3つを掛け合わせることで生まれるもの

3つを掛け合わせることで生まれるもの

はじめまして、面白法人カヤックのWebディレクター天野清之です。

世界的に驚かせるような高い技術でなくても、ちょっとした技術の掛け算が新しい作品を産む。演出を覚えれば普通の技術も違った表現に見えてくる、そう考えて日々制作に取り組んでいます。

私はカヤックに転職して7年目になります。WebディレクターがWebサイトの仕事をするのは普通のことですが、最近ではそれ以外の仕事もたくさんお声がけいだいています。Web技術を他の分野に取り込んだり、その逆で他の分野から学んだり身につけたりしたことを本業のWebサイト制作に取り入れたり、双方向に循環させることで新しい発見も多くあります。そうした経験や発見について、今後お話をさせていただこうと思います。

自分の分野と他の分野を組み合わせて面白いものをつくることが好きで、個人制作活動で洋服と自分の知識を組みわせて何かつくってみたいなと思いまして、2014年11月に一着洋服をつくってみたんです。

作品名は『絶対領域拡張計画「光るスカート」』と言い、スカートの内側にLEDを入れて“絶対領域(スカートとニーハイの間にある太もも)”を光らせるスカートを開発してみました。

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▼絶対領域拡張計画「光るスカート」
http://hikaruskirt.tumblr.com/

公開して2日後には国内のテレビ・Webメディアにたくさん取り上げていただき、最終的には中国の「Weibo(微博・ウェイボー)」で話題になったことをきっかけに、中国のファッションイベントで登壇までさせていただきました。使っている技術自体はそれほど難しいものではありません。ちょっとした半田コテと、googleで調べたら出てくるような単純なプログラムです。モック段階では自分で衣装に縫い付けたりしていましたが、既存技術の組み合わせで先進的な表現になったと思います。

技術を掛け算する

単純な技術を複数組み合わせることで新しい表現ができてしまう、というのがこの“技術を掛け算する”考え方です。例えば、こんな感じで数字に置き換えてみましょう。世界的なレベルを100点、並の技術を5点と設定してみた時に、数字の差がありすぎて太刀打ちできません。1つの技術を高めるのには時間だけでなくその分野に長けた才能が必要です。

そこで技術を“掛け合わせる”ことがよく行われると思います。でも、5点を2つ掛けても100点に数字で上回れないですよね?ただ並の技術を2つ掛け合わせるだけじゃダメなんです!そこで私は3つ掛け合わせることをします。

5点の技術×5点の技術×5点の技術。このように3つ掛け合わせると125点になります。理屈のある式ではありませんが(笑)、並の技術を3つを掛け算すれば驚かせるものがつくれる、というひとつの考え方です。

アイデアというスパイス

アイデアは面白いものをつくるための種。大切にしなければならないものです。そして、生まれ持った才能ではなく、誰もが持っている技術だと思います。アイデアは経験から身につくと私は考えています。そして、ここで言いたい経験とはすべてを指していて、学問だけではなく、スポーツや旅行、遊びなど、自分が生きていくなかでの経験すべてのことです。ボーッと部屋でノンビリしていることですら経験です。

技術とアイデアと興味を掛け合わせる

最初に話に触れた『絶対領域拡張計画「光るスカート」』は、自分にとっては遊びから生まれた作品です。近年のメイカーブームがきっかけで私も何かつくってみたいと思っていました。ネットで調べて、すぐに秋葉原にある秋月電子さんへ足を運びました。インターネットが普及したことで情報は平等になりましたので、簡単なことなら調べればすぐに発見できます。思いついたらすぐに行動できる生産性の高い時代ですね。

さて、電子工作で自分なら何をつくる?と思った時に、洋服が好きだったので題材を洋服にしようと考えました。

メイカーブームから「電子工作」 × 洋服が好きなので「ファッション」

このままつくってしまうと、何かよく見かけるようなものになりそうなので、アイデアをスパイスとして取り入れようと考えました。つくろうとしているものが“LEDで光らせる服“だったので、それを逆にして“LEDを使ってるのに光らない服”にしたら面白いなーと思いました。提灯のように光が包まれていて、提灯のお洒落さがそのまま内包されるような服にしたら綺麗だと、イメージが思い浮かびました。

「電子工作」×「ファッション」=光る服
そこからさらに掛け合わせて……
「LEDで外側が光る服」×光らないようにする「アイデア」=「LEDで内側が光る服」

このように『絶対領域拡張計画「光るスカート」』は、3つの掛け合わせによって生まれた作品です。最初にも述べたように、2つの掛け合わせではなく、3つを掛け合わせることで新しいものをつくることができる、そう考えて日々制作に取り組んでいます。

天野清之

天野清之(面白法人カヤック)

面白法人カヤック 企画部・技術部 クリエイティブ・ディレクター/テクニカルディレクター。「24時間遊び24時間働く」を体現するクリエイター。特にカルチャー系に強く、MVからイベント企画まで、手掛ける仕事は多岐にわたる。笑いすぎると何を言っているのかわからなくなってしまう。
https://www.kayac.com/