前回紹介したマスキングテープ「mt」のテープには、どんな紙が使われているかご存じですか?使われているのは、意外にも和紙なんです。繊維が細かくからまっている和紙は丈夫で切れにくいため、マスキングテープにも使われているんですね。
今回は、そんな和紙を使った作品を紹介します。平和紙業のギャラリーで開催された「紙の時間 土佐和紙を手がける3社の和紙表現」で展示されていたのがこちらの作品。

厚さ0.02mmという世界で最も薄い和紙に、紙活字で桜の花びらが印刷されています。触ったら破けてしまいそうな薄い紙なので、通常の印刷機に通すことができず、紙でできた活字にインキをつけて印刷したそうです。


写真提供:Paper Parade Printing
デザインと印刷を担当したのは、Paper Parade Printing。和紙を厚紙の枠ではさんで持ち運びできる形状にし、それを何層にも重ねた美しいインスタレーションでした。
こちらの極薄和紙をつくっているのは、高知県の「ひだか和紙」。これだけの薄さの紙を機械で抄紙(紙を漉くこと)できるのはかなりすごい技術で、他社ではできないそう。同社はもともと土佐典具帳紙(タイプライター用謄写版原紙、貴金属や宝石などの包装紙、懐紙などに使われる極薄和紙)の手漉きからスタートし、タイプライター用原紙を海外に輸出していたとか。1969年には機械漉きができるようになり、量産が可能に。現在では、傷んだ絵画、書物、仏像などの文化財修復に欠かせない紙として国内外で広く使われているそうです。
こちらは、ひだか和紙の社長さんの名刺。樹脂版で文字の版をつくり、1枚ずつ手で印刷したそう。紙の向こう側が見えるほど薄い!


ひだか和紙がある土佐では、繊維の長いコウゾ(和紙の原料となる植物の一種)が収穫できるため、薄い和紙が漉けるのだそうです。一方、越前のコウゾは繊維が短いため、しっかりとした厚めの和紙になるのだとか。その土地でとれる原材料の違いによって、和紙の特性も違ってくるんですね。
和紙の日本三大産地の1つである高知の土佐和紙。以前、小国和紙(新潟県長岡市)でつくられた作品「kuu」をこの連載で紹介しましたが、産地によってかなり紙質が変わることを実感しました。奥深い和紙の世界をさらに知りたくなるような作品でした。
紙の時間 土佐和紙を手がける3社の和紙表現
http://www.heiwapaper.co.jp/shop/2018/03/3.html
Paper Parade Printing
http://paperparade.tokyo/
ひだか和紙
http://www.hidakawashi.com/