白黒のビジュアルに「運命が、廻り出す。」というドキッとさせられるキャッチコピーが印象的な広告。これは、2024年末に開催された「KEIRINグランプリ2024」の宣伝用広告です。
アートディレクション&デザインを担当したのは、株式会社ANREAL STUDIOの伊藤岳さん。「廻る」というイメージが強く伝わってくるデザインが誕生した背景や、コンセプトについてうかがいました。
■背景、課題
毎年年末におこなわれる「KEIRINグランプリ」の宣伝用広告であるキービジュアルと、テレビ、Webで使用する動画の作成をしました。オーダーとしては、静岡市で開催されるということと、過去のビジュアルとは違うものにしたいという2点でした。
課題になったのは「競輪である」ということ。いわゆる商品の良さを伝えるような広告とは異なり、公営ギャンブルではあるが射幸心を煽るようなものにしてはいけないといった点が特殊な広告です。その上で広告を見た人に「KEIRINグランプリ」に興味を持ってもらい、静岡競輪場へ実際に足を運んでもらうことが目的でした。
■コンセプト
「KEIRINグランプリ」が12月に開催されることは多くの競輪ファンには周知の事実なので、開催があるということの前に競輪という競技自体の魅力を熱量高く表現し、現在の競輪ファンはもちろん、昔好きだった人や、ほかの競馬や競艇など別の競技が好きな人にも伝わるようなものにする。特に唯一競輪のみが「人の力でのみおこなわれる競技である」ことが伝わるような広告を目指しました。

静岡駅で展開された広告
■手法、特徴
自転車は人間の力で廻したペダルの力がギアからタイヤに伝わって前に進みます。世の中や人の人生もまた同様に廻りながら進んでいる。その廻すという力を伝えるために会議を重ねながら、コピーは「運命が、廻り出す。」としました。
グラフィックは、実際に使用する自転車のパーツを質感まで強く見えるように撮影。タイヤのフレームの中には静岡競輪場で開催されることを伝えるために俯瞰から見た富士山。そこに全力でもがくレーサーを配置。そのほかに火花や回転する光なども配置し、「廻りながら進んでいく力」が熱量高く伝わるコラージュにしました。
CMは映像監督の佐藤敬さんと一緒に制作しました。実際に全力でもがくレーサーを軸に、廻っている自転車のパーツを押さえつつ、廻るほかのモチーフを同時に入れ込んでいくとことで「運命が、廻り出す。」というコピーが伝わるものを目指しました。音楽も自転車の持つ鉄感を表現するためにスラップギターを取り入れ、弦を実際に弾く音と、自転車を廻した時に鳴る音を実際に録音したものを入れ込んでいます。
ストレートに画が持つ熱量が届くよう、グラフィックも動画もモノクロにして、なるべく白と黒が目立つような色補正をしています。
デザイン事務所でNHK Eテレ番組内ゲームなどのUIデザインに携わり、2012年AOI Pro.に入社。アートディレクターとしてさまざまなナショナルクライアントの広告ビジュアル制作に従事。「マキシマム ザ ホルモン」「WurtS」「Nulbarich」「Negicco」などのアートワークや、「Newbalance」の広告ビジュアルのデザインなど多岐にわたる分野で活躍。2023年にはANREAL STUDIOの立ち上げに参加し、さらに活動の幅を広げている。今回の静岡競輪のビジュアルもその代表的な仕事の一つとなった。
- スタッフ
アートディレクター&デザイン/伊藤岳(株式会社ANREAL STUDIO)
フォトグラファー/宮﨑健太郎
ヘアメイク/NARUTAKA HIRATA
映像監督/佐藤敬
撮影/和野花、佐藤敬
照明/津嘉山寧斗
PD/CHAMILA
KEIRIN GRAND PRIX 2024 SHIZUOKA 「運命が、廻り出す。」
https://www.shizuoka38.jp/2024grandprix/