内藤廣設計図面集

初期の代表作から近作まで、全18作品の図面を収録

内藤廣設計図面集

長く待ち望まれた、建築家・内藤廣の図面集。内藤廣本人が、1981年に自身の建築事務所を設立してから現在にいたるまでの仕事の中から18作品を選び出し、その設計図面を一冊にまとめた本です。

設計図を目の前にすると、この図面からあのような建築がつくられるのかと感慨が押し寄せてきます。

一般的に公共建築など大規模なものとなれば、1,000枚を超えるといわれている設計図面。その中でも内藤氏が最も大事にしているのは、「技術やシステム、構造、設備、デザインのすべてを網羅した断面矩計図」です。この図面は建築の質を決定づけているともいい、内藤氏が「建築に何を込めたか」を如実に伝えてくれます。

本書はそれらを中心に、要となるディテールや各種詳細図を含む、プロジェクトの最重要と位置づけられた図面のみで構成されています。著者自身による解説はもちろん、描き下ろしのドローイングも収録。

判型は大判サイズのB4判で、開くと大迫力の図面が展開します。製本方法は180度見開きやすい、糸かがりのオープンバック製本を採用されています。

工藤強勝(デザイナー)おすすめコメント

私は内藤氏の著書・共著・作品集を含めると、今回で10点余りをデザインしています。最初の打ち合わせで内藤氏は、いつものように「私からの要望は一つ。工藤さんにデザインをお願いしたい」 とだけおっしゃいました。


内藤氏の建築作品を目にし、自分なりに彼のデザインや人間性としてのポリシーの断面を「本」というオブジェクトに置き換えることが私の大きな使命であり、今までの造本で思考してきたスタンスです。デザインは一貫してつくりすぎず、トレンドや斬新さなどに捉われず、いま見ても30年後に見ても古さを感じさせない普遍的なものであることをコンセプトとしています。つまり、造本が主張しすぎないということです。今回も変わらず、内藤氏の仕事と対峙しながらの作業となりました。


内藤氏や編集者から縮尺率を考慮し、できるだけ大きなサイズにしたいという希望があり、打ち合わせ時点で判型(B4判)から製本までFixすることができました。特に製本は糸かがりにし、図面が繋がって見られるように、ノドまで目一杯開けるクータ・バインディング様式を採用。さらに2箇所の両観音開きと1箇所の巻き観音開きを取り入れたことも大きな特徴です。


ディテールに関しては、図面や写真、ドローイング、テキストという素材をピュアに表現することを命題にしました。印刷されてはじめて読者に伝わるため、再現性も重要になりましたが、プリンティングディレクターが参画したことで高クオリティに仕上げられました。もちろん、ファクターとして書体の選定やレイアウトでは奇をてらわず、どことなく品格や格調を感じさせる総合メソッドをつくりあげることに注視しました。いわゆる“美は細部に宿る”という精神です。


また、「書物は小さな建築物である」という私の知見から内藤氏の建築を捉え、できるだけ「素」や「無垢」のイメージを活かすべく「付き物はクラフト系」にすることにこだわりました。2014年に『アントニン・レーモンド建築詳細図譜[復刻版]』の造本を手がけ、今回、内藤氏の「設計図面集」も担当できたことは両関係者に感謝したいです。1年半にわたった作業になりましたが、内藤氏が造本に関して一番の信頼者であったこと、そして出版社の編集担当者が全面的にバックアップしてくれたことで完成にいたりました。


プロフィール:工藤強勝

グラフィックデザイナー。桑沢デザイン研究所卒業。1976年デザイン実験室設立。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科講師を経て2006年より首都大学東京(現・東京都立大学)システムデザイン学部・大学院教授、2014年客員教授。著書に『編集デザインの教科書』、『デザイン解体新書』、『文字組デザイン講座』など。「第48回講談社出版文化賞ブックデザイン賞」受賞、2019年「タイポグラフィをめぐる書物の森」展、企画監修など。2020年4月より桑沢デザイン研究所 第11代所長に就任。


発行 オーム社
著者 内藤廣
デザイン 工藤強勝
仕様 B4判・オープンバック製本・216頁(観音3セット有)
価格(税抜) 5,200円
ISBN 978-4-274-22648-9