/11(木)~2016/04/10(日) ※イベント会期は終了しました
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時間 | 9:30~17:00(入館は閉館30分前まで) |
休館日 | 月曜日(ただし、3/21は開館)、3/22 |
入場料 | 一般1,000円/学生・65歳以上800円/小中学生・高校生600円(2/14はDIC株式会社の創業記念日につき入館無料) |
会場 |
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会場URL | http://kawamura-museum.dic.co.jp/ |