WEB技術の進化が導き出した、iOS10以降の新しい映像表現

WEB技術の進化が導き出した、iOS10以降の新しい映像表現

世界的に驚かせるような高い技術じゃなくても、アイデアや技術の掛け算が新しい作品を産み出していく、面白法人カヤックの天野です。

今回で第2回目です。再び映像が注目を集めていますね。インターネットの技術も発達して、いつでもどこでも映像を見ることができるようになった時代、スマートフォンさえあれば、誰だってすぐにでも映像監督ができる上に、自らが発信する側の放送局にだってなれる。何にでもなれて、何でも挑戦できる時代だからこそ、新しい難しさが私たちクリエイターを悩ませているように思います。

インタラクティブ性が求められる、iOS10以降の表現

さて、今回はWEBと映像についての可能性の話です。映画「ぽっぴんQ」の主題歌を担当している、QUESTYのミュージックビデオの制作にTHINKRの針谷(建二郎)さんからお声がけいただき、テクニカル・ディレクターとして参加しました。

他分野の方との話し合いやモノ作りは本当に発見があるし、新しいチャレンジもできるので面白いです。そうした時に私は、どのように他分野の方とコミュニケーションをとり、自分の得意領域(守備範囲)の中で、新しいものをつくり出せるか考えています。

スワイプすることで動画の色やカメラアングルをVJ感覚で変更できる、最新型ミュージックビデオ

スワイプすることで動画の色やカメラアングルをVJ感覚で変更できる、最新型ミュージックビデオ

▼Questyデビュー曲「FANTASY」特設サイト(スマートフォン専用)
http://questy-fantasy.jp/
※iOS10以上/AndroidOS

最初に針谷さんとは、ホワイトボードで絵を描きながらブレストを進めました。普通のミュージックビデオをつくるのでは、僕がディレクターとして参加する意味がないので、ウェブ・ブラウザをベースにしたインタラクティブな映像コンテンツをつくろうという話になり、スマホに特化したミュージックビデオにすることに重点を置いて、最終的に”スワイプできる”部分に着目し演出を考えてきました。

打ち合わせ時は、ユーザーが具体的にわかりやすいアクションをしてもらう狙いとしてボタンクリックで変化が良いかもという話をしていました

打ち合わせ時は、ユーザーが具体的にわかりやすいアクションをしてもらう狙いとしてボタンクリックで変化が良いかもという話をしていました

ウェブ・ブラウザベースで踏み切ったもう1つの理由は、iOS10以降からブラウザの中で動画を再生することができる機能が入りました。これは、今後動画がインタラクティブ性を求められる事を示しています。いままでのiOSのブラウザでは、動画が再生される時に動画プレイヤーが起動してしまうため、視聴することしかできませんでした。つまり新しいチャレンジのチャンスです。

必要なのは、完成をイメージする知識と役割分担の意識

映像ディレクターは、EPOCHの本郷伸明監督。監督とは初めてのお仕事でしたので、企画意図と実装内容を説明してからコンテ、撮影へと進んでいただくことが必要です。レイヤー構造で構成する事などを伝え撮影に入っていただきました。

次に撮影した映像を編集する際に、打ち合わせをしながら以下のような手順で編集していこうと方針を決めました。

このように、アイデアを共有しながら制作を進めていく時に大切だと思うのは、役割分担を意識することだと思っています。一緒に制作を進める方が仕事をしやすいよう、自分が知らないことを勉強しつつも、無駄に領域へ侵入せず自分の役割をキッチリこなすことだと思います。

情報や技術が飛躍的に進歩し続ける現在、ディレクターに求められているのは完成をイメージできる知識だと考えています。特に他分野の方と一緒に制作する時は、相手の仕事を理解した上で、全体像を把握して完成へ向かっていくことが重要です。

自分の得意な分野でセンスを磨き、制作していく上で必要ないくつものアイデアをつなげて、完成をイメージしていく。それが私の目指すディレクターのあり方です。

天野清之

天野清之(面白法人カヤック)

面白法人カヤック 企画部・技術部 クリエイティブ・ディレクター/テクニカルディレクター。「24時間遊び24時間働く」を体現するクリエイター。特にカルチャー系に強く、MVからイベント企画まで、手掛ける仕事は多岐にわたる。笑いすぎると何を言っているのかわからなくなってしまう。
https://www.kayac.com/