編集部の「そういえば、」―家具ブランド「TECTA」の魅力

編集部の「そういえば、」―家具ブランド「TECTA」の魅力

そういえば、現在アクタス・丸の内店で開催されている企画展「TECTA MIT MARUNOUCHI バウハウスとテクタの名作家具展」にうかがいました。

同企画展は、バウハウスに魅了され、いまもなおバウハウスの思想を受け継ぐドイツのファニチャーブランド「TECTA(テクタ)」の軌跡を知ることができるイベントです。

「TECTA MIT MARUNOUCHI バウハウスとテクタの名作家具展」

バウハウスで生まれた家具に並々ならぬ興味を抱き、西ドイツに亡命し、TECTAを設立したアクセル・ブロッホイザー。彼は、バウハウスオリジナルの家具を、デザイナー自身や親族を辿り権利を獲得し、数々の家具を復刻してきました。ちなみに、バウハウス財団から公認を受けたオリジナル家具を最も多く製造しているのもTECTAです。

会場では、TECTAが製造している、バウハウスを代表するデザイナーのヴァルター・グロピウスやミース・ファン・デル・ローエ、マルセル・ブロイヤーの名作コレクションが一堂に展示されており、バウハウスの家具好きにはたまらない空間が広がっていました。

会場に並ぶ数々の名作コレクション 「TECTA MIT MARUNOUCHI バウハウスとテクタの名作家具展」

会場に並ぶ数々の名作コレクション

特に注目したいのが、フランスのデザイナー、ジャン・プルーヴェの1枚のスケッチから生まれたイージーチェア。ジャン・プルーヴェが1930年代に描いたそのスケッチは、長い間実現することができずにいました。50年経った1980年代にアクセル・ブロッホイザーがジャン・プルーヴェについて研究し、彼がつくりたかったのはこういうことではないか?と制作。

その後、フランス・パリで開催されていたジャン・プルーヴェの展示会に、ドイツからパリまでアポなしで突撃。「あなたがつくりたかったのはこれではないか」と、ジャン・プルーヴェに実際に座ってもらったところから交流がはじまり、後に「D80」として製品化されました。展示では、「D80」の実物と、ジャン・プルーヴェのスケッチや彼との交流を示す手紙など貴重な資料がお披露目となっています。

また、ジャン・プルーヴェは、バウハウスから誕生したカンティレバーチェア(金属パイプを折り曲げてつくる片持ち構造の椅子)の課題であったパイプを曲げたフレーム部分の強度の問題をTECTAとともに解決するなど、現在TECTAが製造するオリジナルカンティレバーチェアに多大なる影響を与えています。

1枚のスケッチから生まれたイージーチェア「D80」の現物 「TECTA MIT MARUNOUCHI バウハウスとテクタの名作家具展」

1枚のスケッチから生まれたイージーチェア「D80」の現物

そして、TECTAを知る上で欠かせないのが“猫”の存在です。同社のマスコットは猫をモチーフにした「TECTA CAT(テクタキャット)」であり、猫は会社の歴史の中でとても重要な存在とアクセル・ブロッホイザーは語っています。

同企画展オリジナルグッズでも、TECTA CATをモチーフにしたグッズや、アクセル・ブロッホイザーの妻が描いた猫とTECTAの家具コレクションをイラストにしたオリジナルステッカーなど、猫が大きな存在であることが伝わる商品が展開されています。

企画展オリジナルグッズ TECTA MIT MARUNOUCHI バウハウスとテクタの名作家具展

企画展オリジナルグッズ

なお、6月30日まで国立新美術館で開催されている「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」でも、TECTAの特設ブースが出展されています。20世紀にはじまった住宅をめぐる革新的な試みを多角的に検証する国立新美術館の展示とあわせて、TECTAの魅力を深めてみていはいかがでしょうか。

TECTA MIT MARUNOUCHI バウハウスとテクタの名作家具展
https://www.actus-interior.com/news/tecta2025/

リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s
https://living-modernity.jp/

(岩渕真理子)